静かな夜
《んじゃ、オレたちが連休でそっち行っても、やる事あるな!》
《んー。残念ながらー》
《いや、残念がるなよ!》
「んふふふ。あとはケイくんが来てから、ちょっと気になってるとこに行こー!」
凪くんと楓に釣りあげられたモグラのような邪気は意思の疎通ができず、タモと呼ばれた邪気の網の中で暴れるだけでしたので、そのまま楓が吸収しました。
おや? 今思えば“あっ、それ妾の…”とか未練の残る声が聞こえた気もします。湊くんが弓に手を掛けなかったのはそのせいでしょうか?
…しかし、アレを釣り上げたこともですが、邪気を扱った糸や網の練度に驚愕しました。
阿形や結だけでなく、楓も中々に…私も更に精進せねばなりませんね。
湊くんの発した“気になってるとこ”とは、阿形や私が感じた声と、その時の湊くんの視線の先にあるのでしょう。
皆が揃わねばならないほどの状況に陥る…もし彼がそう感じたのであれば、それまで爪を研ぎ続けましょう。
「そう言えば、楓の出す邪気って、邪気って感じしなくない?」
《うー…? どういうこと?》
「土の下にいた邪気モグラも、楓の邪気には寄ってこなかったって」
《何で? わっかんねぇ。なんか違いがあんの?》
《あー、ボクわかるー。食べれるカビと食べれないカビみたいなー……なんで楓、機嫌悪くなったー?》
―――
子供たちの対話を見届け、夜の境内へと意識を戻しました。
あっという間に涼しくなりましたね。
今朝は、おそらく今年最後ではないかと思われる一匹の蝉の声を聞き、夏を惜しむ時間を得ました。
飛び交った赤トンボは既に見かけず、夜に鳴り響く虫の音が秋の到来を告げています。
さて――
「阿形。湊くんと出会ってから、もう半年を迎えましたよ」
「吽形…そうじゃな。我らの存在する時間から見れば僅かなものなんじゃが……日々、濃いのぅ」
「ふふふ、今が一番、人を好きになれている気がします」
「おお、そうじゃ。ワシも今が一番、人を好きになれておる」
「あなたの場合、その中でも湊くんに肩入れしすぎている気がいたしますが?」
「…うむ。何故じゃろうな? 湊が一番怖くて…一番好きな人間じゃ」
「ふふふ、よくもまぁ、衒いもなく」
「ははは、何でじゃろうな。あやつの祖父が羨ましいぞ。ワシが人なら、孫を見ている感じじゃろうか」
「あー、あなたたちを見ていれば、そんな感じしますねぇ」
「そんなあやつの願い、この町での祭り。叶うのはそう遠くないと思うておる」
「えぇ。私たちの願いは既に叶いつつあります。それは私たちが欠けても問題ないほどに」
「そうなると…のう」
「そうですね…先ずは景くんが来てからの立ち回り、目一杯に頑張りましょう!」
「うむ! 目の前のものを一つずつ、丁寧にこなして行くしかないのう!」
私たちと町の人が同じ思いで動いた結果、風が吹きました。
私たちの掲げた参る石は成され、主様の社も建て直り、この土地の者、外からの者と参拝する方も増えてきました。
あとは、想定外の問題を解決するだけですね。




