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本日、二回目の投稿です。

 

「「妖精の環(フェアリー・サークル)!!」」

 ソウタとユリの声がそろう。


「妖精の通り道とも呼ばれるやつ?」

「違う場所へ行けるんだよね?」

「そうだ。良く知っているな」

「「初めて見た!!」」

 ソウタとユリは興奮を隠せないでいた。

 初フライトで見た湖と小島にこんな秘密が隠されていたのだ。旅に出て良かった。


「ね、ね、これ、踏んだら違う場所に行けるかな?」

「どうだろうなあ」

「え、行けるんじゃないの?」

 興奮して問うユリにワンダフルさんがどっちつかずの返事をし、ソウタは目を見開く。

「行けることもあれば、なにも起こらないこともある」


 なるほど、そういうこともあるのかと得心がいったソウタははたと気づく。

「もし行けたとしても、ヘンな場所に出ちゃう?」

「よほど妖精に敵愾心てきがいしんを持っているのでなければ、それはないな」

「そうなんだ!」

 ユリが期待に目を輝かせ満面の笑みを浮かべる。そんなユリにつられてほほえんだソウタはワンダフルさんを見上げる。ユリも同じようにする。ワンダフルさんは苦笑して頷いた。

「いいぞ。踏んでみよう。だが、三人同時だ。別々の場所に飛ばされてはかなわんからな」


 そんなこともあるのかとソウタとユリは驚きちょっぴり怖くなって互いの両前足を握り合せて草にくっきりと残った跡を見つめた。ワンダフルさんはそんなふたりの背中をそっと押すようにして三人で不思議な模様を踏んだ。

 とたんに、あの初フライトで起きた急降下に似た強力な圧迫感を味わう。内臓が浮く。

 ふたりは思わずぎゅっと目をつぶった。


「着いたぞ」

 ワンダフルさんの声がしたと同時にふたりの背中を支える温かく力強い前足の感触がする。

「「わあ!!」」

 ふたりが目を開けると、そこは湖でも森でもなかった。

 一面の野原があり、目の前には村があった。石垣がぐるりをかこっている。


「あー」

 ワンダフルさんが妙な声を上げる。

「どうかしたの?」

 ソウタが振り返ると、ワンダフルさんが渋い顔つきをしていた。

「ここはケット・シーたちの村だ」

「「ケット・シー!」」




「ぜったい、ソウタのゼンマイ式ハムスターがあったら入れたよ! 今度は持って行こうね!」

 ユリは頭から湯気が出そうなほどむくれていた。

 ソウタは自分の迂闊うかつさを呪った。あまりの好評ぶりに、ゼンマイ式ハムスターは全て道具屋に納めてきたのだ。手持ちはひとつもなかった。

「あったら絶対にケット・シーが興味を持っただろうに!」

 ユリはとても悔しそうである。


「ワンダフルさんが渋い顔になるのも分かる」

「だろう?」

 結論から言うと、三人はケット・シーの村に入ることができなかったのである。


 ケット・シーの村を囲んだ石垣の中央にしつらえられた木製の扉を叩くと向こうの方からくぐもった声が聞こえた。

「なんの用にゃ?」

 これがケット・シーの声!

 ソウタもユリも声もなくボルテージが跳ねあがって行く。


「妖精の国へ行きたいのだが」

 興奮しきりで言葉もないふたりの代わりに、ワンダフルさんがそう言った。ふたりは特に妖精の国へ訪問しようとは思っていなかったのだが、行けるのなら行ってみたい。

妖精の環(フェアリー・サークル)を繋げというのにゃね」

 ソウタとユリは期待にごくりと喉を鳴らした。


「じゃあ、妖精の舞踏(フェアリー・ステップ)を踏める気持ちにさせてみせるのにゃ」

「「え?!」」

「な? とんでもない難問を吹っ掛けて来るだろう?」

 ワンダフルさんが肩をすくめてみせた。

 ケット・シーたちは楽しい気持ちが高じると自然と身体がリズムに乗り、ステップを踏むのだという。


「ケット・シーたちのダンスの跡が妖精の環(フェアリー・サークル)だと言われている」

 ワンダフルさんの物言いにソウタが気づく。

「ワンダフルさんも見たことはないの?」

「あ、もしかして、湖の中の小島にあった跡って」

「そうだ」

 ワンダフルさんはソウタとユリ、双方に向けて肯定して見せた。


 それからふたりはなんとかしてケット・シーが楽しい気分になれるようにとおやつやアイテム玉を見せた。ケット・シーは扉についた物見窓から眺めて「にゃふふふん」と鼻で笑った。

「そんなところだけは猫族といっしょなんだから!」


 ユリはケット・シーが猫族と相通じるところがあるのであれば、きっとゼンマイ式ハムスターがあれば、気に入っただろうとほぞをかむ。猫族をあんなに熱狂させたおもちゃだ。

「ワンダフルさんも結局こんな風に言われて妖精の国へ通じる妖精の環(フェアリー・サークル)を作ってもらうことはできなかったんだね」

「そうなんだ。でも、もっととんでもないことを言われた」

「「とんでもないこと?」」

 ワンダフルさんの精悍な顔つきが情けない表情になる。ぴんと立った耳もへにょっと垂れる。


 以前、ワンダフルさんがやって来たときには次のように要求されたというのだ。

「じゃあ、それにふさわしいステップを見せてくれなくてはにゃ」

「さあ、躍って見せるのにゃ!」

「ステップ対決にゃ!」

 とんでもないことを言いだしたと、話を聞いたソウタとユリは目を丸くする。

「ステップ対決!」

「ケット・シーってダンスが好きなのね」

「総じて陽気な種族なんだ」

 ワンダフルさんは逆に陰気な顔つきになった。




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