第8話
太郎は小学校に入学した。最初は学校に行くのが嫌で嫌でしかたなかった太郎だが、1か月もすると少し様子が変わった。新しい友達が出来たのだ。
友達の名前は絵里。地味目な丸顔、小麦色の肌、ポニーテール。性格はやや活発だが、大騒ぎするタイプではない。運動も勉強も得意ではない、どこにでもいる普通の女の子だ。
太郎は教室でひとりぼーっとしていることが多い。太郎自身はピカピカを見ていたり、ピカピカについて考えたりしているのだが、傍からみるとただぼーっとしているように見える。
最初は太郎に話しかけてきたり、ちょっかい出してくる子もいたが今では少なくなった。クラスの子供達は太郎が普通とは少し違うと敏感に察したのだろう。それには太郎の手を振る癖も一役買ったのかもしれない。
そこに現れたのが絵里だ。隣の席の女の子。つまり何かと話す機会がある。朝の挨拶、帰りの挨拶。授業中に隣の席の人と話し合いましょうなんていうこともあった。そうしているうちにいつの間にか仲良くなった。
それでも太郎はひとりでいることを好む男の子だ。絵里の存在を忘れてピカピカと戯れていることもある。それでも絵里は太郎に話しかけた。軽い言い合いになることもあった。
しかし馬が合うというのか、波長が合うというのか、太郎はひとりの時間を邪魔されても嫌だとは感じなかった。それどころか最近では少し笑うようになった。
「次は体育の時間よ。着替えないの?」
「え?うん。着替える」
「早く着替えていこうよ」
絵里は太郎と一緒に行動するようになった。女の子の友達といることも多かったが、なんとなく太郎を放って置けず、何かと世話を焼いた。
クラスの男の子達はそんな太郎と絵里をからかう。絵里は怒って文句を言うが、それがからかいの火に油を注ぐ結果になり、時には泣いてしまうこともあった。
太郎はからかわれても柳に風といった様子で絵里を宥める。挑発に乗ってこないことが気に入らないクラスの男の子達は、さらにからかうがそんな声は聞こえませんとばかりに太郎はボーっとするモードに入る。そこに女の子達から応援が入る。
「やめなよ!」
「絵里ちゃんがかわいそうでしょ!」
クラスの子供達から太郎はすごく大人しい子、ちょっと変わった子と思われているのは間違いない。
しかし絵里との関係からか女の子達からの不思議な支持を得ていた。母性本能をくすぐるタイプと思われていたのかもしれない。小一の子供にそんな本能があればの話だが。
男の子達はどうかと言うとやはり太郎のことが気になっていたのかもしれない。
友達になりたいけどどうしていいかわからない。それがこじれてからかうという行動になったと考えるのが正解に近いだろう。
体育の授業は50メートル走だった。太郎の記録は8秒7。圧倒的なスピードでゴールした。太郎の体が薄くぼんやり光っていたことは誰も知らない。




