ホンモノが来た
「霊も視聴者さんもこんばんは!霊媒師YouTuberのヒトミです!今日も視えるもの、感じるものを、ありのままお伝えしますっ!
今回はなんと、人気急上昇中のトツオカさんとコラボ!!します!!」
「ヒトミチャンネルの皆さん、こんばんは!『突撃!オカルトチャンネル』、略してトツオカのリーダー!タケです!」
「博士です」
「カメラマンをしているのがマサで…」タケ
「こんばんは」マサ
「突っ立っているのがマモルです!」タケ
「普段は編集してまーす」マモル
カメラに向かってヒラヒラと手を振ってる。
「普段は心霊現象を扱っています!今日は霊媒師であるヒトミ先生に、トツオカがコレクションしている呪物達を見てもらうため、お越しいただきましたぁ!」タケ
「どんな呪物に会えるのか、ワクワクしてます!今日も元気に心霊調査、スタートです!」ヒトミ
元気に挨拶するヒトミさんがポーズを決めるのを見て、
〔ふーん。なるほどねぇ。わたし達を見に来たんだ〕
はるちゃんは言った。
コラボってこういうことをするのか。なるほど。
ヒトミさんはトツオカと同年代に見える。
それにしても、この部屋に女性がいるのは新鮮だな。
〔わたし達のこと霊視するんだって!!どうなるかなぁ。わくわく!!〕
〔はるちゃん、楽しそうだね〕
〔それはそうでしょ!霊媒師なんて初めて見たし、呪物になった今となっては、本物かも見分けられるし!〕
〔確かにね〕
あたしも同じ考えだったから賛同したら、
〔フン。呑気ナ モノダナ〕
タジュが鼻で笑った。
〔本物ダッタラ 祓ワレル ダケダロウ〕
〔暗いなぁ、タジュは!そんなんだから人を呪っちゃうんだよ〕
〔俺達ハ 呪物ダゾ?〕
〔わたしもサエちゃんも、悪い子じゃないもん!〕
〔善シ悪シ ヲ 霊媒師ガ 気ニスルモノカ!自分ノ手柄ニ ナルナラ、ソンナコト 関係ナインダヨ!!〕
〔うわ~、暗っ!タジュは暗い!!陰気だわー〕
〔オ前ラガ 楽観的 過ギルンダ!!〕
あたし達3人(?)がいつものようにワイワイしていると、じっとこちらを見つめる視線を感じた。
…あれ?
ヒトミさんがこっちを見てる。
しかも笑いを堪えてる。
〔ねぇ…。なんかヒトミさんと目が合うよ?〕
あたしが言うと、
〔ええ〜!そんな、まさかぁ!〕
明るく言ったはるちゃんの声が数秒止まり、
〔うーん…確かに〕
神妙になった。
〔ホラナ!俺ノ 言ッタ 通リダロウ!〕
〔なんで自慢げなんだよっ〕
〔一番に祓われるのはタジュだかんね!〕
あたしとはるちゃんの突っ込みに抑えが効かなくなったらしいヒトミさんは、
「ぶふっ!!あっははははは!」
盛大に笑った。
トツオカは謎のタイミングでの爆笑に、きょとんとした。
「…え?」タケ
「何?」マサ
「何かおかしかったです?」博士
「どうしたんだ…」マモル
〔あれれ…〕
〔これは…もしかすると……〕
もしかするのか?
