第17話
太郎が寝た後で太郎の父親と祖父母は居間でお茶を飲みながら久しぶりの親子の会話を楽しんでいた。話題はやはり太郎のこと。
「ホントに良かったわ。小学校に入る前は随分心配したけど、最近はもう転んだりぶつかったりしないんでしょ?」
「そう。ホントに良かった。別の病院探してみてもらおうかまで考えてたけど、要らぬ心配になって心底良かったよ」
「結局何だったのかしらね?」
「俺にも分からん。まぁいいよ。いまはもう何でもないんだからさ」
「そう?そうね」
「いや、ちょっと待て」
「ん?親父どうした?」
太郎の祖父は口数の多い男ではなかったが、先ほどまでは楽しそうに頷いたり、一言二言感想を話してた。それが急に真顔になり太郎の父親の目をじっと見つめていた。
「なんだよ。なんかあるなら遠慮なく言ってよ」
「ああ。太郎の目に問題があるかもという話のことだ」
「うん。だからそれは問題ないって・・・」
「だから、ちょっと待て。俺の話を聞け」
「そりゃ聞くよ。なに?」
それから太郎の祖父はこれまで誰にも話さなかったことを語り始めた。それは自分の父から聞いた話。出来の悪い都市伝説のような話。
太郎の祖父の父は幼い頃神隠しにあったというのだ。突然姿を消し、帰って来たのは2年後のこと。
「2年後?は?ホントの話?」
「おやじはそう言ってた」
「それで?その間じいさんはどこでどうしてたって?」
「山のなかで天狗に特訓を受けてたそうだ」
「なんかどこかで聞いたような話だな」
2年後、帰ってきた後は普通に生活して、晩年は肺炎で亡くなった。
「まぁ、そりゃ知らなかったなぁっていう。なんだかおとぎ話みたいでもっと詳しく聞きたいけどそれよりそれが太郎と何の関係があるんだよ」
「実はな。俺のおやじも少し目が悪かった。ただし病気でも怪我でもない。おやじはこう言った。”仙気が見える”と」
太郎の父親はバカにされたと感じ、頭に血がのぼって声を荒げた。
「親父!俺は真面目に聞いてたんだよ!せんき?仙人の気?なんでもいいよ!何かの宗教とかそういう話かよ。そういう冗談は・・・勘弁してくれよ!」
「落ち着け。俺は真面目に話してるんだ。俺はおやじから聞いたことを話してるだけだ。そしてそれが太郎と何か関係あるかもしれないと思ってる」
太郎の父親が落ち着くのを待って、話は続いた。




