第14話
絵里の誕生日会当日。太郎は女子達に言われた通りのプレゼントを買って持っていった。受け取った絵里はありがとうと言って笑った。それを見て太郎も笑った。
誕生日ケーキが出てきて歌をうたい、料理を食べてジュースを飲んだ。女の子はお喋りに夢中で楽しそうにしている。
この会に呼ばれた男は太郎ひとり。周りは女子のみ。絵里の母親は黙って座ってぼーっとしている太郎を気遣って横に座って話しかけた。
「太郎君、絵里に聞いたわよ。走るのが速いのよね?」
太郎は”うん”と答えた。すると女子達が急に話に入り出した。
「そうだよ!太郎君すごいよね」
「テレビに出てくる人みたいだった!」
「あとでみんなで外に行こうよ!」
太郎は急に注目されて居心地悪そうにしながらもまた”うん”とだけ言う。女子達は口々に太郎をほめ始めた。”太郎君かっこよかったよねー”なんて声も聞こえる。
「絵里?どうしたの?」
絵里の母親は娘が急に立ち上がって怖い顔をしていることに気が付いた。すると絵里はまっすぐ太郎の前まで歩いていき何も言わず太郎のほっぺに自分の口をつけた。
「やるわね。絵里」
母親のつぶやきのあとでキャーキャーと女子達の黄色い声が上がった。太郎はなんだか恥ずかしくなって立ち上がり部屋を出て玄関に行き、靴を履いて外に飛び出した。
ピカピカで体を包んで、視界を遮るピカピカを散らしながら自分の家まで一気に走り切った。
「あら、太郎どうしたの?誕生日会は終わったの?」
「うん。終わったよ」
それだけ言うと太郎はそのまま自分の部屋に入り夕飯まで出てこなかった。太郎の母は誰かとケンカでもしたのかなと思ったが、太郎の部屋から楽しそうな笑い声が聞こえたので何も聞かないことにした。
「あの子、ひとりであんなに楽しそうに笑ってるなんて大丈夫かしら?」
少し心配もあったが、夕飯の時の太郎はもういつもと同じだったし誕生日会の様子も楽しそうに話してくれたのですぐに忘れた。
それからしばらくの間、太郎は学校で女子達から意味深な言葉をかけられてからかわれることになるが、太郎には何のことを言ってるのか理解できなかった。
「太郎君。おはよう」
「絵里ちゃん。おはよう」
太郎も絵里もいつも通りだ。しかし太郎は前より学校に行くのが楽しくなっていた。




