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 ケット・シーたちにせがまれて、ユリは<サプライズディッシュ>やびっくりポーションシリーズを提供した。

 腰に片前足を当てて、胸をらしてくいっと飲んでいた。

「ぷっはー! やっぱりユリにゃんの<びっくりポーション>は効きますにゃあ」

「にゃははは、俺、酩酊になったのにゃ」

「俺、鈍重にゃ!」


「え、びっくりポーションってそんな効果があるの?」

 ソウタが驚いて振り向くも、ユリはへの字口に力を入れ、顎をあげた。まるで、「にゃふふふん」とでも鼻を鳴らしそうな感じだ。

「そんなわけないじゃない。彼らは面白がって適当に言っているだけだよ」

「まったく、とんだお調子者だ」

 ケッティが額を抑え、ワンダフルさんが噴き出すのを堪えている。ふだん部屋にこもって薬を作っているカントさんと行商に出かけるニャントロフさんは、あまりケット・シーたちと接する機会がなく、目を白黒させている。

「これがうわさのケット・シー。真面目で落ち着ているケッティとは全然違いますね」

「群れになるとアクがいっそう強くなるんだねえ」


 そんな呆れる面々を他所に、冗談を言うケット・シーにほかのケット・シーがたきつける。

「ちょうど良いにゃ、お前たちふたりでステップを踏んでみるのにゃ」

「良いにゃよ!」

「じゃあ、行くにゃよ」

「「んーにゃーにゃーにゃ、んーにゃーにゃーにゃ」」

「にゃはははは、合わない! なのに、なんかしっくりくるにゃ!」

 もうすでに出来上がっている感がある。


「さすがはソウにゃんとユリにゃん主催のパーティ!」

「な、なんでぼくまで」

「わたしの主催じゃないよ! 勝手なことを言わないで!」

「「「「「楽しーい!!」」」」」

 ソウタとユリの抗議の声はケット・シーたちの陽気な声にかき消される。


 そんなケット・シーたちは、国王夫妻にステップを要求されて、整列して躍り出した。



 にゃ、にゃーにゃ、にゃ

 にゃ、にゃーにゃ、にゃ

 にゃ、にゃーにゃ、にゃ



 ぴったりそろった動き、柔軟で軽やかな動作、すばらしい跳躍力を余すところなく発揮した彼らのダンスは圧巻だった。

 観客はみな拍手喝さいだった。

 しかし、躍っていないときのケット・シーたち、とくに集団ともなるととたんにクセが強くなる。

「こんなに楽しい催しに参加できるなんて!」

「さすがはソウにゃんとユリにゃん!」

「ユリにゃんはきっとアレになれるにゃよ」

「お、アレかにゃ??」

「ケット・シー族憧れの!」


「「「「「トリックスター!!」」」」」


「うん、違うからね? そんなものになった覚えはないからね?」

「ユ、ユリ、いつの間にそんなものになっていたの。トリックスターってなんなの?」

「知らないわよ、勝手に言っているだけよ」

「ケット・シーの村に代々伝わる伝説の存在で興味深いのにゃ!」

「とにかく、奇想天外で面白いのにゃ」

「誰も考えつかないことをやってのけて、わくわくするのにゃ」

 彼らはとにかく面白いことが大好きだ。




 アーミィはフェロとフェンとともに美味しいものをお腹いっぱい食べ、ケット・シーたちの見事なステップに興奮し、はしゃぎまわり、同時に眠った。三人で長い身体を絡ませ合うように眠る。安らかに呼吸を繰り返す姿に、国王夫妻はこの地の守護としてクッシィを残していくことに決めた。

