第6話
太郎の母方の祖父母は太郎の家からほど近い、歩いて十分ほどの距離に住んでいた。初孫の誕生から現在まで、目に入れても痛くないほど太郎をかわいがった。
甘やかすばかりではなく、必要な時には厳しくしかった。そもそも太郎はあまり手がかからない、大人しくて聞き分けのいい子だったので厳しくしかることは少なかった。
むしろちょっと大人しすぎることを心配していた。両親にも自分達にもべったり甘えてくることはなかった。何か注意すればちゃんと話を聞いて悪いところはすぐに直した。わがままも言わず、ぐずらず、転んでも泣かなかった。
娘は・・・太郎の母は随分目のことを心配していた。それには自分達もすぐに気づいた。太郎は目がよく見えていないのかもしれない。
しかしそれは杞憂に終わった。病院に何度も通い、何も問題ないことが分かった。それでも太郎は以前と変わらず目の前で手を振ったり、頭を左右に動かしたりする癖を続けた。
何度も注意したがこれだけは直らなかった。注意をするたびに泣きそうな顔をしてうつむく太郎を見ているしかなかった。
太郎の祖父母は幼い子にはよくあることだと娘を慰めた。その内いつの間にか治るから心配するなと。
太郎が小学校に入学する年齢になった。祖父母はおじいちゃんおばあちゃんからとランドセルをプレゼントした。孫の喜ぶ顔が見れる。娘の時とはまた違う幸せな瞬間。
反応は予想していたものと違った。太郎は喜ぶどころか何やら悲しそうな表情を浮かべた。
「太郎ちゃん。この色じゃなかった?」
「ううん。ありがとう」
孫はそれっきり黙ってしまった。娘夫婦も困惑していた。




