友達
阿形と共に息を潜めて、湊くんとご友人であるケイくんを見守っております。
先日の雨模様からは多少回復しましたが、まだ空は曇り模様です。
…そして、そんな空のように曇った顔でこちらを睨む阿形が怖いです。
阿形も気づいたのでしょう。
ケイくんも主様の加護が込められたお守りを持っていることに。
そして、こう言いたいのでしょう。
なぜワシにそれを教えなかったのか、と。
わかりました、わかりました。
(届いていますか、阿形。)
怖い顔のまま頷きましたね。
(先日、雨により湊くんがこちらへ来られなかった時、
宇美さんから湊くんへと、もう一つ、お守りが渡されたのです。)
阿形は、今度は目を丸くしてこちらを見ています。
(湊くんの友人であるケイくんのご家族は、宇美さんの知り合いであり、
この町に残るその祖父母は、宇美さんとは古くからの友人なのだそうです。)
阿形が、やっといつもの表情になってうなづきました。
(そんなケイくん一家が連休に実家へ帰ると聞いた宇美さんは、
お守りを2つ、仲の良い湊くんとケイくんにお揃いで作っていたそうです。)
阿形が…感情の読めない顔になりました。忙しい表情ですね。
(そして先ほど。
このお二人が再会して早々、お守りが渡されました。
…気の流れに敏感な貴方ならば、気づいていると思いまして…)
「そんな詳細までわかるわけなかろう!!」
ちょっ…阿形…
「あっ!?」
「わっ??」
あぁ…やってしまいましたね…
阿形は空を見上げて、ゆっくりと目を閉じました。
すみません、正直、面白いです。
(あぁぁーー……)
ンフッ…何故今さら、言葉にしなくて良いものを伝えてくるのですか…
―――
子供たちは阿形の側にある椅子へと腰掛けています。
「僕もね、ケイくんにお守りを渡した後に気づいたんだ…阿吽が見えちゃうかもって。
ケイくんの前でお守りに話しかけられないから…もう、ここに来ちゃった。」
ケイくんに会えると宇美さんに知らされてからは、すごく興奮していましたからね。
子供なら仕方ありません。
「吽形よ…何か考えていることはあるのか?」
『はい。主様はお守りが二つ用意されていることを知った上で、御加護を込めてくださった筈です。
そして、ケイくんにも私たちの声が聞こえている。
これは、ケイくんにもお力を借りるべき流れかと思います。』
ケイくんは、湊くんの首に下げられたお守りから出る私の声にうなづき、
そこから出ている私の姿も目で追っています。
湊くんと同じ御加護を込めてくださった主様。
これは許可を得られているものと解釈いたしました。
「ケイよ…我らはこの町の復興と、この社と主様の縁を深めるための活動をしておる。
強制はできぬ、じゃが力を貸してはくれぬか?
先ずは湊から、何をしてきたかを聞いてほしい。」
ずっと声を出さずに私たちのやり取りを見守っていたケイくんは、目を開いて湊くんへと顔を向けました。
湊くんは、ずっと仲の良かったケイくんが何を考えて、どんな答えを出すのかわかっている、そんな表情をしています。
「わかった!!オレも湊と一緒に手伝うよ!ぅ〜絶対面白いよね!」
「待つんじゃ、ケイよ。
湊も危険な場所へと足を踏み入れたり、人では経験せぬ目にもあっておる…
さっきも言ったが、湊の話を聞いて冷静に判断するのじゃ」
阿形、その説明は逆効果な気がいたします…
ほら、ケイくんの目が輝いてます…
「ミナトだけ、そんな楽…危険な目に合わせられない!オレもミナトと一緒にやる!」
気がつけば、曇っていた空から雲は消え、
境内から見える海は、太陽に照らされて美しく輝いていました。
――――――――
この世界の狛犬
・狛犬(阿吽)の声は、湊と景にしか聞こえていなさそう。
・蓄積した知識があっても、実践経験が少なければ失敗もする。
本作はフィクションです。
作中に描かれる神や出来事は、信仰や感じ方の一つの形を表現した創作です。
実在の宗教・信仰・人物とは関係なく、それらを否定・評価する意図はありません。