「妖精の至宝がいるならば、そしてこれほどまでに心を許しているのであれば、守護は万全であろうが、なに、連絡係よ」

「そなたらとも親交があると聞いている。ちょうど良いだろう」

 その後、農場牧場では、黒い妖精犬が背に幼いフェレット兄妹と妖精の至宝を乗せてのしのし歩く姿が見られるようになる。

 それを見て、ソウタとユリはしみじみと言ったものである。

「迷子の妖精も背に乗せていたからなあ」

「子供好きで扱いが上手いのかもね」




 妖精の国王夫妻は宴会後、ソウタとユリを呼んで褒美を取らせようと言った。ふたりは驚き、そんなものをもらういわれはないと断る。

「ではなにか力になろう」

 困ったふたりは視線を彷徨さまよわせると、ワンダフルさんが頷くのを見た。そこで思い出し、ロケットの持ち主を探していると話した。

 国王夫妻は頷いて、ケット・シーを呼んで探すように言う。

 結局、ケット・シーに頼むことになったが、国王夫妻に命じられてのことだから重みが違う。ケット・シーもそれなりにまじめに取り組むだろう。


 ソウタとユリとの次に国王夫妻はフェレット母さんを呼んだ。両陛下は妖精の至宝を子供たちとともに面倒を見ている礼を述べた。

 フェレット母さんは恐縮しつつ、お言葉をたまわった後、「お留守番をされているという娘さんに」と言ってお土産を渡した。国王夫妻が宴会のさなかに娘がいると話したのだ。臆病なあまり外に出たがらないが、きっとこの場にいたら楽しんだだろうと。

 今日は急なことで、しかもたくさんの妖精がやってきたため、手の込んだ料理を出すことはできなかったが、せめてお土産のデザートはと思ってベリージャムのクイックブレッドマフィンやベリーのクラフティを作っていた。

「アーミィが兄弟といっしょに集めたベリーで作ったんです」

 国王夫妻はお茶のときに添えられていたベリーのクレープのおいしさを思い出してにっこりした。

 国王夫妻は後日、フェレット母さんに食材粉砕機という調理魔道具をプレゼントした。




 妖精の国の姫君は宝石姫という呼び名でみなから愛されるそれはそれはうつくしい少女だ。妖精攫いに遭い、あわやというところで彼女の守護犬クー・シーが追い払ったということが過去にあり、外出を怖がるようになった。それでなくとも、もともと臆病な性質たちだった。

 両親である国王夫妻やクー・シーたちから、風変わりな農場牧場の話を聞いた。そこは農場妖精トムテの持ち物だが、いまや猫族や犬族、フェレット族、ケット・シーが同居しており、なんと居つけばその家に幸運をもたらすという妖精の至宝までもが住んでいるのだという。

 それを聞いて見に行った両親がフェレット族の家族の一員のような顔をしてバーベキューで使う野菜を洗っていたと聞いて、宝石姫は目を丸くした。そして、ケット・シーたちの見事なダンスのことや、フェレット族の母親が開く料理店が今や妖精たちの噂の的であるといったことを楽しく聞いた。


「そのフェリィからそなたにこれをと預かって来た」

 そう言って渡されたのは、妖精の至宝がフェレット族の兄弟といっしょに集めたベリーで作ったお菓子だという。

「外に出たがらないそなたのために、せめて美味しいものをという心遣いじゃ」

 ふっくらふくらんだクイックブレッドマフィンはバターの豊かな風味といろんなベリーの味がした。

「少しばかり焦げたベリーもオツなものですね」

 いっしょに食べた守護犬が目を細めて言うのがおかしくて笑ったら、両親もにこやかになった。

 ベリーのクラフティは生地がもっちりしたプリンのようで、甘酸っぱいベリーと相性が良い。


 美味しいお菓子を気心の知れた者たちと楽しみながら、宝石姫はふとこのベリーが育っているのを見たいと思った。そして、それらを集めた者たちと会ってみたいとも。

 そう言うと、両親や守護犬が目を丸くした後、ほほえんだ。






食材粉砕機は別名ブレンダー、ミキサー、ジューサー、フードプロセッサーなどなどです。

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