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ダメなやつ


「僕は…ずっとここに居るつもりだけど…」


 えっ、突然なんですか?怖い!


 ケイくんが帰ってから元気がなかった湊くんの発言だから重たい…

 天気もよく涼しい午後には、似つかわしくない一撃です。

 阿形も口を開けて固まっています、阿形ー!?


「どうしたんですか?言葉の意図を探るよりも、ただただ湊くんを心配してしまいます…」

「そう、そうじゃ。ケイも結も、盆にはまた元気な姿を見せてくれるんじゃ。おぬしの言葉の先に、終末を感じてしまうぞ…」


「…」


 わずかな間も怖いです…


「今みたいに阿吽と一緒に行動できる時間って、どんどん減っていくと思うんだ」


「はい…」

「うむ…」


 確かに、勉強や仕事、人間関係と、きっとこの仕事に割ける時間は減っていくと思います。

 それを考えていてくださったのでしょうか?


「…でね?そんなだから、少しでも早く参る石(マイルストーン)を達成して、人が集まる時期を早めた方がいいと思うんだ」


「ケイくんと一緒に商店街にも気を巡らせることができましたし、順調に進んでいますよ?」

「いつ旅行者が増えてもいいように、山にもアタリをつけたではないか」


 …山は結がらみの1件だけでしたが、最奥の旅館跡ですし、復興には関係しますね。


「旅館はすぐに建たないけど、人が増えないと、その計画が立つのも遅れちゃうよ?」


 ん、湊くんらしくない言葉回しですね?


「…湊、宇美から何か聞いたな?」


「あはは、バレちゃった。でも、おばあちゃんの話を聞いてたら、人が増える頃には僕もおじさんになってるかもなって思ったんだ」


 私たちは直樹さんから海の感想を聞いて、こんなわずかな時間で違いを感じてもらえたと喜んでいましたが、湊くんにとっては……

 今になって、湊くんと私たちの時間の流れが大きく違うことを、身に染みて感じました。


「…でね?」


「えっ?」


 私も思わず声が出ました。

 阿形が、宇美さんを見た時と同じ顔になってます…

 私も怖いです…


―――


 巡り合わせなのか、湊くんの求めるお社と繋がってしまいました。

 九州のへそと呼ばれる位置にある、聞いた限りでも特殊なお社です。


「阿形、そちらは任せましたからね。何かあっても絶対止めてくださいよ?」


『おぬし…ワシは、ケイを止めるよりも難しいと思うとるよ?』


 奇遇ですね、私もです。


 湊くんの話の続きは、「気をたくさん借りて、復興したあとには増えているはずの気で返したら?」でした。

 狛犬網では狛犬が持つ情報しか得られず、気の貸し借りなどの詳しい話は御祭神に直接話を伺うこととなりました。


『…すごい松じゃぁ…』


「何を観光してるんですか、羨ましい」


『いや、気の貸し借りについては、離れの社に祀られている御祭神に確認をするように言われてな…』


 狛犬網を通り抜けた湊くんと阿形を待つように、

 私は腰掛けた湊くんの体を預かり、その首から下げられたお守り越しの阿形と話しています。

 色々できて可能性を感じますが、ずっとどこかに不安を感じています。


『田んぼか…水も綺麗じゃ』


 わざわざ状況を伝えてくれているのか、漏れているのかわかりませんね。


 …主様のお社を管理していた宮司様も、兼業で農家をされてましたねぇ。

 新しい宮司様が来られても、きっと神主だけでは生活できないでしょう…

 なおさら、ここに来られる人は限られてきそうですね…


『吽形、戻るぞ』


「え? おはや…うわあー?」


 湊くんの体から弾き出されたようで、霊体の私が宙を舞っています…

 湊くんの霊体がすごい速さで体に戻っていたようです。


「な、なんなんですか、一体!」


「いや、我らが見えている者が二人もおっての…御祭神がたには先にお詫びをして、話を聞き終えて瞬時に戻ってみたんじゃが…」

「…すごいけど、この前戻ってきた時より…衝撃がすごいね…」


「…もう少し前もって教えてくださいよ…」


「いや、近くに来てマジマジと見られると、こちらも余裕がなくなってな…」


「好奇心旺盛な方もおられるものですね…」


 湊くんがくすくす笑っています。

 一緒に色々な思い出を作り、あなたの空いた穴を埋めていきましょう。


「で、じゃ。気を借りれることがわかったのじゃが…定期的に返す必要があってじゃな」


「唐突に話し始めましたね…えぇ、借りるのであれば、そうなりますかね」


「…返せない場合は、この土地から、直接気を徴収するようじゃ」


「は? いや、次元が違う神が祀られていると聞きましたが、そこまでですか…」


「返すのが当たり前じゃし、別に利子を取るわけでもない。お互いが約束を守る、それだけなのじゃが…どうしても返せない時があるやもしれん。最悪の場合は、主様との繋がりが絶たれてしまおう」


 きょとんとした湊くんの顔ですが、阿形が顔を背けています。

 私も、好奇心からのとんでもない言葉で出ることを覚悟しました。


「…どうぞ、湊くん」


「返せないときは、他の社で借りて返したら?」


「それは…」

「…ダメじゃろう」

「ダメかぁ」


この世界の狛犬

・付喪神の霊体が本体

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