表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/59

ずれ


(――私! 何をやっているのですか、私! 気を失っていては状況も共有できませんっ!)


 あまり馴染みのない気と、身に覚えのない記憶が私の体に流れ込んで…これはあちら(分け身)の私…

 …そうですか、景くん…今日こちらにいらしてたんですね…


 周囲を見渡すと、動かない阿形に景くんが寄り添い、そこへ気を浴びせる流れを作る結の姿が見えます。


 あの子供()と禍々しい幽体は…居ない?


「吽形! よかった…一体何があったんだよ!」


 私に気づいた景くんに言葉を返す気力がなく、今は微笑むことしかできません。


 まがと呼ばれた霊体へ全身全霊の一撃を与えようとした阿形。

 過剰過ぎるその力で消滅しそうな阿形へと、私が纏う気を加減せず送り込んだ結果です。


 それでも動かない阿形にと、結は必死に気を探ってくれています。


「吽形、なぁ、吽形。阿形が目を開けないんだよ…周りを探っても気が残ってなくて…さっきまでは町中に溢れてたのに、この付近だけ、なんで?」


 まったく…どなたかが言われていましたが、本当に加減のできていない。


 仕方ありませんね。


 これまで一緒だったんですよ。


 最後も、一緒でしょう?



 あなたのそばに寄るくらいしか、私も力が残っておりません。


「吽形? 何寝ようとしてんだよ! やだよ、阿形っ! 吽形っ!」


(…結、(分け身)、阿形を独りにはできません…湊くんと景くんをお願いします)


「やだ、やだよ、いやだっ」


 結…ふふ…



「っはぁっ、ケイくん! お守りを吽形にぶつけてっ!!」


 湊くん…息を切らせて…携帯の阿形に何か聞かされて戻ってきたんですね…何です?


『はっ、景くん、湊くんの言う通りに、早くっ!』


 …え?

 景くん、ちょっ…


「携帯阿形っ! 阿形にぶつけるよっ!!」


『御意じゃっ! いつでも良――ぶわぁー』


―――


「馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿っ!!!」

「いや、すまんかった、じゃが、じゃがのう?」

「いもー!!」

「ぶはぁー?」


 …私たちは、結にひたすら怒られています。


 湊くんの咄嗟の判断から、分け身の私たちを元に戻したことで霊体からだを保つことができました。


 携帯に絡まり出ることができなかった阿形(分け身)は、投げた携帯が壊れることで開放されたようです。

 相変わらず、なんとも思い切りがよい…


 浜辺に巡らせるためにとお守りに込めて持ち出した気。

 これを湊くんがそのまま持ち帰ってくれたおかげで…私たちも境内も、ある程度余裕がある状態へと戻ることができました。


 一息ついて、今回の件…以前見た夢を思い出しました。


 なぎくんと…まが


 夢で見たそのままの姿でしたが、何も事件は起こらなかったはず。

 ここまで明確なものであるのなら、主様が私たちに見せ――


「吽形! オマエ、アタシの話聞いてんのかっ!」

「えっ? あっ、いえ、聞いてませんでした」

「馬鹿ーっ!!」

「いたーっ?」


 結、私たち、消えかけてたんですよ…?


―――


 寄り添うようにして、ずっと静かに私たちを見守っていた湊くんと景くん。


 くっきりとわかる夕日になったのをきっかけに、景くんが結を連れて帰って行きました。


「阿形、吽形。明日、また来るから」


 景くんは、どこか落ち着いた感じになりましたね。


「ばーか。ばーか…」


 結は…もう半分笑ってるのに、ずっと文句を言い続けてます。

 …本当に、心配かけて申し訳ありません。



 動くこともできないまま、結に叱られ続けていたので…私と阿形は寄り添ったままです。

 そんな私たちの間へと、湊くんがゆっくり歩いて来ました。


 夕日の逆光で表情が見えないまま、私たちの間に座り――


「もう、誰も居なくならないでよ…」



 静かに泣く湊くんに話しかけることはできず、私は阿形と側にいることしかできませんでした。


この世界の狛犬

・分け身は、本体に戻ることができる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