想像力
響の持ってきたお土産のおかげで、重い空気は明日への期待に塗り替えられた…んだけど。
『さて、どういたしましょうかね…』
湊たちと別れの挨拶をして、あっという間に自宅に着いた。で、今は景の部屋。
景の机に置かれたアタシの隣で、青いお守りに宿った吽形の分け身が悩む声を聞かせてくる。
まぁ、ねぇ。
“コレ、ウチの神社で鬼退治したって言い伝えのある神様から。弓しかないけど、阿形と吽形が矢に見立てた気を練って、湊と景に引かせて。だ〜いじょうぶ、コぉレ人体に影響しない花丸安全仕様! …って聞いた”
響の言葉を思い出す。
その神様は景の事も知ってて2張の弓を準備してくれたんだろうけど…
“ンあ、当然だけど、霊体じゃなきゃ持てないからネ。弓は阿形と吽形でしっっっかり、管理してちょ”
……
こっちで景を霊体にする方法があるのか?
ちなみに、大翔を探すときに吽形とアタシの手を引いて霊体になった方法を部屋で試した…けど、何も起きなかった。しばらく試しても結果が出なくて、景は拗ねるように寝た。
「どうしよっか…」
アタシは吽形と目を合わせて、暗く静かになった景の部屋で一緒に悩むしかなかった。
―――
ほとんど吽形の独り言で進んだけど、“景の体に納まれる霊体が居ないとダメ”って気づいた。
両手でアタシと吽形の依代に触れてたからダメだったんかな?
あと、場所。こっちなら氏神様の神社とか。
「まぁ、試すにしても、景が起きて…お昼ごろかなぁ」
『ですが、いずれも憶測ですし…景くんや結を引き連れて行動できるほど、今の私に力があるのかが…疑問です』
そっか、だよなぁ…
そもそも景が霊体になれたとしても、危険ならアタシたちは止める。あぁ〜ぅ!
阿形と湊なら考えなしに突っ走って、でも結果出してそうで悔しい。なんかアイツら狡くない?
違う、あいつらのノリで行けばいい!
「吽形! アタシたちならやれる! 阿形と湊ならそう言う!」
根拠なんて結果さえ出せば…とか言うと、阿形どころか吽形も怒りそうだから控えとこ。
あ、ケイが起きたっぽい。おはよ。…えっ、もう朝?
「…おはよ。……俺たち、邪気の渦の中で一緒に耐えたんだ。阿形と湊に“凄い”って言わせよう!」
寝起きなのに気合い入ってんじゃん!
『「おー!」』
―――
お邪魔いたします。
景が氏神様の祀られる神社の鳥居で足を止めて、みんなで一礼した。
いつもよりも丁寧な所作の景に、なんか覚悟を感じる。
賽銭箱の前に立った景が、爺さん《昭一》と婆さん《和子》に貰ったお盆玉とか聞きなれない小袋から、安くない賽銭を納めてるのが見えた。覚悟ぉ!
アタシと吽形が拝礼を終えても、まだ目を閉じて手を合わせている景は、何を考えてるのか。楽しみでしかない。
“この社の主祭神にお話を通しておきます”と姿を消した吽形。
こいつは以前よりも存在感が強い。
あっちの吽形を救うために合体しちゃったから諦めてたんだけど、逆にパワーアップしてる。
…また、アタシだけ置いていかれてない?
「結、吽形。俺たちならではの方法、試そうぜ!」
―――
「吽形は貰った弓でパワーアップしてる! …多分。だからあっちの吽形みたいなことが、きっと出来る!」
『…弓は、お借りしているのですよ?』
…と言う吽形の言葉は無視された。
「湊にくっ憑いてた結は、霊体じゃなくても触れる力を持ってた!」
「出来てたけど…あれ、すっごくお腹空くよ? お小遣いとか足りる?」
一瞬固まって、家から食べ物持ってくるとか小声で聞こえた。おーい、さっきの覚悟〜?
「俺が吽形に触って霊体になって、俺の体には結が宿る! お守りと結の石はカバンで運べるし、みんなで邪気を祓って誰かの不幸を減らすんだっ!」
景が話し終わると同時に、吽形の宿るお守りに手を触れた。
…覚悟とか、想像力が必要だったのかな?
んで、湊にはずっとそれがあったのかもしれない。
アタシたちが一晩かけて至った前提に景の想いが重なった、たぶん最高の形を成したアタシたちが境内に居た。




