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本日、二回目の投稿です。

 



 ゼクスは四十代くらいの男性で、ノインは二十代後半のおっとりした女性に見えた。やはり、人族そのもののように見え、だからこそ、街の中に違和感なく溶け込んでいた。


『『これが、マスター?!』』

「おう、久しぶりだな、ゼクス、ノイン」

『お、おお、本物だ』

『まあ、アインスが間違うはずもないわね』

 ゼンマイ式ハムスターに憑依したディレクさんに驚いたゼクスとノインは、そんなふうにして納得した。


「アインスの言葉をあっさり信じちゃうんだね」

「フィーアとフュンフの馬鹿笑いとは大違いね」

 アインスの信頼度にソウタが感心すれば、ユリは双子のゴーレムの騒がしさと打って変わった落ち着きぶりに目を見開く。


 アインスがふたりに、簡単に経緯を語る。

『そうか、シュラクの怪物が追いかけまわしていた稀血の一族を探しているのか』

 ゼクスはそう言うにとどめたが、ノインは違った。眦をきりりと吊り上げる。

『こんなに小さな子たちがやらなくてはならないことなの? マスター、わたしが代わりに行きます』

『ノイン、お止めなさい。ソウタさまとユリさまは自分の意思で動かれているのです。それを貴女がとやかく言ういわれはありません』

 アインスが静かに制すると、ノインははっと息を呑んで恥じらうように目を伏せる。

僭越せんえつなことを申しました』


「本当に統率が取れているな」

 アインスとノインのやり取りにワンダフルさんが感心する。

「ああ。お陰で俺の出る幕はない」

「アインスはディレクに細かいことを言わせたくないんだろう」

 ディレクさんは気負いもせずに言うと、ケッティがマスターに能力がないのではなく、アインスの気遣いだろうと断じる。


『お、マスター、短い付き合いらしいのに、随分、理解を深められているじゃないか』

「ケッティは賢いからな。俺に魔力譲渡や魔力操作を教えてくれているんだ」

『なるほど。それで、アインスたちが自由に動けるようになったんだな』

 得心が行ったゼクスが、ケッティはアハトと気が合いそうだと言う。


『これほど理性あるケット・シーには初めて会いました』

「ね、ケッティは落ち着いているよね」

 たいていの者が初見で驚くのだと笑顔を向けるソウタに、ノインは微笑み返す。

「ケッティはケット・シーの中で唯一付き合いやすい者よ。とても頼りになるし」

 ユリが言うと、ワンダフルさんがしみじみと頷く。もはや慣れたやり取りに、ケッティは苦笑するだけだった。




「それで、シュラクの怪物はどうしているんだ?」

 知っていることを話せと言うディレクさんに、ゼクスとノインがさっと視線を交わし合う。その傍らで、ソウタとユリは不穏な呼び名に耳をしきりに動かした。

「彼らには俺の事情はすべて話してある」

『ですが、マスター、』

 ディレクさんに、アインスが待ったをかける。

「ソウタとユリもある程度事情を知っていた方が良いだろう」

 ディレクさんがワンダフルさんとケッティに確認を取るようにそちらを見やる。

「俺は賛成だ」

「そうだな。突発的事項が起きて心が乱されるよりも、あらかじめ知っておいた方が良いだろう」

 ワンダフルさんとケッティの信頼のこもった言葉に、ソウタとユリも息を吸って心を落ち着かせる。


『本当にケット・シーにしては理路整然としているな』

『ドライと話が合いそうです』

 ゼクスとノインがそう言い合う間、ディレクさんがソウタとユリに自分や稀血の一族にちょっかいをかけ続けているのがシュラクの前王弟であると話す。シュラクの怪物というのは一部で通じる名称なのだという。

 あまり人族の身分社会のことには詳しくないふたりはなんとなく偉い人、という認識でしかない。


『シュラクの怪物は今のところ、王に抑えつけられている様子だ』

『王族としての権力を取り上げられ、公爵としての務めを果たすことを課されています』

 ふたりのゴーレムが交互に言うのに、アインスのクラバットに鎮座したディレクが唸る。会話するのに、そこが高さと安定感からして、ちょうどよいのだ。はた目には珍妙に見えるが、アインスが平然としているから、ゴーレムふたりはなにも言わなかった。


「それが当然のことなのだろうがな。あの怪物は快く思うまい」

『その通りで、人を使ってあれこれ画策しているようだ』

『カタレアやラクーザにも頻繁に使いを出しているようです』

「外交官とは別に? たしか、あそこの外交は第三王子が担っていたな」

 ワンダフルさんが職域を侵すのは面白くないだろうという。

「以前、王族だったとはいえ、すでにその位にはいないのだからな」

 ケッティも頷く。


『その第三王子もちょっと妙な感じがするんだよなあ』

 どこがどうとはっきりとは言えないのだが、とゼクスががりがりと頭を掻く。

「そういう直感も重要だが、偏見で目を濁らせるなよ」

『了解』

「まあ、外交官なら、周辺諸国を頻繁に行き来しても当然だからな」

 ディレクさんがそう言うのを潮に、ゼクスとノインの報告は周辺諸国に及んだ。

 ふたりはラクーザが方々に諜報員を送り込んでいること、つい先だってカタレアに使節を送り込んだことを掴んでいた。


「ラクーザの諜報員!」

仁楊にゃん村からの手紙を燃やした女の人族ね」

 ソウタとユリが声を上げる。


 なんのことか分からないディレクさんとゴーレムたちに、ワンダフルさんが事情を簡単に説明をする。

『そりゃあ、ずいぶん、感情に振り回された諜報員だなあ』

『でも、案外、そういう者って多いのですよ』

 ゼクスが呆れ、ノインが苦笑する。


 問題は使節団を送った直後、カタレアでは緊張状態が続いていることだという。

『警戒態勢に入っている様子だ』

『カタレアは広く医者や学者を集め研究を重ねていると聞きますが』

 ゼクスの言葉に、アインスが思案する。小首を傾げるソウタとユリに、ケッティがカタレアでは定期的に起こる流行り病に長年苦しめられており、それを根絶させるために国を挙げて取り組んでいると教えてくれる。


「あ、ねえ、じゃあ、カタレアって国の偉い者が稀血の一族のことを知ったら、もしかして、」

 ソウタが思いついたことを口にして、青ざめる。最後まで続けることはできなかった。カントさんは言っていたではないか。薬師や錬金術師は妖精や獣人や人族ですら、薬の素材にすることがあるのだと。


「シュラクの怪物が狙っているのと同じように、ということか」

『古来から不老不死と万能薬は切っても切れない関係にありますから』

 ディレクさんもアインスもソウタの言うことはあながち考えられないことではないと深刻な顔つきになる。

「憶測の域は出ないが、その点も加味して情報収集をしよう」

 ワンダフルさんの言葉に、みなが頷いた。ゼクスもノインもディレクさんに言われて稀血の一族の行方を調べてくれるという。


『ケット・シーたちがズィーベンのことを調べてくれるなんてありがたいことです』

『なに、七番目についちゃあ、俺たちが先んじているんだ。ケット・シーたちよりも先に見つけてやるぜ』

 ノインが言うのに、ゼクスがそう返したのは、彼女がどこか疲れていたからかも励まそうとしたのかもしれない。


「いや、ゼクスとノインは一旦、ツヴェルクの下へ向かえ」

 長いことメンテナンスを受けていないだろうから、とディレクが言う。

 ノインはようやく会えたディレクのことを心配するが、ゼクスがマスターにはアインスがついているから大丈夫と言えば納得した。


「本当にアインスはみんなから信頼されているんだね」

「あと、なんだか、恐れられていない?」

「アインスは強いからなあ」

 ソウタとユリが言うと、ディレクさんはそう答えた。穏やかに微笑むアインスからは想像もつかなくて、ソウタとユリはしきりに首を傾げるのだった。





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