僕の名前1
僕達はシュガーさんの自宅? へと案内された。
以前訪ねた場所は、人里離れた研究所といった感じであった。
この町にあるのも多少人気が少ない奥地だったけど、町中ではある。
また、あそこに比べると随分と生活感がある様に思えた。
二階建てというのも少しばかり奇妙だ、誰かと暮らしているのだろうか?
彼女は居間にある広めのテーブルに僕達を着かせる。
「えっとぉ、お茶は何処だったかなぁ?」
「入れる、お茶、私」
お茶を用意しようとキッチンへ向かうシュガーさん。
それにソーラが足早くついて行った。
久々にメイドらしい仕事ができて張り切っているみたいだった。
シュガーさんはそれに「ありがとぉ」とのんびりした調子で礼を言った。
「何処? カップ、お茶」
「ん~? 多分そこら辺にあると思うから探してぇ」
「……分かった」
もてなしを早々にソーラに任せ、彼女はこちらへと戻ってきた。
「よっこいせぇ」と何とも気の抜ける声を上げて椅子へと座る。
僕達はそんな彼女に思わず視線を集中させてしまった。
集まる視線を彼女は妖艶に笑って返した。
僕はちょっぴり照れくさくなり視線を外して家の中を回し見る。
さっきは生活感があるなんて思ったけど、それにしてはちょっとした違和感を覚えた。
ある、というよりは、あった、と言う方が正しい、そんな感じだ。
だけど、明確にそれがどうしてなのかは分からなかった。
暫くするとソーラが人数分のお茶を持って戻ってきた。
シュガーさんはそれを一口含むと改めて僕達を流し見た。
「それでぇ? 私に何かあるのかしらぁ?」
「いえ、大した事では無いのですが、シュガー様は何故ここへ?」
代表してサニャがそう尋ねる。
以前彼女が住んでいた場所は、ここからだとかなりの距離がある。
これと言った用もなく訪れるとは思えない。
ましてや、ここまで広々とした家に住んでいるというのも不思議な話だ。
しかし彼女はその問いに「あぁ」と納得した声を上げた。
「以前いた場所は引き払ったのよぉ」
「引き払った? 何故です?」
「最近、私の周りをウロウロしてる人が多くてねぇ、鬱陶しいからぁお引越しぃ」
そう言って煙をはらうような仕草をする。
しかしサニャとスズさんは驚いたように顔を見合わせた。
「しかしここは? 見た所、一人で暮らすには広すぎる気がしますか」
「あぁ、譲ってもらったのよぉ」
「……そうですか」
サニャは不審な目を向けつつもそれ以上は訊ねなかった。
こんな大きい家をそんな簡単に人に譲れるものなんだろうか?
どう見ても三人以上の家族が住んでそうな家だ。
元々の住人がいないという事は引っ越したという事?
しかし話の本題ではない所為か口を挟むのは憚られた。
「周りをウロウロって、もしかしてコノ前のヤツの仲間?」
「んぅ~? さぁ? 聞いた訳じゃないけどぉ? そうなんじゃなぁい?」
深刻さの欠片もない声で彼女はそう答える。
それとは対称的にサニャは険しい顔だった。
「今、各地でペルシア様に関係のある魔術師が襲われているのです」
「へぇ~。それは大変ねぇ」
「えぇ。しかしシュガー様はどちらかと言えば中立派の筈です。何か心当たりはございませんか?」
「分かんないわぁ。誰かと勘違いしてるんじゃないかしらぁ?」
「呑気な方ですね」
「ただ頭が弱いだけじゃない?」
あんまりにも呑気な彼女の発言にセンリンとシスターは呆れた様に肩を竦める。
その二人をスズさんが小声で注意する。
ズケズケ物を言う二人も相変わらずだけど、まるで危機感のないシュガーさんもなかなかに凄い。
サニャだけは変わらず態度を崩さず、情報が得られないことに対しての溜息を吐いた。
「そうですか。目的はこちらの研究の妨害かと思います。何故貴女が襲われたのかが不思議でして」
「マァ、この前キョーリョクは仰ぎましたけど、流石にそれがカンケーしてるとは思えないしね」
「あら? 少しでも関わった奴は皆殺し。位の過激派かもしれないわよ」
「アンタは言う事がキョクタンなのよ!」
「でも、現状明確な理由が分からない以上は、それ位の考えはするべきかもね」
そんな三人の話題を聞いた途端、シュガーさんは納得がいったように手を叩いた。
「あぁ、ペルシア様の研究が関わっているのねぇ。それなら納得だわぁ」
「ほ、本当ですか? 何か心当たりが!!」
サニャは驚いて身を乗り出した。
それにシュガーさんは得意気な顔で口を開く。
「えぇ。そこの検体調達の方法は、私がラルに教えてあげたのよぉ」
僕を指さして彼女は信じられないことを言ったのだった。




