第21話
若い男女が観光地でもない田舎の道を歩いていた。齢はふたりとも20代前半くらいだろうか。ティーシャツにチノパンとシンプルな服装で、どこにでもいるいたって普通の恰好。ただ服の下の体は鍛えられ引き締まっていて、それがふたりの印象を決定していた。
「タカ、気が高まってる。瘴気。間違いない」
「報告より早いな。まぁゆっくりやろうや」
「被害が出たら面倒。わたしは急いだ方がいいって言ったからね?」
「はいはい。お前の忠告は確かに聞いたよ。確かにな。これでいいかキョウ?なんならこの先のこと全部俺のせいってことでいいからよ。はぁあ、だる」
「待って、おかしい。始まってるかも」
「ちッ、どっちだ」
「あっち」
キョウと呼ばれた女は右手に見える土手の方を指さした。男の方、タカは背負っているリュックから紙の札を取り出し右手に握りこむと走り出した。キョウもそれに続く。
疾走という表現がしっくりくる速さで土手を駆け上がったふたりは土手下の河原にいる3人の姿を認めた。老人が必死の形相で助けを求めている。
「ビンゴ」
「こりゃやばめ」
一旦立ち止まって冷静に状況を見てからタカとキョウは同時にまた動き出した。”いける”と判断したのだ。
生まれたばかりの瘴気は色が薄い。見えているヘビ型は透明でにごりはほとんどない。ならば大した力もあるまい。これならば全く問題なし。
タカは若い男と子供に躊躇無く近づくとふたりに巻き付いているヘビ型を右の拳で殴った。ヘビ型は苦しむように水で出来た体をうねらせる。
リョウは老人が邪魔をしないように腕を掴んで下がらせた。
「もういっちょ」
タカが再び右ストレートを繰り出し水を殴ると、ふたりに巻き付いていたヘビ型は弾けて普通の水に戻った。
「リョウ。どうよ」
「まだ。でも時間は稼いだ」
「札は使わずに済んだな。よし!じゃあ今のうちにこの親子?を運んじまうか。おじいさん、あなた身内の人?とりあえず俺が手伝いますんであなたの家まで案内してもらえますか?」
「タカ、子供はわたしが運ぶから」
「はいはい。重労働は男の仕事ってね」
老人・・・太郎の祖父は急な出来事に碌にお礼も言えずしばし呆然としていたが、現れたふたりに促されて家まで先導した。




