お盆
盆を迎えて、心なしか涼しくなってきたようじゃ。
飛び交う赤蜻蛉も多く目に入る。…あっという間に秋になってしまうんじゃろうな。
凪に心から望まれた結果、禍が楓という名を持ち、縁で結ばれた。
凪については、楓に任せておれば間違いないじゃろう。あやつの凪に対する行動には、兄や姉のようなものを感じるからのう。
「…しかし、楓も周りを見ずに行動しおって。残された者のことを、凪の想いを考えぬとは何事か…もっと周りを頼れば良いものを」
「阿形…あなたにも同じ言葉を言って差し上げましょうか?」
ワシもあやつのような行動をとっておるとでも?
……あっ…気をつけねばな。
…おちおち口にも出せぬな。
それより、まだまだ反省する点があったんじゃと…吽形と話し合うた。
やはり、主様…神々のようには上手く立ち回れぬのう…
“町の者と一丸になっておると自負しとるっ!”
“お前のその一丸ってヤツの枠から外れた奴は居ないのか? あ?”
…以前交わした言葉が脳裏を過ぎる。今度会うた時に謝らねばな。
我らの想いだけで突き進んで…迷惑を被る者がおるとは思いもせなんだ。申し訳ない。
主様の見通すお力で均衡を保って頂けていたのに…申し訳ありません。
此度のように、我らが見落としていることはありませぬか?
そう確認させていただいたが、これまでと変わらぬ期待を込めた想いだけを賜った。
「吽形。夢の件を覚えておるか?」
「阿形。えぇ。今であれば、それはもう、鮮明に」
事実で上書きしておらぬだろうな?
「主様が見通されていた未来、我らで紡いだ、繋いだ縁。誤差はあれど、良い形に収束しておるように感じる。…いや、結や凪の件を正当化する意味ではないぞ?」
「…はい。主様から賜った想いから、この度の復興に関わる全てを任せて頂けていると思っています。あなたの言う誤差…何かを損なうような場合には、介入してくださると思っております」
…話が飛んだのぅ…介入?
「この社へと来てくださった宮司さん。恐らくは湊くんや景くんとは違う、主様が…大国主様が見えておられるかと」
「…」
あぁぁー、合点がいった、合点がいったぞ、あー…
じゃから、不要な詮索が及ばぬように距離をとっておるのか…
「…吽形、これは気づいてはいかぬ事ではないか?」
「…その際は柏手が聞こえて来ますよ」
あれかぁ…
―――
景の両親が盆休みで此方へと帰ってきた。
こんな時、子供なら親の顔を見て喜ぶもんじゃろうと思うたが…友と過ごす時間が僅かになったと言うことが強く出たんじゃな。どこか落ち込んでおる。
まぁ、すぐにいつもの景には戻っておった。
凪と、仮退院した凪の母親を呼んで、前回よりも少し賑やかな夕食が開かれたからのう。
湊は以前ほど深くは落ち込んでおらんようじゃ。そう、我らがおるから当然じゃな、湊。
夕食の席では、観光客が増えつつあること、戻ってきた若い衆、移り住んできた者など、嬉しい話が多い中で……やはり、悪しき行いも目につき始めたと聞けた。
邪気を携えてこの地に来られては…どうしても後手に回らざるを得ぬからのう…
しかし、この地の者が迷惑と思うのであれば、我らで対処しても問題はあるまい。
今聞けた迷惑行為として挙がったモノは記憶しておこう。
『阿形…あなたは加減を知った上で行動してくださいね』
口に出してもおらぬのに…
されど、吽形には同じ道が見えておるようじゃな。共に掲げた参る石は一度の達成を終えたが、都度発生する問題があるのは織り込み済みじゃ。
これを景がおる状態で、我らの次の活動として話すのは酷じゃな。
結とあちらに戻って落ち着いたあたりで話題に出そうかのう。
あっ楓っ、それはワシに供えてもらった酒じゃ、飲むでは無い!
…んっ? なんで苦しんでおるんじゃ? …なんか薄くなっておらぬか?
名が付いたとて、禍に変わりがないからか?
この席に居る大人連中から時折発せられる呪詛を必死に取り込む楓を見て、本当に様々な生き方があるんじゃなと…この席を眺めておった。




