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本日、二回目の投稿です。
稀血の一族を探すとともにゴーレムも探そう。
そうソウタとユリが言い出したのに、ワンダフルさんとケッティがすんなり受け入れ、ふたりは拍子抜けした。どうやって説得しようかと頭を悩ませていたのだ。ついてきてくれなくても当然だとしても、危険が伴いそうなので止められるかもしれないと思っていた。
「ふたりならそう言うと思った」
「わたしもほかのゴーレムと会ってみたい」
ふたりはそんなふうに言って手を貸してくれることとなった。
一行の方針は定まった。ディレクさんにそう話すと、少し考えた後、ぴょんとソウタに向けて跳んだ。慌てて両前足を差し出すとそこにちんまり鎮座する。
「おう、よろしくな。俺も稀血の一族を探し出すのに協力する」
『わたくしも参ります。マスターがみなさまにご迷惑をおかけしないように目を光らせておきます』
ディレクさんが言うと、アインスはすかさず一歩前へ進み出る。
「ね、ね、もしかして、アインスの目は本当に光るとか?」
『あいにく、そういった機能は持ち合わせておりません』
わくわくと尋ねるユリに、アインスがご期待に沿えず、と肩を落として見せる。
「本当にすごい応対力だね」
ユリとやり取りするアインスに素直に感心するソウタに、ツヴェルクさんが話しかける。
「ソウタたちは一旦、トムテの農場牧場に帰るんだな」
「うん。またケット・シーが新しい情報を探してくれているかもしれないし。それにね、ゴーレムを探すのも手伝ってもらえないかと思うんだ」
「はァ?! あのケット・シーに探すのを手伝わせる?」
とたんに、ディレクさん素っ頓狂な声を上げる。ツヴェルクさんもまた戸惑って尋ねる。
「そんなことができるのか? いや、このケッティはケット・シーの中じゃあ異色中の異色の静穏さだろう?」
「そこは大丈夫だ。ケット・シーはユリの掌の中で転がされている」
「ちょっと、ケッティ、変なこと言わないでよ!」
「いや、ケッティの言が正しい。ケット・シーたちはソウタとユリにとても協力的だ」
ユリが挙げる抗議の声を、ワンダフルさんが笑って否定する。
「ぼくはそんなことないよ」
ユリはともかく、とソウタは慌てて言う。
『ソウタさまとユリさまって、一体』
「や、やだな、アインスまで。そんなことないんだよ、本当に」
ソウタが慌てて否定するも、この猫族の子供たちはどんな存在なのか、と一同の視線が集まる。
「そ、それより、フィーアとフュンフは双子みたいだね」
「うん、そっくり」
ツヴェルクさんの工房にはアインスのほか、もう二体のゴーレムがいた。そちらもメンテナンスが終了し、魔力を流せば目が覚めるという。
ディレクさんが起動させた方が良いというので、それが済んだら念のため、ケッティが彼に魔力譲渡する。
「起動させるときが一番魔力を食うからな」
「なんでも魔道具はそういうものだな」
ツヴェルクさんの言葉にケッティがさもありなんと頷く。
「いやあ、ソウタとケッティがいっしょにいてくれて協力してくれるなんて、幸運以外のなにものでもない」
ソウタが旅先で手に入れた部品で強化されたゼンマイ式ハムスターに憑依し、さらに魔力が豊富で操作にも長けたケッティが譲渡することによって、ゴーレムを起動させることができる。
「こういう時、神のお導きだとかなんとか言うんだろうけれど、」
「俺はソウタとユリがいろんなことを引き寄せているんだと思う」
「わたしもそんな気がするな」
特に神さまを信じていないらしいディレクさんにワンダフルさんが言うと、ケッティも同意する。
そのソウタとユリはフィーアとフュンフに気を取られている。どちらも二十代前後の人族の女性で、前者が赤味がかった金髪で、後者が灰色がかった金髪だ。双方、長い髪を後頭部の高い位置でひと括りにしている。
ジャケットに脛半ばのミモレ丈の裾が広がるスカートに編み上げのブーツを履いている。
「こいつら、可愛い顔して武器の扱いに長けているんだ」
「「え?!」」
