ポイント
気合い入った結のフォローをするつもりの言葉が、自分にも効いちまった。
白犬の余裕ある目、角犬の光が宿る目…それに中てられたんだとは思うわ。
今後は直接やり合うこともたぶん無ぇんだから、同じ目的で競うんならアリ…アリだぜ。
凪と瑞穂の団欒の時間。
凪が自分で作った雑なトースト食ってんのとは違って、母親との時間を含めてゆっくりと味わってんのがわかる。
そんなこいつらの邪魔したくは無ぇんだが、今しかねぇ。
〔凪、今から瑞穂と一緒に俺を攻略してくれ〕
「んー…? は?」
ばっか、声に出したら変に思われるぞ?
〔シミュレーションだ、俺が敵になりきった行動を挙げるから、それをゲーム好きな瑞穂と凪で攻略してくれ。その動きをマクロにしようぜ!〕
「あ! おかーさん、あのさー――」
おー、早速か? いいぜいいぜ〜!
俺がもし、邪気モグラを造って邪気を集めるようなヤツだったら……始めるぞっ!
―――
湊が俺らを案内したのは海。邪気モグラを釣り上げた砂浜の隅。
突堤か…?
この町の浜辺の端を告げるように存在する、海まで伸びるコンクリートの足場。
遠くから目に映ってはいたが、コレが何かってこと含めて意識なんてしたこと無ぇな…
いざ近くに来てみると、入り口は生い茂る木々で隠れ、さらに柵で遮断されて先へ進めなくなってやがる。
〔やっぱ隠れてやがったか〕
「だなー」
湊がとりあえず対話みたいなヌルい言葉を発した途端、拒絶するように邪気でその場を覆うような壁を作られた。
お前、これが相手の先制攻撃だったら……阿吽を見る限り、いなしてたな。余計な心配だった。
こんな状況に俺が追い込まれてたら、そりゃ壁も作るわ。
埒もあかねぇんで、ポイント稼ぎも含めて仕事すっか。
〔とりあえず、お話聞かせてくださいや。凪?〕
「おー。じゃあ穴開けよー」
凪と一緒に両手を前に出して、それを胸元へ引き寄せた。
コイツと一緒に同じことを念じると、格段に効果が上がるのが面白ぇ。
積み上がった邪気の壁の一部を吸収する形で穴を開けた。
〔先ず、俺らが1ポイントゲットか?〕
「…なんかさー、悪役みたい…」
あっ、言うなよ…俺もそう思った。
お、ほら、奥から強い意思が出てきやがったし、お話でも始めましょーや……めっちゃ敵意が溢れてんなぁ。
ゆらゆらと形の定まらねぇ濃い闇が見える。
俺もアイツから体貰わなきゃ、あんなだったんか…?
{…おヌシらは、開けてはならぬ箱を開けたのじゃ…後悔せよ!}
うわぷっ!?
俺の開けた邪気の壁の穴から、霧状の邪気を吹き出してきやがった…
今回は俺も声が聞こえた…が、開けてはならぬ箱? “箱”ってのはなんだ?
『すまぬ、対話できるのであれば時間をくれぬか? 我らは穏便に済ませるつもりでおるんじゃ』
阿吽は心構えが違ぇな。身じろぎすらしねぇ。
ま、当然だが俺や凪には効果無ぇし、湊と景はお守りの加護で邪気の類が効かねぇ。
{ふん、黙らぬかっ! 仲間同士で争い合い、負の感情を撒き散らすが良い! さぁ、妾を喜ばせよ!!}
吹き出した邪気にそんな効果があるんだとしたら、コイツが人間の悪行を誘発させてたのが決定しちまったな。
コレが判明したのは誰のポイントだ? 俺か? 俺たちのだな?
おっと待った、邪気は結に効果あるかも知れねぇ。こいつが暴れたらどうやって止めればいいんだ?
顔を見てみたが、鼻につく自慢気な顔してやがる。なるほど、…どっちだよ?
なんか徐に胸元を曝け出したんだが、邪気にやられておかしくなったからか? 分かんねぇぇ!
「こんなこともあろうかとっ! 邪気の流れを散らす管を服の下に着込んでたのさっ!!」
「あーそれ、じいちゃんとこで見た漫画にあったね」
「ケイっ! そういうこと言うなっ!」
それ服の上からでも良くねぇか? すげぇけど。
…早く前を仕舞え。
{ふ、ふんっ! 既に仕込み終えてるモノもあるっ! さぁ、宴の催しでも始め――}
『あ、恥ずかしながら私に巣食っていたものは除去させて頂きました』
らしくねぇな角犬…あー、コイツだけフィルタ無しみたいな状態か。そりゃあ仕方ねぇな。
{お、ほ、他にもおるかも知れぬぞ! 疑心暗鬼に苛まれながら負の感情を撒き散らせぃ!}
阿形が自分を見た湊に首を振って返す様子から、その辺は大丈夫っぽいな。
「なんか、もう居ないみた――」
{うぬぁーっ! なんなんじゃおヌシらはっ! 妾に何の用じゃ! 何しに来おったかー!}
湊の話、せめて最後まで聞いてやれよ…
〔…だから、話し聞かせてくれって言っただろ? 穏便によぉ〕
あの揺らいでた闇が、徐々に人に寄せた輪郭を帯びてんのが分かる。…会話を始めてから、俺らに引っ張られてんのか?
{はぁ!? おヌシは家の壁に穴開けて侵入を試みた者と、穏便に話ができるのかっ!?}
……できねぇな。
いや、なんだよ? お前らも全員そんな目で俺見るのは違くねぇか? 誰も咎めなかったろうがよ? …褒めてもなかったな。引いてた気もする…駄目か。
「あっはっは! ねぇ、減点?」
結、うるせぇよ! いや、これ減るのかよ!?




