後ろ
…凄いこっち見てる。
白い帽子の女が木陰の椅子に座ったのを見て、新しい椅子が増えているのに気づいた。
アタシがここに来たのは2ヶ月くらい前。…本当に変わったなぁ。
(結。主様が縁を結ばれました。…恐らくはその女性、私たちの姿を確認できています)
だろうなぁ…あっ、アタシに手振ってない? 振り返しとこ。…あっ、笑った。
(吽形。あやつ、先日の件を知っているような言葉を零しおったが、どう見る?)
(…阿形。今はあなたのように警戒するしかないと思いますが…)
アタシ達が見えた上で“無事だった”なんて言われれば、色々と勘繰っちゃうよな…
(その辺の決定は阿吽に任せるから、子供たちはアタシに任せて)
親指を上げた拳を阿吽に向けたら、2人して情けない顔をアタシに見せてきた。ははは、知らん。
「ケイくん、僕たちも裏に行ってみようか?」
「お、それ。そうしよ。ナギも気になるしな」
んー。そういやナギは禍と裏に行ったままか…阿吽も 2人のお守りに力込めてるし、隠れて話し合えるからアリだな。
目を向けたら阿吽も一緒に頷き返して来たから、満場一致だな。
―――
ケイに連れられて本殿の横から裏に回るまでの間、白い帽子の女は境内を眺め続けてた。
んー…わからん。
警戒を解くように進行方向へと目を向けたら、阿保みたいに色濃く姿を表した禍が目に入った。何やってんだお前?
だけど木陰に腰掛けて禍を見上げるナギを見ると…少し心配してそうだ。危ない、笑うとこだった。
『…何をやっとるんじゃおぬしは。参拝客に見えてしまうかもしれん程度に存在感が強まっとるぞ?』
〔分かってんだよ、だから裏に来てんだろ。こんな不吉な姿、参拝に来た人間に見せられっかよ〕
…
「禍ー。ボクはカッコいいと思うぞー?」
〔い、いや…まぁ、ありがとよ。ただココに来た人間には求められてない、そんだけだ〕
んー、コイツらが上手くやれてるのは、出会った時から見てて分かってる。
ケイとミナトが頷いてるのは“カッコいい”のとこか?
…ケイ、アタシも黒い着物着たらカッコいい?
『凪くんと禍の関係性から発生した現象かとも思いましたが、その線はなさそうですね』
お、アタシ、吽形と同じとこ見れてたんじゃん。んふー、頷いとこ。
〔ち…。さっきの白い帽子被った女、あいつの持ってた加護が影響してんだよ〕
お守りの加護?
おっし、さっきみたいに吽形と同じとこに落として頷いてやろ。
ケイやミナトなら社の主祭神が“大国主神”だから“縁結び”の加護っぽいよな。
禍の存在が強く現れるような加護…? そんな限定的な昔話、聞いたことないなぁ…
…やたら阿吽が静かになったのはなんでだ?
そう思ってケイとミナトのお守りを伺った時、子供たちの背中側、境内の表に通じる角から人影が見えた。
「うふふふふふふ。“八十禍津日神”って、ご存知かしら〜?」




