指の先
面白かったから思わず話に乗っかったけど、阿形じゃないと思うんだよなぁ。
阿形のは、もっとこう、不器用なのに優しい。
もしかして、通信網を通ってきた霊体で気を扱うと、湊の塩おにぎりみたいに偏るのかな?
「…無いな」
アタシの心の中では、ほぼ吽形で決まってる。
ただ、吽形がしらばっくれる意味も理由もないとも思う。
「どう思う? ケイ」
寝る前なので、お守りは机の上に置かれている。
今、ベッドで横になったケイに届くのはアタシの声だけ。
「うーん、阿形は面白いよなーって」
さっきの流れからなら、そんな回答になるよなーって。
―――
「いってらっしゃい!」
いつものように学校へ行くケイを見送り、少ししたら家には誰もいなくなった。
今回の件でケイは、安心した優しい顔じゃなく、口数も少なく沈んだ顔を見せた。
あれはもう、絶対に見たくない。
だからと言って、何もしなければ成長も恩返しもできない。
体の具合を見ながら、外から部屋の中に気を流し込む。
これまではアタシを中心に大きな流れを作ってたけど、今は指先から気の流れる道を…絞り込むようにゆっくりと。
阿形が気を絞ってた感じに似せて、狭い範囲だけ気の流れる道を作り、周囲の気を引き寄せて乗せる。
…あれ、これ、楽に距離を伸ばせそう。
ふと我に返って、いつものように隣に置かれているお守りに近づく。
その加護については、ケイとミナトが持ってれば“霊体や気の流れが見える”と阿形が言ってたっけ。
アタシに何かあった時、みんなの知らない加護とかで助けてねと、ベタベタ触った。
阿吽の社の主祭神の加護。
アタシが無事なのって、実はそれのおかげ?
いや、そんな神の加護から流してもらった気って感じじゃないか。
考え込みながらぼーっとお守りを見つめてて気づいた。
「…気が少し溜まってる?」
―――
なるほど。
アタシが起こした気の流れの中にお守りがあると、ゆっくりと気を吸収していくのがわかる。
そして気が溜まる力は、アタシの力ではないこともわかる。
だって理解できないし。
加護なのかなぁ…
範囲を狭めて伸ばし、気を流すことにも慣れてきた。
集中するのに眉間に皺がよりそうだけど、今までが制限なく暴れていたようなものだと思い知った。
見て。両手の指からそれぞれ縄のように伸びた気の流れる道を。
これが修行の成果か。
まだまだ時間も余力もあるけど、これをどう説明するか考えとこう。
細く伸ばした気の流れを解こうとした時、指先から送っていた流れが突然吸い込まれ始めた。
「えっ、何? 何?? 解けない!?」
吸われる力が強すぎて、どうやっても流れが解けない…
「くっ、くそっ!!」
他の指から伸ばした気の流れをぶつけようとした。
けれど、その指の流れも捕まるように吸い込まれ始めた。
「えっ、やだやだ、やだっ! 嫌っ!! ケイー! うわーーーん!」
「うぁっ」
指先の気の流れが切断され、引っ張られる感覚がなくなったアタシは、後ろに転がった。
『何やってるんですか、あなたは。まったく…』
目の前にいたそいつはそう言って、スッと姿を消した。
アタシはそこに指を向けたまま、思わず声が溢れ出た。
「お、おま、お前えぇぇ!!」




