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挿話1

本日、二回目の投稿です。

 

 厄介な奴に目を付けられたものだ。


「しつこいったらありゃしねえ」

 顎を伝う汗をぬぐい、荒い息の下、同行者の無事を尋ねる。

「おい、全員いるか?」

 自分のすぐ傍で、報告を受けたり指示を出していた者が落ち着いた様子で是と答える。

 金色と銀色はこんな局面でも変わらずうつくしい。欲しがるのも頷ける。

「ケッタクソ悪い」

 決してあんなできごとを繰り返させやしない。これ以上は誰ひとり欠けることなんてない。必ずだ。


 先ほど斥候せっこうから戻って来た者が水場へ案内する。そこで補給を済ませる。渋る者に「お前らが動けなきゃどうするんだ」と言いくるめる。

 力自慢が、そうなったら担いでいくと言えば、ちびっ子がデカブツのお前が動けなければどうなるんだと返し、聞いていた者たちがどっと笑う。


 しつこく追われても暗くないところが良い。自分がそう望んだのだ。歯に衣着せぬが、もとより自分は口が悪いから、好き勝手言い合える。


 自分に常に付き添う者が補給を避けるのを押し留める。

「俺が倒れたらお前が運べばいい」

 そんなふうに言えば、当然そうすると頷く。


 全員が動力源を補給した後、さすがに疲れてその場に座り込む。さり気なく、付き添う者がもたれかからせるよう位置取りする。遠慮なく寄りかかる。


「これだから権力者ってやつは。自分の思う通りにならなかったら躍起になりやがる」

 ため息をついて目をつぶる。そうすると、疲労が体中をだるく巡るのがより感じられる。寄りかかる相手がこちらの体調の感知を行っているのを察するが、放っておいた。だいたい、いつもこちらの状況を整えようとするのだ。だから、ほかの者から「おふくろさん」と呼ばれている。母親のように気遣いが行き届いているという意味だ。当の本人が受け入れているものだから、度し難い。わずらわしいこともあるけれど、便利だから放っておく。そうするからこそ「おふくろさん」というあだ名がまかり通っているのだ。


 世事に長けた者が笑い交じりで言うには、自分はこの国だけでなく周辺諸国で少々有名になりすぎたらしい。それで、権力者に妬まれたことも手伝って、しつこいのではないかという。


「はァ?! そんなことで? なんにもしない奴らに代わって、人のため世のためになっているんだから、それで善しとしておけってんだ! なあ! お前らもさんざん重労働をさせられたんだから、その分、認められるのがスジってものだろう?」

 あまりのことにがばりと身を起こすと、「おふくろさん」によって静かに元の姿勢に戻させられる。その方が楽なのだが、ちょっと過保護であるような気がして内心で不満が頭をもたげる。その不満をやり過ごすためにふたたび目を閉じる。そうすると、否応なしにあのときの光景が浮かんでくる。思い出せば腹が煮える。だから、努めて冷静に考えることにした。


「しかし、嫉妬だけかな。本当のところの目的はなんなんだ」

 単なる欲得づくか。だから、奪ったのか。ひとりでは満足しなかったのか。しなかったから、まだ自分たちを追うのだろう。

 ならば。


 目を開けば、青空が広がっていた。明るく輝かしい広がりが、手を伸ばせば掴めるような気がした。


「だったら、ちょっとやそっとじゃ手出しできないくらいになってやろうぜ。どこの国の権力者も手が出せないような人気者になってやろうじゃないか」

 認知度を高めれば良い。

 そうすれば、もう誰からも奪われないで済むかもしれない。


「傲岸で心が腐った連中に見せつけてやろうぜ」

 権力者の欲深さと横暴さ、こちらを物のように扱う言動に、非難が集中するように仕向けていくのだ。





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