第15話
小学生になって初めての夏休みが始まった。
早朝、太郎はラジオ体操に参加した。そして終わったあとピカピカを全身に纏って公園を走った。人の気配があるとすぐにスピードを落とす。そしてまた全力疾走。
太郎は少し浮かれていた。今まで散々自分の邪魔になっていたピカピカをある程度思い通りに動かすことが出来るようになったからだ。
ずっと練習を続け最近やっと全身にピカピカを纏うためのコツが掴めた。素早く周囲のピカピカを集め体に取り込む。次に全身を包むように出す。
言ってしまえば単純だがこれを実際に行うのが難しかった。今までは何となく体から出して、時間が経つとなんとなく消えていったものを、今度は自分の思い通りにしなくてはいけない。
しかし想像した通りにピカピカを使おうとしても上手くいかなかった。特にピカピカを連続して使えないことと、維持しておけないことが問題だった。
視界を遮るピカピカを頭で思った通りに動かすには全身をピカピカで包む必要があるのにこれではダメだ。
もっと素早くピカピカを纏い、たとえ纏ったピカピカが消えてもすぐにピカピカを纏い直し、その状態を出来るだけ長く維持したい。
太郎はピカピカ団子を作った時のように、地道にひとつひとつの段階を繰り返し練習していった。
結果分かったのはピカピカはアニメに出てくるビームとか強いエネルギーみたいなものだということだった。
使うと無くなる。このことに気が付くのに時間がかかった。ピカピカは纏って走ると速く走れるが時間が経つと消えてしまうもの。ただそう思っていた。消費するものだとは思いもしなかった。
しかし気が付いてしまえばあとは比較的簡単だった。使っては集め、集めては使う。一度に集める量を増やしつつ素早く行えるようにする。
太郎は呼吸に合わせるようにピカピカを取り込んで使うようにした。こうして邪魔なピカピカを視界からどかして、もう以前のように何かにぶつかったり転んだりしなくなっていった。
それとともに太郎は自分が他の人とは違うのだと自覚した。今までもピカピカが見える見えないということでの自覚はあったが、ピカピカを使って動く動きが普通じゃないと自分でもはっきり分かった。
自分の背より高い壁をジャンプで軽く飛び越えられたしテレビで見た戦隊ヒーローの動きを真似したら出来た。
最初は両親に見せて褒めてもらおうと思っていた太郎だが、すぐに思い直してやめた。また両親が怖い顔をして自分を心配し始めるのではないかと考えたからだ。
ピカピカは他の人には見えない。話しても心配かけるだけだ。だから誰にも話さない。このヒーローの動きも見せるのはやめよう。太郎はひとりでそう決めた。
「あんまり速く走るのもダメ」
太郎は人目を避けて運動するようになった。ただしピカピカを使っての運動をやめようとは思わなかった。すごく楽しかったからだ。
ピカピカ団子を捕まえる遊びは定番になった。しかし今だに捕まえたことはない。自分のすぐ近くにいるのに触ることが出来なかった。
そのため太郎はイライラして怒り、感情が昂って泣いてしまうこともあった。そんな時ピカピカ団子は一瞬だけ太郎の頬のあたりにくっついてすぐ離れた。
太郎はそれだけでもう気持ちが落ち着き心が晴れ、またすぐにピカピカを集めて運動能力を上げるとピカピカ団子を追いかけた。
太郎の夏休みの前半はそうして過ぎていった。




