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本日、二回目の投稿です。

 

 フェレット母さんの料理器具の手入れから農機具のメンテナンスまで請け負っていたツヴェルクさんはニャントロフさんから部品を買い、ルジェクさんと入れ違うようにして農場牧場を後にした。

 ツヴェルクさんはフィーアとフュンフを伴い、ツヴァイの下へ行き、損傷が激しいドライとアハトを工房に連れて行って修繕するという。


『しっかりツヴェルクさまをお守りするのですよ』

『任せて!』

『かしこまりました。アインスさまもご無事で』

『マスターのお傍にはわたくしが控えておりますので、心配ご無用です』

 狙われている可能性があるから、フィーアとフュンフを連れていくのは分かるが、ふたりともツヴェルクさんに同行して、ディレクさんにはアインスひとりで大丈夫なのか。


「フィーアとフュンフはふたりで連携を取ると相乗効果がある。アインスはディレクの傍から離れない。それに、アインスひとりで事足りる」

 ツヴェルクさんがそう言うのだから、そういうものなのだろう。フィーアとフュンフは相性が良く、ふたりで行動した方が効率が良いということもある。


「隠れ家にこもっていないで、もっと早くにディレクの拠点を巡り歩いていればゴーストに会えただろうか」

 出発する間際にぽつりと漏らした言葉が印象的だった。


 ルジェクさんはだから、ほかのゴーレムを見ていないし、アインスをふつうの人間だと思っているようだった。

「そのゼンマイ式ハムスターをソウタ君が作ったんですか? 自在に動くなんてすごいですね」

 そこで、ディレクさんはルジェクさんにはそう思わせておこうと言った。


「悪いが、俺は訳ありでな。だから、ルジェクの前では俺はしゃべらない。アインスのことは聞かれなければゴーレムだと言わないでくれ」

「宝石姫には話して良いの?」

「良いもなにも、あの御仁はゴーストが憑いているって見抜いているさ。アインスが人形だってこともな」


 農場牧場の者たちは強力な守護の下、暮らしている。そして、そうそう長い間その守護を離れることもない。

「そっか。宝石姫もお城で守られているもんね」

 農場牧場では宝石姫がやって来るようになったので、より警戒態勢ができあがっていた。

「妖精の至宝の守護は鉄壁だ。妖精に悪意を抱く者、操られて悪事を働かされようとする者は入って来られない」

 トムさんが自慢げに言ったものだ。


 その宝石姫はフェレット族兄弟が一日いっぺんは遊ぶゼンマイ式ハムスターを気に入っているらしかった。目線がずっとハムスターを追っているのだ。フェムやフェマが譲ろうとするが、頑として受け取らない。

「だって、フェロが言っていたのですもの。ソウタが自分たち兄弟にひとつずつもてるようにってくれたのだと。取り上げられて壊されてしまったという話をしたら、みんなにくれたのだと、とても嬉しそうに話していましたのよ」

 自分がもらったらせっかくの気持ちを台無しにする。それに、フェロから取り上げた者と同じことはしたくないと言う。


 そこで、ソウタは宝石姫とアーミィにゼンマイ式ハムスターをひとつずつプレゼントした。

「ありがとうございます、ソウタ」

 宝石姫はとても喜んだ。


「ごめんな、旅に出る前にアーミィにも作って置けばよかったな」

 アーミィは特に、ゴースト・ハムスターに並々ならぬ興味を抱いている風だから、そこから注意を逸らすためにも渡した。

「キキキュ」

 アーミィはさっそくハムスターの匂いをかいだりつついたり、ほおずりしたりした。


 すっかり気に入った様子に、ソウタとフェムは顔を見あわせて微笑み合う。フェンがこうやってこのネジを巻くのよ、と教えている。せっせとネジを巻くアーミィのハムスターを、フェロがさり気なく抑えてやる。


