表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

「湊。忘れぬうちに依代へと気を込めるぞ。」


湊くんが来て早々、阿形が前のめりに話し出しました。

おや?気がつけば、名前で呼んでいましたね。いつからでしょうか?

ふふ、いいものですね。


えっ…?


「湊…?」


湊くんが、阿形の台座に、依代として使用していた欠片を…戻しました。


「おばあちゃんがね、お社のものは、たとえ敷かれている石でも持って帰っちゃダメなんだよ、って。教えてくれたんだ。」


あぁ…最近は持ち歩いていましたし、湊くんの祖母ならば、その欠片に見覚えもあったのでしょうね。


「お守りにしたいんだって言ったら、これをくれたんだ。」


おや、しっかりと主様の加護を感じるお守りですが、これは一体?

阿形は納得した顔をしていますね。


お守りとして込められている加護は、何やら特殊な感じですが、主様の御力で間違いのないようです。

先ずは無礼の無いように、主様へと御力の流れをお借りする旨、お伝えしておきましょう。


―――


阿形が集中し、依代となるお守りへ気を込めているので、湊くんへと質問することとしました。


「湊くんの祖母…おばあさまは、この社の関係者だったのですか?」


「そうみたい。昨日おじさん達に聞いたんだけど、おばあちゃんのお兄ちゃんが、最後の神主さん…ぐうじ?だったって。」


なるほど、なるほど。

宮司ですね。


「新しい宮司さんに来てもらえるかお願いしていたけど、なかなか来てくれないって。」


ですかー…

浮き沈みなく、緩やかに人が減るこの地に、わざわざ来てくださる宮司も居ませんか…


「おばあちゃんは、何も教えてくれなかったなぁ」


あっ、いけない。

昨日も帰宅後に依代越しに曇る気配を感じたのはコレですね?


「でっ、できたぞ、湊っ!」

うわっ、唐突すぎます。

湊くんも驚いているじゃないですか。


『聞こえるかのう?湊?どうじゃ?どうじゃ?』

なんでそんな浮き浮きしてるんですか…


阿形の感情に引っ張られてか、湊くんにいつもの笑顔が見えました。

阿形らしくない気遣いですかね?見直しましたよ。

あと、目の前にいるのにお守り越しで話すの、私の真似ですよね?


『湊。お前の祖母の件じゃがな…』


浮き沈みが激しすぎませんか?

前言撤回です、掘り起こさないでください…


『ワシは、あやつが幼い頃から知っておる。気遣いもできて強い人間じゃ。』


『湊に話していないことがあるならば、それはきっと、今は話せないというだけじゃ。

これまで通り、あやつを信じるといい。』


「…うん。」


『あぁ、そうじゃ…強いと言えば、この台座が欠けたのは、あやつの仕業でもあるのじゃ…』


突然しんみりした阿形とは対照的に、湊くんが笑顔になりました。


「それ昨日、畑の手入れ中におじさんが教えてくれたよ!

ウチの親父が小さい頃、宇美さんにチョッカイ出して農具で殴られそうになったって。

狛犬が守ってくれなかったら、今頃俺は死んでたって笑いながら話すんだよ、って。」


ああ、それ阿形に聞いた後に依代越しに聞いたので、あえてあなたに言ってませんでした。

“宇美さん”は湊くんの祖母の名前ですかね。


「ワシは…そやつを守ったのか?」

そんなわけないでしょう。


―――


今、私は機嫌の良い阿形を横目に、海に向かった湊くんの気配を確認し続けています。


主様の神気に影響されて自然に満ちる気とは異なるため、

この加護された土地を、自然に満たすものではありません。

先日賜った気を、お守りへと込められるだけ込めて、直接流すために運んでいただきました。


以前の依代では、ここまでの気を込めることはできなかったでしょう。

いくつもの主様のお力添え、ありがたいことです。


「阿形。あなた、あのお守りの事を何か知っているようでしたが…」


「…おぬしは、本当に細かいことを気にせぬのじゃな…昨日、湊の祖母が一人で戻ってきたじゃろう?」


そういえば。しかしそれが?


「湊の祖母も、父を支えるために神職に就いておった。

湊のためにお守りを用意し御加護を賜るため、本殿にて主様へと祈りを捧げたのじゃろう。」


…貴方は本当に細かいですね。

隣にいるのが貴方でよかったですよ。


「お守りの件も、主様からのお力添えの一つなのじゃろうな…

なんじゃ?急に静かになると気持ち悪いわい。」


台無しです。


湊くんの直感と、この町の人の声を聞き続けてきた祖母、宇美さんの考え方とも重なるのであれば、求めている道は開けているのかもしれません。

鳥居越しに覗く海を眺めながら、物思いに耽っております。


しばらくすると、砂浜に気が満ちるのを感じました。

範囲も広く、何度も繰り返していく必要はあるでしょう。

まだ春になって日も浅く、海へ目を向ける者も少ないでしょう。


ですが、少しずつ私たちの思う方へと流れてゆく気がします。


――――――――


この世界の狛犬

・狛犬(阿吽)が力と気を込めたお守りは、主祭神の加護と共存する。

本作はフィクションです。

作中に描かれる神や出来事は、信仰や感じ方の一つの形を表現した創作です。

実在の宗教・信仰・人物とは関係なく、それらを否定・評価する意図はありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