表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/45

第7話

小学校へ入学するまでの間、太郎はピカピカについて色々試していた。そして泥団子のようにピカピカを丸めて固める作業はついに完成をみた。


なぜ出来たのかは分からなかった。うんしょうんしょとピカピカを握っているうちにいつの間にか出来るようになっていた。手のひらがぼんやりと光っている。なぜだろう。


太郎は喜んでからすぐ泣きそうになった。ピカピカを団子にしたからと言って自分の問題は何も解決していない。自分の視界は相変わらずピカピカに邪魔されることに気が付いた。


これではパパママ、おじいちゃんおばあちゃんに心配をかけたままだ。友達にも町ですれ違う人にも迷惑をかける。自分は誰にも心配かけたくないのに。


太郎はぼんやり光る自分の手を見た。ピカピカが手にくっついているようだ。両手をすり合わせてこすってみるが取れない。なんだか怖くなってきて泣いた。


「太郎ちゃん。どうしたの?どこかぶつけた?」


母親は心配して太郎に声をかける。太郎は黙って母親に抱き着いた。母親は太郎がなぜ泣いていたのか結局分からなかった。こういう時、太郎は何も話さない。


母親はどうしたらいいか分からず、ただ太郎の背中を撫で続けた。太郎は泣き疲れたのかそのまま眠った。





太郎は必死に走っている。後ろをしきりに気にしながら暗い原っぱを突き進んでいる。追いかけてくる影に怯えながら。


獣の荒い呼吸が太郎の耳に迫ってくる。太郎は走るのをやめ決然と振り返る。手にはナイフが握られている。怯えを抑え、じっと敵を見定める。


獣は太郎を喰らわんと大口を開けて飛び込んできた。太郎の全身がぼんやりと光る。太郎は素早い動きで獣の牙をかわすと、首のあたりにナイフを思い切り突きたてた。


ギャンとひと鳴きして獣は倒れた。太郎は乱れた呼吸を整えることもなく再び走りだした。遠くで火が揺らめいている。木が燃えているようだ。叫び声が聞こえる。そこへ向かって。





「あっ!」


太郎は目を覚ました。心臓が強く鼓動を打っている。隣を見ると母親が寝ている。夢を見ていたのだ。パジャマがびっしょりと濡れている。


おねしょしたのかと思ったがそうではなかった。ドキドキしたまま起き上がり、冷蔵庫からお茶を出して飲んだ。


いま見た夢を思い出す。もう夢の記憶は薄れつつあるがひとつはっきり憶えている場面があった。暗い中でぼんやりと光った自分の体。素早く動いて何かを殺した。


太郎は手のひらを見た。いつもの手。光ってはいない。よかったと安心したが少しがっかりもした。


汗を吸ったパジャマを肌に張り付けたまま母親の隣で寝た。すぐに眠りに落ちた太郎の頭の上には不格好に丸められたピカピカが浮いていた。


それは太郎がようやく完成させた団子ピカピカ。放って置けばその内消えるだろうと思っていたが、団子ピカピカは消えもせず太郎に近くに残り続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