「あ、そうだ、みんなで誰のハムスターが一番遠くへ走るか競い合わない?」

「それと、ある地点へ一番早く着くというのを競うのも面白そうだね」

 フェムが提案すると、フェマも別の案を出す。

「俺たちはずっとハムスターを扱ってきたけれど、それじゃあ、アーミィと宝石姫に不利だよ!」

「そうよ。アーミィと宝石姫がかわいそうだよね」

 フェロがへの字口にきゅっと力を入れ、フェンも同意する。

「じゃあ、練習して、日を改めて競争する?」

「そうしよう」




 みんなでゼンマイ式ハムスターのレースをするのだと聞いたフェレット母さんが賞品としてお菓子をたくさんこしらえてくれると言った。


「俺、良いことを思いついた!」

「なあに?」

「キキュ?」

 ぴょんぴょん跳び跳ねるフェロに、フェンとアーミィが小首を傾げる。


「ゼンマイ式ハムスターを持っているのはまだいるよ!」

「あ、ケット・シーだ」

「そうだね。ソウタ君からもらっていたね」

 フェムとフェマが頷いた。

 ケット・シーはしょっちゅうやって来て、おなじみの存在だ。アーミィといっしょになって暮らすフェレット族一家のことを、ケット・シーたちは丁重に扱う。


「そうだよ。それで、彼らを巻き込んでさ、」

 フェロが声をひそめる。そうして、フェレット族兄弟たちはゼンマイ式ハムスターのレースについてあれこれと練った。


 翌日、その日もやって来て農場牧場でスキップをするケット・シーを捕まえる。

「ゼンマイ式ハムスターのレース? 面白そうだにゃあ」

「だろう?」

 釣り目をきらりと光らせるケット・シーに、フェロはにんまりする。

「ソウタ君が宝石姫やアーミィにもゼンマイ式ハムスターをくれたの」

「ふたりはいま、とっくん中なのよ」

 フェマとフェンが次々と言うのに、ケット・シーはさもありなんと頷く。

「さすがはソウにゃん。宝石姫や妖精の至宝を虜にするアイテムを作ったのにゃ!」


「それで、母さんがレースの賞品にお菓子を作ってくれると言うんだ」

 フェムが言うと、フェロがさり気なく付け加える。

「ユリも賞品用にびっくりポーションシリーズや<サプライズディッシュ>を用意してくれるって」

「参加するにゃ!」

 フェレット族兄弟が期待した通り、ケット・シーは食いついた。


「参加料として妖精の環(フェアリーサークル)を繋げてほしいの」

 フェマがとうとう、最も重要なことを口にした。

 ケット・シーはすぐにそれと気づいてフェレット族兄弟を見渡す。

「なるほどにゃあ。そういう魂胆かにゃ」


「だってさ、ソウタとユリはまた旅に出るって言うからさ」

「また長いあいだ、もどってこないのよ」

「ふたりの足は怪我や肉刺まめでとても痛そうだった」

 フェロが言うと、フェンが泣きべそをかき、フェムが沈んだ調子になる。


「だから、リトラとかいう大きな街にすぐに行けたら、とても助かると思うの」

 フェマはそういった拠点に妖精の環で移動出来たら、旅程が短縮されるだろうと言う。

「キキキュ!」

 アーミィもお願い、とフェレット族兄弟に加勢する。


「いいにゃよ。参加料は必要だものにゃね」

「やった!」

「ありがとう!」

 了承したケット・シーに、フェレット族兄弟は沸く。

「任せておけ、ソウタ! 俺が一位を取って、ケット・シーにステップを踏んでもらうからな!」

「あたしも一位を取ったら、賞品はそれにしてもらうからね!」

「キキュ!」

 フェムもフェマも、そしてアーミィも意気込んだ。


「にゃにゃにゃ! 八百長にゃ!」

 ケット・シーがからかう。

「違うやい! 賞品の選択だよ」

「そうよ。しょうぶには手をぬかないわ!」

 すぐさまフェロが言い返し、フェンもやる気満々である。ケット・シーはその意気や善しとばかりに頷く。

「望むところにゃよ! 真剣勝負にゃ!」

「キキュ!」

「よし、僕も頑張るよ」

「わたしも!」

 アーミィやフェム、フェマも意気盛んで、みなでバチバチと火花を散らす。

 ゼンマイ式ハムスターの生みの親ソウタはどうしてこうなったのかなあと眺め、ユリは面白い催しだとばかりに喜んだ。


「こういうのを見ると、帰って来たなあって思うな」

「本当に。ここは外界とは別世界だ」

「陽だまりの世界だよねえ」

 ワンダフルさんがしみじみ言うとケッティも同意し、ニャントロフさんは眺めているだけで眠くなるとばかりにあくびをする。


「俺は絶対に参加しないからな」

『当然です。マスターならば意のままに動かせるのですから、大人げないですよ』

 ディレクさんが言うのに、アインスがしらりと返す。


「こんなに穏やかでのどかでやさしい世界は初めて見た」

「快く迎え入れてくれてこの上なく感謝しています」

「ここは理想郷のように思えます」

 呆然とこぼしたルジェクさんに、フェレット母さんとカントさんが同意する。

「この光景を守らなくちゃな」

 トムさんの言葉に、フェレット母さんとカントさん、ルジェクさんが力強く頷いた。





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