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ダンジョンで嬲り殺しにされた少年は、異形の力【魔喰い】で英雄集団に復讐する  作者: こねこねこ
第3章 一人目――聖騎士セルヴァンナ・アウレ(後編)
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第2話 ダンジョン攻略(前編)

  ===深穴からの脱出===


 深穴の底で、レオンは遥か上にある出口を見上げた。

 深穴にあったものは、全て“深淵喰い”が吸収していた。

 残されたのは、静寂と無機質な景色のみ。


 ――ここにいても、得られるものはない。


 すぐにでも外に出たかった。

 だが、方法が思いつかない。

 岩肌は湿っており、触れればぬめりがまとわりつく。

 この高さを道具もなしに登るのは不可能だ。

 レオンは、ひとまず疑似人格に相談した。


「……あの穴から脱出したいんだけど」

『壁面は滑りやすく、登ることは困難です。ですが、問題ありません。“キングスパイダー”のスキル【粘着】を使ってみましょう』


 言われた通り、スキル【粘着】を発動した。

 すると、指先に粘り気のある液体が分泌された。

 岩肌に触れてみると、その手が吸い付くように張り付いた。

 体重をかけてみても、しっかりと支えられる。


「これなら、いけそうだ」


 レオンは慎重に壁を登っていった。


「これ、落ちたら死ぬよね」

『いえ、まず死にません』

「うわっ!?」


 驚きのあまり、岩肌から手を離しそうになった。

 全身に嫌な汗が噴き出る。


『失礼しました。ですが、現状の貴方はレベルが上がり、身体能力が上がっています。この穴の出口から落ちたとしても、軽傷で済むでしょう。試してみますか?』

「絶対に嫌だ」


 レオンは慎重な姿勢を崩さないまま、登り続けた。

 それでも、深穴の淵にたどり着くまでに十分もかからなかった。


 外に出ると、野営の跡が残っていた。

 酒が入っていた瓶なども大量に落ちている。

 救世烈団がここで宴会でもしたのだろう。


「さて、どうしようか――」


 まず、地上のことに思いをはせる。

 心配なのは、育ての親であるザイラスのことだ。

 だが、彼がすぐに危険にさらされる可能性は低い。

 救世烈団は、遺族を弄ぶことを楽しんでいる。

 最低の行いではあるが――だからこそ、命までは奪わない。


 それよりも――。

 復讐のための力が必要だった。

 救世烈団は桁違いの強さを持つ。

 レベルが上がったとはいえ、まだ遠く及ばない。


「……このダンジョンで、鍛えるしかないな」

『レベルアップをお望みでしたら、スキル【魔喰い】を使ってみて下さい』

「まぐい?」

『深淵喰い(アビス・イーター)が持っていたスキルです。吸収したものの経験値を余すことなく得ることが出来ます。貴方のレベルが急激に上がっているのは、深淵喰いが蓄えていた経験値を継承したからです』


 つまり、これまでにないほどに効率の良い経験値稼ぎを出来るということだ。


「まずは、武器が要る」

『それについても、心配ご無用です。深穴に落とされた者たちの装備を深淵喰いが吸収しています。スキル【解放】で、取り出すことが出来ますよ』


 レオンはスキル【解放】を使用した。

 頭の中に、膨大な装備リストが現れる。

 その中から、一振りの剣を選択した。

 すると、掌から光が溢れ、剣が形を成した。

「……身体から剣が出てきた」

『それが【解放】スキルの使い方です。これで武器は手に入りました。それでは、張り切ってレベル上げをしていきましょう』

 レオンは、剣を握り締めた。

 こうして彼は、復讐への道を歩き出した。


  ===レベルアップ===


 レオンが最初に倒した魔物は、シャドウ・ウルフだった。

 気配を絶ち、陰に溶け、近付いたことに気づかせずに獲物を仕留める狼種。

 幽樹迷宮の魔物の中でも上位に分類されており“最も戦いにくい魔物”とされている。


 だが、今のレオンには相手にならなかった。

 スキル【隠密】で気配を消し、逆に背後に回り込む。

 そして、レベル上昇で得た力をそのまま叩き込む。

 シャドウ・ウルフは、抵抗する間もなく倒れた。


 ――ぼくはもう、弱者ではなくなった。


 この幽樹迷宮においても、レオンは“強者”となった。

 レオンは次々と魔物を撃破していった。

 ラヴァ・ゴーレム。

 フロスト・ベヒモス。

 カオス・バジリスク。

 ブラッド・ケルベロス。

 フォレスト・イーター。

 これまでは手も足も出なかった――戦う気にすらならなかった魔物を、撃破していった。


 レベルアップの手段は魔物狩りだけではなかった。

 救世烈団がこれまで狩ってきた魔物たち――。

 その遺体が、色々な場所に転がっていた。

 先日倒した巨人のものもある。


 レオンはそれらに手をかざし、【魔喰い】を発動させる。

 すると、魔物たちに残存していた経験値がレオンの中に流れ込んできた。

 膨大な量の経験値。

 並みの冒険者が一生かけても得られないほどの成長が、わずかな時間で積み重なっていく。


 レオンは拳を握り締めた。


 ――これなら、追いつける。

 ――必ず追い越す!


 レオンは、その成長に希望を感じていた。


  ===ダンジョンの最奥へ===


 三日後、レオンのレベルは256に達していた。

 常識では考えられない速度だ。

 だが、それでも救世烈団には遠く及ばない。

 彼らのレベル平均値は900。

 今のレオンでは、陰すら踏めないだろう。

 だが、希望はある。


「このままいけば、いつか追いつける」


 そう呟いたとたん、疑似人格が告げる。


『そんな悠長なことを言っていていいのですか?』

「……何か問題でもあるの?」

『二日後には、ノワールがここに来る予定です』

「あ……」


 このダンジョン≪幽樹迷宮≫は、救世烈団の専用領域だ。彼らの合同潜入だけでなく、各メンバーが使用することがある。

 二日後は、ノワールが“訓練”の名目で使用する予定になっていた。実際に何をするのかは分からないが。

 彼は超広範囲の探索スキルを持っている。

 隠れてやり過ごすことは不可能だ。


「このダンジョンを出ないと」

『出入り口は完全にふさがれてしまっています』

「そうだった……」


 危険度が高すぎるため、迷宮の出入り口は常に施錠され、二十四時間体制で監視されている。

 気づかれずに脱出することは不可能だ。


『そこで、提案があります。この際、このダンジョンを攻略してみませんか?』

「攻略……出来るの?」

『分かりません。ですが、このままでは貴方の生存が確実に救世烈団の方々に露見してしまいます。他に手はありません』


 レオンは、迷宮の奥を見つめた。

 そこは、救世烈団ですら進めなかった領域だ。


『救世烈団が進めなかった理由は、深部に強力な毒が漂っているからです。ですが、貴方は【毒無効】スキルがある。これは、現時点で貴方が有する、唯一の優位です』

「……分かった、行こう」


 不安は消えない。

 それでも、進むしかない。

 そうしなければ、全てが終わる。

 レオンは、最奥に向かって足を踏み出した。

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