↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/118

活動開始


 おや、参拝客ですね? どうぞごゆっくりと。


 年配のご夫婦でしょうか。

 男性が“湊の登る速さにはついていけない”と、手を繋いだお相手に零しておられますね。


 なるほど、あなたがたが湊くんの祖父母ですか。


 ん? 祖母の方が阿形を見たような?

 …え? どうしました阿形?


―――


「阿吽には、ここの神様が見えるの?」


「何じゃい藪から棒に。…しかし、はて?」


 依代へ気を込めている私を気遣ってか、湊くんは阿形へと質問したようです。


 ですが、阿形も感じたようですね…私の出会った違和感に。

 今までの私たちにとって、声は“届き”、姿は“感じる”ものだったのです。

 ですから、これまでの私たちは思いを届け合っていて、参拝者に気づかれなかったのでしょう。


「湊くん。私たちは主様を“見て”おらず、“感じて”いるのですよ」


 阿形のこちらを見る目は、“理解できない”と語っています。


「それって、僕たち人間と同じってこと?」


「えぇ。立場が違うだけで、そうなのかもしれません」


 私たちは付喪神であり、この狛犬へ宿ってからの年月しか存在しておりません。

 ここに祀られている主様のように永く在り続けるお方から見ても、変わらぬ存在かもしれませんね。


「そして人々の中には、深い信仰の先に神が見えるようになる者もいます」


 同じ神でも、神の見え方は人それぞれですが。


「その“見える者”がお守りを持ち訪れた社が縁を解放し、そこに我らが”狛犬網”として繋がりに行くのじゃ」


 あっ、先日の説明不足を補うように阿形が割り込んできましたね。


「…えっ? 条件が整うことも多いって言ってなかった? …そんなに見える人がいるの?」


「そう感じるのは、そういった人は見えていることを教えないからでしょう。見えていると言えば、そうでない人から変な目で見られるでしょうし」


「…確かに。阿吽と話ができるなんて、おじいちゃんたちにも話さないなぁ」


 そうなりますよねぇ。


 …阿形が私に向き直りましたが、なんですか?


「吽形よ。我らは、人のように見たり話す必要がなかった。しかし、今は湊を見て、湊と話をしておる」


 これは問いかけでしょうか?


「そうですね。きっと阿形や私も、人々と同じように願っていたのでしょう。土地を出て気を集め、社と主様との縁を深めたいと」


「そのために、主様が我らと小僧を引き合わせてくださったのか…?」


「…願ったから、叶ったの?」


 一緒に見つめられても…私では明確な答えを出せません。


「きっと、願いを叶えるためのお力添えをいただけたのですよ。叶えるのは願った者です」


「信仰とか僕はわからないけど、なんで阿吽と話せるようになったの?」


「どこか私たちの願いと重なったのかもしれません。それは主様のみが把握されているのでしょう。…湊くん、ここに足を運んでいただき、心からお礼いたします」


「えっ、やめてよ。神様は見えないけど、僕だって町を元気にしたいんだから」


 あっ…それは私が誘導するように話をしてしまったからかもしれません。

 いや、どうでしょう…?