「アインスはオールマイティにこなすが、もっぱらディレクの世話をするからな」
『マスターの雑用はわたくしの仕事です』
ツヴェルクさんとアインスが口々に言うも、その前のディレクさんの発言が気になってあまり内容は頭に入って来ない。
さて、四番目と五番目のゴーレムは目を開けるとアインスと同じく右目が金色で、左目が銀色だった。
「うちのゴーレムはみんなこの色だ」
ツヴェルクさんの言葉に、ケッティなどはなるほど、そこに伝魔回路がどうの、と語り合いはじめる。
そんなふたりを他所に、アインスが両手に載せたゼンマイ式ハムスターを恭しく差し出して見せ、これまでの経緯をフィーアとフュンフに語った。
『マスター、な、なんてお労しい!』
『あれほど壮麗なお姿が見る影もなく!』
嘆く言葉ではある。科白だけはそうだが、可愛らしい容姿のフィーアとフュンフはげらげらと笑い転げた。
『おやめなさい、ふたりとも。お客様の前ですよ』
アインスが穏やかに制すると、とたんにふたりは口を閉じて居ずまいを正す。
「いや、その前にマスターへの不遜を咎めろよ!」
マスターよりもアインスの指示に従うとはどういうことだ、とがっしゃんがっしょん飛び跳ねる。アインスが指をそっとまげて掌から落ちないようにしながら、『あまり興奮されては。故障の原因ともなりかねません』と諫める。
『マスターがおべんちゃらは言うなって言ったんじゃない』
『耳当たりのいいことばかり並べるやつは信用ならんとおっしゃっていたよ』
対する双子ゴーレムはアインスのときとは打って変わってしらりと言い返す。
「わあ、やっぱり辛口!」
「ね、ほかのゴーレムもみんなこうなのかな?」
ソウタとユリがこっそり囁き合う。
『ドライなら今のマスターを心から尊敬してくれるよ!』
『そうね。ドライはああ見えて可愛いもの好きだものね』
『こっちの猫族のふたりなんて、ドストライクだよね』
『それこそ猫っ可愛がりしそうね』
『フィーアとフュンフよ。よろしくね』
『わたしたち、だいたいふたり一組で行動するの』
ぽんぽん交互に話すふたりは小気味よいほど隙間なくしゃべり、ソウタとユリは口を挟めずにいた。
ゴーレム二体を無事に目覚めさせることに成功した一行は出かける準備を済ませた。
ツヴェルクさんが妖精の路を妖精の国へ繋げ、そこからトムさんの農場牧場へ向けて妖精の環を踏むこととなった。
「長い間旅をしたけれど、これならあっという間に帰ることができるね」
「うん。カントさんにもらった軟膏が残り少なくなっていたから、良かったよ」
そんなふうに話すソウタとユリから、足に塗る軟膏だと聞いたフィーアとフュンフがおぶってやろうと言い出し、慌てて断った。ゴーレムたちはマスター以外にはとても親切だ。
「ふつう、逆だろう!」
『はいはい、マスターはアインスさまのポケットに入っていてね』
「ぎゃっ! 押し込むな!」
『えぇー、じゃあ、どこに? 頭の上? 肩の上?』
フィーアがゼンマイ式ハムスターをアインスの頭や肩の上に載せるも、当然のことながら不安定である。
『フィーアったら、マスターがらみだとアインスさまがなんでも許容してくれるからって。ツヴァイに知られたらゲンコツもらっちゃうわよ』
『そんなの、フュンフが黙っていてくれたらいいのよう』
「俺がチクってやる」
『マスター、横暴! いじわる!』
『ツヴァイはアインスさまがらみだと手加減なしなのに。マスターのせいでフィーアがツヴェルクさまに直してもらう羽目になるのね』
「なんで俺のせいなんだよ! フィーアの自業自得だ」
すったもんだした挙句、アインスのクラバットの結び目を平らにし、中央にすこしばかり窪みを作って、その上に収まることとなった。
「おお、見晴らしが良い」
『落ちると大変ですから、動き回らないでくださいね』
今にもうろちょろし始めそうで、アインスは常に片手を胸元に持って行くことになる。しかし、その表情はまったく煩わしそうではなく、微笑まし気に慈母の笑みを浮かべている。
「いつになったら出発できるんだろうなあ」
ワンダフルさんが苦笑しきりでぼやいた。




