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追跡


 ちゃっかり景のお守りへと力を込めておった吽形との違いを思い知った早朝、一手遅れながら境内で湊のお守りへと力を込めておる。


「…あえて言わせてもらえるならば、お守りが手元にあった吽形と、壊れた携帯が手元にあったワシの状況というか…」


 湊が笑っとる。

 ならもういか。


「携帯壊しちゃったし、ボクのお守りに二人で入ったら?」


 それ出来てたら、しとるんじゃよ…


「わかって言っておる気もするが…格の高い神と違い、我らは一つの依代では押し合って共存できん」


「…」


 おぬしのその顔は……無言で頷くのは、一体何に納得いったんじゃ…?

 思わず目を逸らしてしもうた…


「景くんは宿題を終えてから来られるようですが、湊くんの方は進んでますか?」


 吽形の問いに湊が笑顔で固まっとる。

 …まぁ、祖母(宇美)るし大丈夫じゃろう。


―――


 昼にはまだまだの時間に、景と結が楽しげに境内へとやってきた。


 そう言えば昨日叱られた中に“本当ならこっそり来て脅かすはずだったのに”と入っておったんじゃが、それはどうなんじゃ?


 吽形から聞いておったが、なぎに会って話をすることは湊も賛成のようじゃ。


「湊、凪の家知ってる?」


「ん? んーん」


 景の問いかけに首を振る湊。

 なるほど、景も知らぬから聞いたのじゃろうし、どうしたものか…


「んんっ、そうじゃな。ならば学校の連絡網を使用するかのぅ」


 …湊、それワシの真似か?

 二人してわろうとるし…めんこいのう。


 んっ?


「吽形、わかるか?」


「阿形、はい。小学校のあたりに感じました。禍の発していた邪気です!」


 小学校は活気にあふれておるので、気も満ちやすく巡りも良い。

 その流れが乱されて、あの邪気が散るのを感じた。

 目立つ登場の仕方じゃな…


「学校かぁ。ナギくん、何か用でもあるのかな?」


「聞いたらわかるさ」


 話をすると決めた子供たちは当然のように椅子から立ち上がり、石段を降り出した。

 この子たちを連れて行くのは危険じゃが、我らだけでは動けぬという葛藤かっとう

 

 これを受け入れ甘えてしまうのは…禍とは言葉を交わせるという点と、結の存在が大きい。


「結…禍から噴き出す邪気があれば受け流してくれぬか? 我らは馬鹿正直に受け止めるようなことしかできぬ。いくら主様との繋がりが強まり、気が満ちやすくなってきたとはいえ、あやつと正面から撃ち合えば枯渇してしまう」


 結が驚いた顔をこちらに向けて、無言で怖い。

 また伝わりにくい言葉だったじゃろうか?


「おぬしの力、友として、仲間として、頼りにして良いか?」

 

「おう! 任せとけっ!!」


 なんか、湊と景がわろうとる…

 なんでじゃろう?


―――


「今月は月次祭つきなみさい終わっちゃったよ?」

「えー…次はいつ?」

「来月の15日かな? 毎月15日にするみたい。」

「お、ギリギリ行けるか?」

「ギリギリ? お盆明けに帰っちゃうの?」

「おとーさんたちがお盆休みにこっち来て、一緒に帰る予定。」

「そっかぁ……意外と長いね?」

「そう、めっちゃ遊べそう!」

「あはははは!」


 自転車を漕ぎながら交わされる子供の会話。

 良いのう。


 宮司が主様へと奏上する祝詞は、今回も我らの活動を知るような一節があった。

 隠す必要もないのじゃろうが、こうも回りくどいのは何故じゃろう…?


 そうこうしておると学校に到着したのじゃが…凪も禍も姿が見えぬ。


『気配もありませんね』


「散った邪気も自然に満ちた気で消えそう。任せろとは言ったけど、放っててもいいんじゃないの?」


『うーん…何がしたいかわからんのじゃから、放置はできぬ…』


 我らのやり場のない気合いも、この邪気のように薄れてゆく…


 むっ? 今度は違うところに禍の気配!?


『阿形、今度は浜辺ですっ!』


 何がしたいんじゃ…?

 やたら目立つ場所に行くのう…


「浜辺? こっから結構距離があるけど、ほんとに凪かな?」


「境内に裏から来るくらいだから、元気になったんじゃない?」


 境内の裏は車で来る道…湊と山に行った時に…!


『湊、凪はもしかしたら、おぬしが宇美から借りたような自転車を使つこうとるかもしれん!』


「あー。だから早いのかな?」


「あーね」


 うん? もっとこう、“すごい”とか“さすが”とか期待したんじゃが…


「んじゃ、スピード出すよ〜!」


「レッツ・ゴー!!」


 景の胸元で揺れるお守りから、吽形が囁いた。


『阿形。さすがです』


 何でこっちで言うんじゃ!? 境内で良いじゃろう?

 湊と景にも聞こえとるんじゃ! ほらまたわろうとる…恥ずかしくなってきた…


この世界の狛犬

・神社の御祭神のように、一つの依代に収まることができない。


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