第20話
川で遊んでいた太郎は水と一緒に流れるピカピカに目を奪われていた。透明で冷たい水、川底の石、気持ちいい感触の砂、くるくる回りながら流れてくる葉っぱ。そしてそれらにくっついているピカピカ。
水を手や足でかき回したり、石を投げたり、魚を探したりするのは本当に楽しいが太郎にとっての一番はピカピカである。空にあるピカピカの渦巻きは怖いがそれでピカピカ自体を嫌いになるなどということはなかった。
ピカピカ団子も楽しいのかいつもより行動範囲が広い。太郎の頭の上ではなく水のなかをしきりに動き回っている。
何も考えずに遊んでいた太郎だったが次第に水がぬるぬるしてきたような感覚をおぼえた。手で水をすくってバシャバシャと飛ばしてみるとやはり間違いないことが分かった。川上の方に振り向いて見るが何もおかしなところはない。
「変なの」
太郎は一度川から上がろうと思って父と祖父の方へ向かおうとした。すると足が思ったように動かなくなっていた。水から足が抜けないのである。
すぐに父と祖父を呼ぼうとしたが、膝下くらいまでしかなかった水が勢いよく足を伝って首のあたりまでのぼってきた。
「わっ」
水に引きずり込まれるようにして倒れた。顔にも水が絡みついてきて声を上げることが出来ない。体も縛られたように動かない。
浅いとはいえ水のなかでうつ伏せでほとんど動けなくなった。太郎はパニックを起こし、頭が真っ白になった。
このままあと数分も経てば太郎は死んでしまっただろう。しかしそこに助けが入った。ピカピカ団子だ。
ピカピカ団子は太郎を縛っている水に体当たりを繰り返した。すると太郎を捕まえていた水の力が僅かに緩んだ。パニックのなかで太郎はピカピカ団子の姿が目に映った。
太郎は無意識にピカピカを集めて全身を包んだ。それにより水の拘束はさらに緩まった。何とか手足をじたばたする程度には動けるようになった。水から顔を出した瞬間に息継ぎが出来た。
「やだ、やだ!」
太郎は必死で暴れた。ピカピカを集め体に纏った。太郎を包むピカピカはどんどん増えていきある瞬間に一気に弾けた。それと同時に水の拘束が解けた。
ピカピカが弾ける力で水は無力化されたようだ。しかし太郎はそのことに気づかずパニックを起こしたまま暴れていた。その姿を父親と祖父が発見した。
ふたりはすぐに太郎のところまでやってきたが、その時には水がまた不気味な力を回復して太郎に絡みつこうとしていた。
太郎は父親に抱えられた安堵感からそのときには半ば意識を失っていた。そのあとどうなったのかおぼえていない。
目を開いた時には祖父の家の布団のなかだった。




