挿話3
偏屈だが腕は随一だと聞いて、方々を訪ねようやっと探し出すことができた。
評判どおりの腕であり、技術談義では大いに盛り上がり、酒を片手に明け方まで行った。断片的に漏れ聞く彼の心情に、その気持ちも少しばかり分かる気がした。
孤児だった自分は誰も信用できずにあえぐように生きてきた。だから、この職にたどり着いたのかもしれない。作り物の関係でもいいじゃないか。歯に衣着せぬ、取り繕った物言いをしない。裏の裏を常に読み取る手間もなくなる。
彼は自分のそのときの技術と知識の集大成に非常に興味を示した。そして、あれこれ意見を交わし合ううち、彼の手が加わり、ほとんど共同制作の形となった。その分、性能はいや増し、ぎこちなさが取れ、より自然体に近づいた。
なのに、それをもぎ取られたときの喪失感は二度と着手できないのではないかと思わせるほどのものだった。
それでも、自分はそれを生涯のものとしようと思い定めていた。そして、彼がいた。ひとりではとうてい立ち直れなかっただろう。今度はより優れたものを創ろうと意欲を燃やした。失った悲しみがあったからこそ、一層打ち込んだ。
そうして創り上げたものは傑作と言って良い出来栄えだった。その後もいくつも手掛けてきたが、失った後に創ったものも都度改良を重ねたから、それが常に最も優れていた。
それぞれに特色があり、こちらの思惑通りに進まないことなんてざらだ。それがいい。
けれど、始めたことは自分の手で始末をつけなければならなかった。
自分よりも長く生きるであろう共同制作者にだけ責を押し付けて生を終えるのは、無責任のような気がしてならなかった。
迷ううちに、病を得た。寿命を迎えるにはまだ時間があるとばかり思っていた。病を治し、生きるつもりでいたのだ。
けれど、それは叶わなかった。
意識が途切れゆくのを感じながら、次に目覚めるときのことを思った。
そして、それは半分叶い、半分叶わなかった。




