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夢見た未来と迫る現実

少年side

「サニャ、怪我の方は平気?」


 僕は隣で歩く彼女の顔を見上げる。

 彼女は僕の質問を受けると、おかしそうに笑う。

 数日経ち、サニャの怪我もようやく落ち着いて来た。

 その為、ようやく足を進める事が出来るようになった。


 だけどいくら快復に向かっているとは言え、彼女もまだ本調子ではない。

 なのでどうにも心配になって、度々容態を訊ねてしまっていた。


「アンタ、それ聞くの何回目よ。チョット心配し過ぎじゃない?」

「別に気遣う位良いではないですか」

「心配性、影響、誰かさんの」


 呆顔で僕に苦言を漏らすスズさんに、センリンがたしなめる。

 しかしソーラの言葉にスズさんは反応して食って掛かる。

 ソーラは隠れるように僕の背後に密着すると、陰からスズさんを覗き見た。


「チッ! 前々から思ってたケド、オマエ、私の事ナメてんでしょ!」

「スズ、あんまり苛めるものじゃないよ」

「アンタにダケは言われたくないわ」

「人聞きが悪いなぁ。私のは愛情表現だよ」

「えぇ……そうかなぁ?」


 僕は思わず疑問の声を上げた。

 悪気があるとまでは言わない。

 だけど、絶対に彼女が楽しいだけだと思う。


「おや、君には私の好意が伝わってないのかな。やはり行動で示すべきかなぁ?」


 そう言うとサニャは、自然な動作で僕の肩を抱き寄せる。

 センリンもスキンシップが激しい気があるけれど、サニャのは彼女と違ってなんだか艶かしい。

 僕は恥ずかしくなって、逃げようとする。

 だけど彼女はニヤニヤしながら巧みに腕でそれを阻んだ。

 それに乗じて、ソーラが逆側から抱きついてきた。


「ずるい、やる、私も」

「楽しそうですね、私も交ざります」

「ダー! アンタ等、潰れてンでしょ! 離れなさい!」


 便乗してセンリンがさらに上から被さり、スズさんが纏めて三人を叱りつける。

 その騒がしい様に、シスターは毎度の如く溜息を吐くのが見えた。



 揉みくちゃにされ、僕はぐったりしながら道を歩く。

 センリンとソーラはそんな僕の手を引いてくれていた。

 気持ちは有難いんだけど、正直彼女達が原因だ。


 前では悪ノリしたサニャがスズさんに小言を受け、それを飄々と受け流している。

 シスターは一人我関せずに、ただただ前を歩いていく。

 それでも僕達から離れすぎずに歩調を合わせてるのが彼女らしかった。


 出会ってまだ日の浅い僕達だけど、いつの間にかこんな光景がお馴染みになりつつある。

 目的も違う、いつかは別れるだろう僕達だけど、今この瞬間は確かに幸せに感じられた。


 叶うならいつまでもこんな幸せが続けば良いのに。

 僕は切にそう思いつつ、引かれるままに足を進めた。





 町へと辿り着いて早々、サニャが不思議そうな顔で道行く人を見ていた。


「どうしたの? サニャ」

「ん? あぁ、彼女……シュガー様に似ている気がしてね」


 視線の先を追ってみると、一人の女性が歩いているのが見えた。

 褐色の肌に垂れた白い耳、歩くたびに豊満な胸部がユサユサと揺れている。

 確かに以前会った魔導士のシュガーさんによく似ていた。


「ツカ、本人じゃないの?」

「まさか、彼女の住まいはずっと先だよ? スズだって知ってる筈だろう」


 確かにシュガーさんが住んでいた場所は、今僕達が目指している場所よりもさらに遠い。

 船を使う事を考えれば、ありえない距離ではないけれどそれでも奇妙に感じる。


「チョードイイじゃない、本人か確認してついでにキンキョーも伺えるじゃない」

「確かにそれも仕事の内だし、彼女が狙われる理由に心当たりがあるかも聞きたいしね」

「全く、勝手に行動方針を決めないで貰えるかしら」

「まぁまぁ、一度お世話になった方ですし、挨拶位しておいても良いのでは?」


 もはや完全に本人である体で話が進んでいた。

 だけど、僕自身もシュガーさんに色々話を聞きたい気持ちもあった。

 彼女もラルと同じ魔導士なんだし、もしかしたら元の世界に戻る手がかりが掴めるかもしれない。

 僕達は呑気に町中を歩く彼女の跡を追うのであった。

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