ヒトミさんを見つめると、やっぱり目が合った。
そして、
「いやー。楽しい呪物達ね!」
ニコリとした。
〔あれーっ!やっぱり気づいてる?!〕
〔ウソウソ?!ホントにー?!〕
大興奮するあたしとはるちゃんを他所に、トツオカはまたきょとんとした。
「あのー、ヒトミさん?」タケ
「ごめんなさいね、タケさん。ここの呪物達、凄くお喋りだから…。こんな明るくて賑やかな呪物、初めて!」
「は、はぁ…」タケ
ヒトミさんは笑いの波が過ぎ去るまで、しばらくお腹を抱えていた。
この様子なら、直ぐに祓われることはなさそう。
ヒトミさんは改めてトツオカに向き直ると、状況の説明を始めた。
「えーっとですね。ここの呪物達は独自の関係性を築いてます。はるちゃんとサエちゃんは仲良しで、タジュは典型的な反抗的男子って感じですね」
「えっ?なんで呪物達の名前を知ってるんですか?!」
タケは驚きの声を上げた。
「まだ何も説明してないですよ?!」タケ
「はい。でも呪物達がお互いを呼びあってたので」ヒトミ
「タジュって?そんな名前を付けた呪物はいませんよ」博士
〔タジュはねー、一番上にいる陰気な人形のことだよ!サエちゃんが名づけたの!タイからやって来た呪物だから“タジュ”!〕
はるちゃんの言葉を受け、
「一番上に飾られてる人形のことですよ。サエちゃんが名付け親で、タイから来た呪物だからタジュと呼んでるようです」
〔俺ハ 認メテ ナイカラナッ!〕
「タジュ本人は不本意なようですけど」ヒトミ
「えっ?なんであの人形がタイの物って知ってるんです?!」タケ
「呪物達が教えてくれたので。ちなみに、タジュは危険な呪物でしたね。生前、婦女暴行を繰り返した男で、あの人形の表面に貼られているのはその男の皮膚です。見せしめに剥がされたようです。死後もその時の快感が忘れられず、あの姿になってからも女性を苦しめることを続けていましたね」
トツオカはゾッとした顔をして一番上のタジュを見上げた。
「そんな説明、購入したサイトになかったけど…」タケ
「人間の皮膚って…」マモル
「俺、掃除の時触った…」博士
青くなるトツオカに、ヒトミさんは「大丈夫ですよ」と笑いかけた。
「女性しかターゲットにされません。それに、今は大した力はないようですね」
「そう…なんですか?」マサ
「ええ。この部屋に来た当初は、呪いを振りまいて悪縁を呼び込んでいたようですけど。あの呪物を迎えてから、いろいろとトラブルが起こらなかったですか?例えば、決まりかけていた仕事が頓挫するとか、身に覚えのないトラブルが舞い込むとか…。
プライベートでも何かあったはずです。体調不良とか、上手くいきかけていた関係性が崩れるとか…」
4人はハッとした。
「ありました…ね」マモル
「機材トラブルが続いたり、決まりかけていたコラボが流れたり、盗撮されたり…」博士
「家族が入院したり、トツオカ内でも喧嘩があったり…」マモル
「もしかして…あれ全部ですか?」
青い顔をしたタケが尋ねると、
「ええ…。相当強い呪物のようですから」
肯定されると、タケは頭を抱えてた。
「うわ…マジか——。ごめん、みんな…。俺が勝手に買ったばかりに…」
博士とマサが、
「いや、もう終わったことだし」
「ちゃんと乗り越えただろ?」
慰めの言葉をかけた。
合わせてヒトミさんも、
「今はもう害はありませんよ。サエちゃんがタジュの力を削いでくれています。この部屋でもう悪さはできません」
タケを見て言った。
「え?」
「サエちゃん?」
マサとマモルがほぼ同時に声を出した。
タケと博士はあたしを見ている。
〔おおーっ!ヒトミさん凄いねっ!そこまでお見通しなんて!!良かったね、サエちゃん!今までの苦労が報われるよ!!〕
はるちゃんが感嘆の声を上げた。
その声が聞こえているヒトミさんは、にこり、と笑ってこちらを見て、小さく頷いた。
「サエちゃんが抑えてる?って、どういうことですか?」博士
ヒトミさんは笑みを誤魔化すためか、こほん、と咳払いをした後、話し始めた。
「サエちゃんは稀に見る力を持った呪物です。この部屋に来てから力がどんどん上がって、今では特級呪物になってます。でも悪さはしません。逆にトツオカさん達を守ってくれています。はるちゃんとも仲良しですね」
〔そう!そうなのー!!わたし、サエちゃんと離れ離れになって嫌なのー!!前の位置に戻して欲しいのー!!〕
「はるちゃんはサエちゃんと同じ段にいたいそうですよ。前の位置に戻して欲しい、っと言ってます」
ヒトミさんの言葉を受けて、トツオカはまたポカンとした。
「…移動させたこと、知ってるんですか?」マサ
「はるちゃんが教えてくれました」
〔わたしはサエちゃんの隣だったの!!真ん中の段だよっ。サエちゃんはいつも特等席に移動するから、取り出しやすい場所に置かれてるけど…わたしもそっちがいい!サエちゃんの隣がいい!!〕
「サエちゃんは撮影の時、特等席に移動するんですね。はるちゃんは真ん中の段に戻りたがってます。お喋り好きな子だから、サエちゃんと楽しく過ごしたいんでしょう」
「……」博士
「…凄いな」マサ
「この人、マジだ…」タケ
「本物だ…。いや、疑ってたわけじゃないんですけど…」マモル
はるちゃんの位置を当てられて、信じられないと目を点にして、トツオカはヒトミさんを見てた。
コラボ撮影を開始して早々に、次々と言い当てられたもんね。
そりゃそんな顔にもなるよ。
「あと、アドバイスするならタジュは下段に移した方がいいです。サエちゃんが力を削いでくれてるとはいえ、タジュ自身に呪いの力があるのは本当ですから。サエちゃんより低い位置に置いて、より呪いの力を抑えて貰うほうがいいですよ。私に色々とバラされたので、少しは力も弱くなると思いますけど」
〔ウグッ…〕
まんまと言い当てられたタジュは、ぐうの音も出ない、と言いたげに声を出した。
「そういうものなんですか?」
「誰でも秘密を言い当てられると弱くなるでしょう?それと同じです」
ヒトミさんの言葉に感心するトツオカを見ながら、はるちゃんは愉しげに笑った。
〔あははっ!タジュはいよいよ肩身が狭くなったね!〕
〔確かにね〕
こうして、あたしとはるちゃんはまたお隣さんになった。
あたしとはるちゃんは顔を見合わせ、満面の笑みになった。
久々に楽しい気分だ。
やっぱり声だけじゃなくて、姿を見てお喋りした方がいい。
タジュは一番下の棚に下げられ、ヒトミさんに軽くお祓いもされて、いよいよ力が落ちた。
タジュのお祓いが終わったところで、タケがすっかり目つきを変えてヒトミさんを見た。
「他にもサエちゃんとはるちゃんは、何か言ってますか?」
「お水をお供えして欲しいそうです。あとは甘い物ですね。たまにでいいので、デリバリーの食べ物も欲しいそうです」ヒトミ
「デリバリーしてることも知ってるんだ…」マサ
〔知ってるよ!この部屋で起こったことはなんでも知ってる!お隣の奥さんが『声が五月蝿い』って苦情を言いに来たことでしょー。博士がたまに奥さんとのノロケ話をしてることでしょー。マモルがこっそり彼女連れ込んでキスしてたことでしょー。マサが早朝に来て編集してることとかー、タケが秘密で登録者数50万人突破のお祝いにプレゼント買ってることとかー〕
はるちゃんが色んな秘密を暴露したけど、ヒトミさんは、
「デリバリー以外にも、この部屋で起こったことはかなり知ってるみたいですよ。今まで見てきたことを話してくれたんですけど…お隣さんからの苦情ってなんですか?」
気になった一つを厳選して尋ねた。
「苦情…?」マモル
「あれか?女性の泣き声や叫び声が五月蝿いって言われた…」マサ
4人は顔を見合わせた。
「半年以上前だぞ」
「あれ、動画にもしてないのに…」博士
「うわー…マジかぁ~!」タケ
口をあんぐりと開ける博士に、天を仰ぐタケ。
マサが当時のことをヒトミさんに説明する中で、はるちゃんが追加情報を入れていた。
あたしが怪奇現象の練習していたことだ。
ヒトミさんはそれもトツオカに話してくれた。
「あれ、サエちゃんだったの?!」タケ
「怪奇現象の練習って…なに?」マサ
「皆さんのためになるように、呪物として頑張ろうとしたみたいですね」ヒトミ
それを聞いて、
「それ、ちょっと笑えるな…」マモル
ふふっ、と表情を崩した。
「サエちゃんが瞬きしたこととも、関係があるんですか?」博士
「恐らく。一生懸命に声を出す練習をしていたので、力が高まって瞬きする、という現象として現れたんでしょう。サエちゃんとしも意外な結果だったみたいですよ」
「予期せぬ結果だった、ってことですか?」マサ
「ええ。それがトツオカさんの動画に出演するきっかけになったんですよね?」ヒトミ
「「「はい」」」
博士、マサ、マモルが感心した目でヒトミさんを見つめる中、タケは、
「いや〜。かなり驚きました!予想の100倍は驚かされてます!」
「そうですか?」ヒトミ
「いや、本当に!」マモル
「まさかこんなことになるとは…」博士
「霊媒師って本当にいるんだな…」マサ
「急遽、動画検証してもいいですか?!」
タケが身を乗り出す勢いでヒトミさんに詰め寄ってる。
「気になる現象が起きた動画があるんですっ!ぜひ見てもらって、どういう意味だったのか教えて下さいっ!!」
〔おおー。タケが燃えてる〕
〔あれは燃えてるねー〕
〔アイツ、結構熱烈ダカラナ〕
こうして、急遽コラボ後半動画が撮られることになった。




