第13話
休み時間に絵里が話しかけてきた。
「太郎君。木曜日わたしの家でお誕生日会やるから来てね」
「お誕生日会ってなに?」
「お誕生日会だよ。知らないの?」
絵里から説明を聞いてようやく理解した太郎は誕生日会に行く約束をした。そして次の休み時間。太郎はクラスの女子に囲まれた。
「太郎君。分かってるよね?絵里ちゃん楽しみにしてるんだから、ちゃんとしてよね」
「ねぇ。ちゃんとして。プレゼント持ってくるんだよ?」
「太郎君。女子はみんなで決めてるから太郎君はわたし達が言ったもの買ってくればいいからね?ちゃんとしてね」
”ちゃんとして”はクラスで流行っている言葉らしい。太郎にはよく分からなかったが、とりあえずうんうんと返事した。
普通の男の子ならばタジタジの場面だが、女子のお喋りに変に慣れてしまった太郎には何も響いていない。女子達は少しずつ焦り出した。
「太郎君。ホントに大丈夫?」
「ねぇ。ちゃんと分かった?じゃあプレゼント何買うか言って」
「太郎君。お店分かる?わたしと一緒に行く?」
女子達は太郎を心配して、いやもっと言えば失敗した太郎によって傷つく絵里のことを心配して太郎に優しく接しだした。
しかし太郎はその時すでに女子の話を聞き流してピカピカを見ていた。ピカピカが女子の鼻のなかに入っていく。耳から出てくる。頭に積もって流れていく。その様子を見ながら癒されていた。
「太郎君?聞いてる?」
「ダメじゃん。聞いてないよ」
「どうしよう。絵里ちゃんがかわいそうだよ」
そうこうしているうちに休み時間が終わってしまった。その後は絵里の目もあり、女子達は太郎に話しかけるタイミングを逃し下校の時間になった。
太郎は家に帰ると母親に絵里の誕生日会のことを話した。母親は太郎の話を聞いて喜んだ。
「それで太郎ちゃん。プレゼントはどうするの?」
「プレゼントってなに買えばいいの?」
「うーん。太郎ちゃんは何かあげたいものある?」
「えっとねー。なんかね。ブローチって言ってた」
「ブローチ?誰が言ってたの?」
「クラスの女の子」
「へー。じゃあどんなのがいいって言ってたの?」
「わかんない」
「どこで売ってるか聞かなかったの?」
「わかんない」
「ホントに?木曜日よね?お友達は他に何か言ってなかった?」
「うん」
太郎の母親はさすがに太郎の母親だ。あまりにも足りない情報について、これはきっと太郎がきちんと聞いていなかったんだろうと推察した。
「太郎。明日学校でもう一回ちゃんと話を聞いてきなさい。いい?わかった?」
「うん!わかった!」
太郎はおやつを食べると公園へ走った。後ろにピカピカ団子が付いてくる。太郎の頭にはもうピカピカのことしかなかった。
全身をピカピカで包んで邪魔なピカピカをどかす練習をしながら、ピカピカ団子を捕まえる遊びに熱中した。




