黒幕?
「それだと噛み合わない気がすんだけど…んー」
湊の口から吽形の推理を聞かされたケイが唸ってる。
《だよねー。吽形もこの話した後、おんなじこと阿形から言われて首を捻ってるよ》
《…何がー? 何か変ー?》
「町の中に邪気が残って潜んでたとしても、ミナトやナギが見かけたのは町の外の人なんだろ?」
《そう。あー…町の外に出てって人に潜り込むとか難しいことできないかー》
邪気で溢れかえったあの日を思い出す。
日中は、初めてケイを撫でたり、ケイと海で遊んだり、ケイと一緒にお風呂入ってご飯食べて並んで寝て…
あれ? そうだ、アタシ寝てたよね?
んー…そう、なんか夢とか見た気がすんだけど、覚えてないなぁ…大事な何かだったんだけど――
「あれ? 結? どこ見てんの?」
「えっ? 何?」
あー、頭ん中で脱線しすぎてた。なんの話だっけ? 忘れちゃった。
《阿形と僕を追いかけてきた獣みたいなヤツなら、それもできそうだけど…そんなんじゃないんだよね》
《それ見たことないからわかんないー》
「俺もソレ知らねー…怖っ」
あっ、それ雑魚雑魚! 何匹居てもアタシの敵じゃなかった!
めっちゃ言いたいけど、その後何もできなかったことを聞かれたくないので割り込まないでおこう。
「そもそも、何で神社に邪気が集まったんだっけ? …何か陽菜さんが言ってたなー」
《顕在化? して光の強いところに引き寄せられたんだって》
《んー。楓がさー、“刺激を受けたり顕在化したりしたら気の影響を受けやすくなって、自然と光の強いほうに集まりだす”ってー。それ虫かよー? ……なんで楓、機嫌悪くなったー?》
虫とか言われりゃ怒るんじゃ?
楓はそっち側にいたんだし。
「んじゃ、獣みたいな邪気って何?」
《“邪気も重なれば動きを変える。社に集まるまでに重なったのが、動きやすい原始的な姿に変わったんだろ”って。…こわー》
「動きを変える…それ見たし、巻き込まれたわー…」
ケイが眉を顰めてアタシを見た。あの狭い空間の中で暴れ回る邪気に襲われたコト思い出してるんだろな。アタシもだ。
邪気、何でもありだな…
「で、結局。ソレとコレ、やっぱ関係なくない?」
ケイが最後に発した言葉の後、子供たちもアタシも黙ることになった。
きっと見えてない奴らも唸りながら首を捻ってんだろうな。
―――
「…知らないことイッパイあんなーって思った」
通話を終えたケイが、首の後ろで手を組んで天井を見上げた。
さっきの話だけで言えば、アタシだってその時に初めて知ったものばかりだよ?
そう、あっちの吽形が首を捻ってるとか湊が言ってたけど、こっちもなんだよなー…あっ、こっち見た。
『結。もし、あなたが強大な力から逃れることができたならば…その後どう動きますか?』
「吽形…まだ続けんの?」
呆れる。
…けど、そういった妄想は嫌いじゃないから困るんだよ。
「アタシが主人公ならさぁ…力を溜めて、どっかで仕返しするかなぁ」
「あー、結ならソレやりそう。んははは! 敵に回したくねー!」
「敵にすんなし! んでさ、アタシも力を溜めてる間にさ、何か技とか身につけてさ!」
「はははは、技! どんな? どんな?」
「えっ? えー…何か、すごいやつだよ。凄いの。あー、アタシの糸をグルグル巻きつけて……振り回す! 投げる! 叩きつけるっ!」
「…うっわ、主人公のやることじゃなくね? 引くわー」
「言い過ぎ! んじゃー、アタシの糸を相手の脳に繋いで、動きを操ったり!」
「それ、完全に湊の話題に挙がったヤツじゃん!」
「「あはははははは!」」
馬鹿みたいな話をして笑い合ってるアタシやケイとは違って、こっちの吽形は“なるほど”と真剣に考え込んでた。
え? アタシじゃないよ?




