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またね


 ケイは口を尖らせたまま、地面に大の字になり、空を見上げておる。

 まぁ、吽形がそばにおるし、大丈夫じゃろう。


『これはまた、難儀な場所じゃのう…』


 結を手に乗せた湊と共に、ワシは荒れた建物へ向かい浄化を始めた。

 結はケイから離れたがらないと思ったが、すんなり付いて来おった。


 今は、吽形に聞いたほどに酷く荒れた状態ではなくなっておる。

 ケイたちが門を開けたことで気の流れが生まれ、正常化してきたのであろう。


 結はコツを掴んだのか、ワシの流す気を濁った気へぶつけて、ゆっくりと流れを整えていった。

 急激な浄化が気の乱流に繋がったと考えておるのだろう。


『ふぅ…大事に至らず良かったわい…結、助かったぞ。ありがとう』


「ふん…吽形にも言ったけど、ケイやミナトを守れなきゃダメだろ。もっとしっかりしろ」


『…耳が痛いですねぇ…』


 離れた所にいるケイのお守りから、吽形の返事も聞こえてきた。

 しっかりとこちらの様子も伺っておったのじゃな。


『あぁ、言葉も無いわ…ここに湊とワシが来ておっても、きっと同じことが起こったじゃろう』


「…」


 湊は狭い空間に巡りだした濁った気に対して、顔をしかめて黙っておった。

 我らの対話にはあえて口を出さず、見守ってくれておるのかもしれん。


―――


 浄化を済ませた我らは、直樹の待つ社へと到着した。


 合流した3人が昨日のように揃って参拝を行なっているなか、ワシは主祭神へ、あの建物はいずれまた同じことが起こるだろうと報告した。


 閉じておった門を、開いたままでは帰れぬからのう…数年もすれば、濁った気が満ちてしまう。

 同じような場所は他にもあろう。

 人の手で起こしたものは、人の手で対応してもらわねばならぬことが多い。

 どうしたもんかのう…


 車に戻った我らは、車の扉を開けたままにして昼食になった。


「景。微妙な顔してるね。ふふふっ」


 直樹の言葉に反応して、ケイが膨れた。可愛いの。

 しかし間が悪い…口に含んだ食べ物が不満と一緒に飛び出おった。


「わぁっ、景っ!ちょっと、コラっ!」

「うわっ、ケイくん…ふふっ」


「ミナト笑うなよっ!おとーさんが悪いっ!!」

「景…えぇ〜っ?」

「んふふふっ」


 我らは想定していたよりも消費してしまった気を、この間に蓄えさせてもらった。


―――


 昼食を終えて、新たな目的地で直樹と別れた。


 次に予定していた仕事は、初めから二人一緒に行動することにしてあった。

 じゃが、ケイにいつもの元気がなく、気になっておった矢先に湊が声を出した。


「…あそこは、ケイくんと結がいたから、浄化できたんだよ」


「え?」


『そうじゃな』

「そうだろう?」

『そうですね』


「…ケイ。帰るときは…アタシも連れていってよ。今日みたいに、力になれるから…」


「それは連れて帰るでしょ?」

「いや、当たり前じゃん、一緒に来てよ…」


『おぬしが行かんと、誰がケイを止めるんじゃ…』


『主様のお守りが強力すぎるので、結にはお目付け役としてケイくんを抑えてもらおうとお願いする所でした』


「オレ、そんな言うこと聞かない感じ?」


 主様のお守りで、普通は見えぬものが見えてしまう。

 ケイの場合はそれらに引っ張られてしまいそうじゃ。

 結ならば我らと違い、場所には縛られずに先ほどのように力を使えよう。

 これも主様の思し召しだとすれば、感嘆の声しか出ぬ。


 ケイも会話を重ねて気も紛れたのか、いつもの元気を取り戻しおった。


 翌日、ケイが帰る時は、溢れる寂しさに押しつぶされそうになった。

 結、ケイのことは頼んだぞ…


この世界の狛犬

・依代越しの力は、繋がっている気にも考慮して、繊細にしか行使できない。


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