好奇心
雨じゃ。
今、ワシの狛犬像に降り注ぐのは恵みの雨。
土地も生き物も潤し、穢れを洗い流す。
そんな有難いものを、僅かでも恨めしく思う日が来ようとは思わなんだ。
湊も学校に行き、社にだけ集中すれば良いんじゃ。
それなのに…携帯は通話もしておらぬのに定期的に通信が行われ、その都度意識が引っ張られてしまう。
これ、ほんとに邪魔くさいんじゃが…
いっそ繋がりを断とうか…そう考える度に浮かぶ「雨の間、ずっと阿形とだけ話せないのは寂しいかな…」という湊の姿。
それ狡くないかの? …狡いわ。
じゃが、最近は調子を落としていた吽形も、いつもの状態に戻りつつある。
多少は慣れぬ依代に気を取られても良い気がしてきた。
何も伝えておらぬのに、吽形の呆れた顔がこちらを見ておる。
違うぞ? 何でも前向きに受け取り、世の中の流れを知るのも――
「程々になさってくださいね」
…うむ。
―――
なんの成果も得れやせぬ。
流石に文を読むわけにはいかぬから、定期的な通信を探ってみたものの…時間が更新されること以外は中身を理解できぬ。
これが湊の家にあるタブレットならば、映像のやり取りなど様々な機能、幾つもの事例から何かに結びつくやも知れぬ。
…面白そうではある。
あと、逆に困ったことが起こったんじゃが…それは後にしよう。
何とかなるかも知れぬし…
―――
本殿の裏にある畑の方に宮司と宇美、英彦の気配がある。
この時期、こんな小雨の中でもやらねばならぬことがあるのじゃな。
我らでできる限りの事はやる。おぬししかできぬ事を頼んだぞ。
「阿形。宮司さんも町の人と馴染んできたようですね」
「吽形。どうやら調子が戻ったようじゃな。宮司のこともあったが、おぬしのことも気に掛かっておったわ」
「…気づいていたのですね」
何となくじゃがな。
「私は思うのです。湊くんと出会ってから行ってきた数々。どれもが求めている結果に結びついたのか、と」
「むぁ?」
求めている結果?
「私も阿形も、主様や狛犬網から得た知識で気や力のあり方を観測してまいりました」
「…うむ」
「経験という意味では、湊くんと出会ってからのことが大半です」
何なら、どこからも得られておらぬ知識をもたらされたからのう…
「例えば、主様のような格の高い神の真似事をして、同じ結果を得られているのでしょうか?」
確かに…




