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第23話

太郎一家は祖父の田舎から我が家に戻った。翌日から父親は仕事へ行き、母親は荷物の整理や掃除、洗濯を始めた。




太郎はまだまだ夏休み中なので朝からひとりで公園に出かけた。母親は一緒に行こうと言ったが太郎に断られている。ショックを受けた母親がしばらく棒立ちになっていたことを太郎は知らない。




それでも母は強い。太郎のことを思えば”なんにせよ良かった”のだとすぐに立ち直った。なにせ一番の心配であった太郎の心の傷は杞憂となったのだから。




川で起こった恐ろしい出来事を太郎は簡単に乗り越えていた。寝て起きたらもう笑っていたのだ。太郎の心の中でどう解決されたのかは分からない。しかし太郎は元気よく遊びまわり両親、祖父母を安心させた。




それにしても・・・と母親は思った。




「あの子、公園で何してるのかな?」




すぐ近くの公園とはいえ、小学一年生がひとりで外を歩くのはやはり心配だ。川でのこともある。すぐに様子を見に行こう。洗濯物を干しながらそう考えた。










太郎はいつものようにラジオ体操に参加した後、いつもの公園の隅っこで修行をしていた。今日やるのはアニメヒーローの動きを真似るものではない。




それはある意味瞑想と呼ばれる類のものだった。傍から見ると太郎が体育座りでぼーっとしているようにしか見えないだろう。しかし太郎は集中していた。必死でピカピカを集めていた。




ここ最近は楽しく体を動かしているだけだった太郎が急にどうしたのだろうか。田舎の川で起こった出来事が何か影響しているのだろうか。




答えはまさにそうだということになるだろう。ただし正確ではない。より正しく言うならば太郎は川での出来事を経て教えられたのだ。教師は太郎のすぐそばにいた。




「タロー!そうじゃないわ。そうじゃないのよ。だって全然キレイじゃないもん。キャハハハハ!変なの!キャハハハハ!」




笑い声の主は妖精のような姿に変わりさらに喋るようになったピカピカ団子だったもの。なんでそうなったのか太郎には分からなかったが、現実は現実としてあっさり受け入れた。




名前をつけてと頼まれたので”ピカピカ妖精”と答えたら体当たりしてきて泣かれた。どうやら名前がダサかったようだ。それから色々候補を出した太郎だったが全て却下された。




「タロー。わたしね。タローの読んだ絵本に素敵な名前があるって知ってるわ。ベルってどう?かわいいでしょ?タロー、これからはベルって呼んでちょうだい」




太郎は大人しく”うん”と返事した。名前をつけてくれと言っていたのに最後は自分で自分の名前を決めていたがそのことについては何とも思わなかった。




「タロー、わたしはタローの知ってることは大体知ってるのよ?あとはタローの知らないことも知ってるわ。タローはそれをお勉強してちょうだい。いいわね?」




「うん。いいよ。何を勉強するの?」




「ピカピカちゃんをもっと上手に使うのよ。そのためのお勉強だわ。キャハハ。わたし、お勉強ってキライ!でもタローはやってちょうだい。ね?」




「ピカピカちゃん?どうやるの?楽しそう!」




太郎とベルの相性は良かった。ベルは何となくわがままで、太郎よりずいぶん小さいのに偉そうだったがそれを嫌だとは感じなかった。むしろ一緒にいて楽しかった。




太郎は一人っ子だが姉というのはこういうものかもしれないと思った。太郎はベルのことを最初に見た時から家族みたいなものだと思っていたのだ。




なにせもとは太郎が作ったピカピカ団子なのだから、そして常に一緒にいたのだから当然なのかもしれない。




そして太郎はベルに促されるまま公園での修行を始めた。”修行”というのはベルが使い出した単語だ。ベルは太郎によりよいピカピカの使い方を教えると言った。




「タロー、強くなるのよ。今のあなたじゃ敵にやられてしまうわ!これは修行よ。ドラゴンへの道ってやつだわ!キャハハハ。かっこいいー」




「敵?でもベル、全然出来ないよ。これで合ってる?」




「だーかーらー、キレイじゃなきゃダ・メ・な・の!ピカピカちゃんをもっとキレイに集めてちょうだい。そうすればピカピカちゃんはもっといっぱいタローを守ってくれるわ」


「・・・」




「しょうがないわね。ほら見て見て!タロー、キャハハハ、キレイでしょ?これよ!」




ベルが両手を広げると周囲のピカピカがぐんぐん集まって取り込まれていった。ベルが纏うピカピカはどんどん密度を上げてもはや重そうですらある。




太郎はその過程に目を奪われた。なんてキレイなんだろう。なんてかっこいいんだろう。修行すればこれが出来るようになるのか。太郎はすぐに真似しようと集中を始めた。”敵”については聞きそびれたまま忘れてしまった。




しばらくして母親が様子を見に来た。太郎は立ち上がって母親を迎えた。何をしてたのか聞かれたので虫を探していたと答えた。




母親は少し心配そうに太郎を見ていた。太郎はその視線から逃れるように母親の手をとった。




「ママ、帰ろう」




母親は嬉しそうに笑った。

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