 阿形、そんな目で私を見てないで、いつものように割って入ってください。


「…小僧。それは本当におぬしの願いか? 吽形に唆《そそのか》されてはおらぬか?」


 いつもは煩《わずら》わしいですが…ありがとうございます、阿形。


「大丈夫だよ。友達が帰ってこなくても、お祭りが再開しなくても。きっとみんなこの町を元気にしようと頑張ってる。僕は僕で町の人たちとは違う形で頑張るんだよ」


「小僧…」

「湊くん…」


―――


『聞こえますか湊くん? お伝えした通り、このまま15分ほど進めば目的の社へと到着いたします』


「聞こえてるよー。さっき案内板で場所も確認したし、大丈夫だよー」


 主様のお社から湊くんの自転車に揺られて数分。

 人通りの多い道から離れたあたりで私は話しかけました。


『少し遠回りになるのですが、次の突き当たりは左へと曲がってください』


「んっ…わかった!」


 感の良い子のようで。

 湊くんから緊張が伝わってきます。


「…もし一人だったら、絶対にこっちには曲がりたくなかった。…そう言うことなんだね?」


『はい。その直感、大事になさってください。良いものをお持ちです』


 舗装された道は土へと変わり、木々で覆われた薄暗い場所へと変わってきました。

 さぁ、湊くん。お力を貸してください。


『安心してください、常に私が見守っております。この辺りには湊くんを傷つけるようなものはおりません』


「…ふーっ」


 ゆっくりと息を吐いた音が聞こえました。

 私の言葉が届いたのか、少し緊張も解けたように感じます。


『ここです湊くん。手袋は持ってこられましたか?』


「うん、軍手を借りてきたよ。…お地蔵様が倒れてるね」


『そうです。神も仏も、それぞれの考え方で土地を守っております。この辺りはこの方が守ってくださっているのでしょう』


 依代に込めた気を周囲へ流し、湊くんの体にも少しだけ流します。


「んぅっ!? 吽形、何かしてる?」


『はい。先ずは周囲へ気を流して整えました。湊くんの力もお借りしたいので、湊くんにも少しだけ気を流しております』


「えっ、もう何かしてるの? …その整えた“気”が僕に流れると…どうなるの?」


『安心してください、身体を害することはありませんので。そうですね…お地蔵様を、子供でも安全に起こすほどの力が出せるかと思います』


 湊くんは目を丸く見開いてから、自分の手を見て頷いています。

 迷いなく地蔵の元へ進み、その台座の土を払い、地蔵を丁寧に起こしました。


 社で見た湊くんには呑気な雰囲気を感じていたのですが、なんと手際の良い。

 さぁ、私も負けずに浄化まで終えましょう。


 地蔵を見遣る私の横で手を合わせる湊くんを見て、大人をよく見ているのだろうと思い…少し複雑な気持ちになりました。


―――


 仕事を終えた私たちは、依頼を受けた社へと到着しました。


「ここだね、吽形!」


 社の側に自転車を停めながら、元気が有り余る声が響いてます。

 少し気を込めすぎたかもしれません。


 落ち着くように一呼吸置いてもらってから、鳥居の前で手を合わせました。


 お邪魔いたします。


『今、私たちの主様がおられる社とこちら(この社)は狛犬網で繋がっております』


「…えっ?周りには誰もいないけど…神様が見えて、お守りを持った人が居ないといけないんじゃないの?」


 周囲を見渡す湊くんの言葉通り、今はこの社に誰も居ません。


『阿形に聞いたところ、一度繋がった狛犬網に気を通し続ければ、その繋がりは保てるそうです。ですので先日から繋ぎ続けております。さぁ、最後に御祭神へと参拝しましょう』


 繋がりを保つためには気を消費します。

 次に何時《いつ》この社と狛犬網で繋がれるか分かりませんので、繋ぎ続けておくしかなかったのです。


 鳥居の先に在った此処《ここ》の狛犬達に話しかけてますが、その声は聞こえていない様子。

 残念そうな姿の湊くんが石段の先を見上げ、頷いて歩き出しました。


 私も当たり前のように見る、聞く、話すの行為が根付きましたが、これまで通りの意思疎通も行えてます。御祭神への参拝と結果報告を終えることができました。


『湊くん、ありがとうございます。狛犬網を通じて主様の社へと賜《たまわ》った気を送ることができました』


「やったね! やった! やった!!」


 記念すべき初仕事を終えて、私も同じくらい嬉しいですが…

 回転しながら依代を掲げるように上下させる湊くんに感謝しつつ、見る行為から得た、目が回る、を覚えることとなりました。

 止まってください、お願いします。


この世界の狛犬

・これまで人や物、風景は感じ取っていた。(知識で知っているようなもの)

・これまでも、今も、格の高い神(御祭神、八百万の神)は見えず、感じ取っている。思いを届け合っている。

・狛犬網は相手の主祭神に許可なく繋ぎ続けることはできない。

・狛犬網に繋ぎ続ける気の量は、報酬として得る気に比べれば遥かに少ない

・依代に込められる気の量は、依代により変わる。今の依代には報酬の気を蓄えれるほど容量がない。

・依代に気を込めた阿吽の力が、依代越しに使用できる。(周囲へ気を流して浄化など)


以下はAIで作成したイメージです。ふわっと認識してください。

(このイラストのみAI作成です)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。