意識
境内での発言に気をつけるように言ったと注意する阿形に対して、「返事はしてないよ」と屁理屈を言う湊くん。
そんな仲の良い二人を見ながら、人影の件が気になって仕方がない私、吽形です。
「どうしたの?」
「はっ、あっ?」
“視界に入らない”、これを理解しました…認識できていない――意識の外なのですね。
首を傾げた湊くんを認識した時、思わず声が出てしまいました。
「いえ、大したことではないのです…」
大したことでなければいいのです。
「まだ気にしておるのか? ハムカツが居ったときに、本殿の裏あたりにあった気配…じゃったな」
「…えぇ、そうで――」「え?」
え?
どうしました湊くん?
「もしかして、それナギくんのことかな?」
―――
公勝くんが大声を上げたとき、“去っていく凪くんの後ろ姿を見た”と聞いていたそうです。
湊くんたちの同級生で、学校で滅多に見かけない子。
湊くんが楽しそうに語る公勝くんの逸話はさておき…
「では、吽形が感じた気配は“凪”じゃったとして、月次祭で感じた“似た気配”とは?」
「普通に考えれば、月次祭に参列された凪くんの親、なのでしょうね」
…何を気にしていたのか分からなくなってきました。
「…」
湊くんが何故か黙ってしまいました。
この話はここまでにしておきましょう。
「はい! こうしている間にも、各地で賜った気が痛むかもしれません! 今日は阿形の番ですよ! 商店街辺りからゆっくりと気を流して行きましょう!」
「何を言うか! 賜った気はワシが日夜丹精込めてゆっくりと巡らせ管理しておる! 痛むことなんぞ無いわっ!」
「あー、はいはい、急ぎますよ阿形」
「ちょ、押すでない吽ぎょ…なんじゃー!?」
無理を感じながらも、阿形を湊くんのお守りに押しつけて気を込めてもらいました。
…すいません、阿形。
―――
湊くんはお守りと共に商店街へ気を流しに行っていただきました。
日が暮れ始めたら、お守り越しに阿形から帰宅を促してもらう予定です。
阿形、私の奇行にお付き合いいただき、助かりました。
「…で、吽形。湊と凪に関わる話で、何か気にかかっておるのか?」
器用なあなたのことです。
今もこうして私と話しながら、湊くんとも会話をしているのでしょうね。
「凪くんと血縁関係にある、そう遠くない人物があの場にいたのでは…と、考えております」
「…それはもう、見知った者たちを除けば限られる気がするんじゃが…はっ?」
突然厳しい顔になった阿形を見て、その理由につながるように――私の意識の外から人の気配が入り込んできました。
「はははは……素晴らしい」




