表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで嬲り殺しにされた少年は、異形の力【魔喰い】で英雄集団に復讐する  作者: こねこねこ
第3章 一人目――聖騎士セルヴァンナ・アウレ(後編)
17/25

第1話 レオン

  ===覚醒===


 深穴に落とされてから、二日後――。

 レオンは、薄暗い空間の中で意識を取り戻した。

 冷えた空気と湿った匂い。

 どこからともなく、魔物の鳴き声が聞こえてくる。


「何だ、これ……」


 目を開けた瞬間、頭の中に“自分のものではない記憶”が流れ込んできた。

 知らない景色。

 知らない技。

 知らない思考。

 知らない人生。

 それらが渦を巻き、レオンの頭の中をぐちゃぐちゃにかき乱した。


 それが収まるまで、数時間の時間を要した。

 そして――救世烈団の裏切りを思い出す。

 同時に、胸の奥が焼けるように熱くなった。


 尊敬していたのに。

 信じていたのに。

 その全てが嘘だった。

 信じる彼を見て、あざ笑っていたのだ。


 ――許せない!


 その感情が、身体を熱くした。

 先ほどまでピクリとも動かなかった身体に、ようやく熱が入り始める。

 レオンは体を起こし――異変に気づいた。


 痛みがない。

 身体が軽い。


 そして――。

 胸元には見慣れない膨らみがあった。

 股間にあるべきものがなくなっていた。

 手足はすらりと伸びている。

 長い銀髪が頬に触れる。

 耳に触れると、先の部分が微かにとがっている。


 ――これは、女性エルフの身体だ。


 鏡がないため、どのような容姿なのかは分からない。

 だけど、別人の物だということは分かった。


「……ステータス」


 そう呟くと、頭の中にレオンに関する情報が現れた。


【レベル】

 75

【スキル】

 魔喰い、疑似人格

 剣豪、瞬歩、急所看破

 身体強化、硬化、危険感知、最適化、痛覚軽減

 猛毒化、毒無効

 吸収、分裂、隠密、解放

 気配察知、魔力感知、生命探知、地形把握

 捕食本能(殺せるタイミングが分かる)


 まるで別人のステータスだった。

 まず、レベルが大幅に上がっている。

 以前は“9”だったのに、それが“75”になっている。

 人族には、到底到達できない領域だ。


 また、沢山のスキルが習得済となっていた。

 中には、使い方の見当もつかないようなものもある。


 ――猛毒化とか、分裂とか、使ったらどうなるんだろう。


 自分の身体が有毒になったり、二つに分裂したりするのを想像した。

 あまり気分のいいものではなかった。


 ――さて、どうすればいいのやら。


 途方に暮れていると、頭の中に声が響いた。


  ===疑似人格との対話===


『始めまして。私はスキル【疑似人格】です』


 その声は、女性のものだった。

 これまで会った誰の声にも似ていない。


「え、何?」

『ですから、疑似人格です。貴方のスキルの一つです』

「スキルって……。何か役に立つの?」

『それは貴方次第です。私を使って、頭の中を整理するのもよし、作り変えて身体を操作させるのもよし。貴方の創意工夫によって、様々なことに使うことが出来ます。特に、今の貴方は頭の整理をしたほうがいいように見受けられますが』


 その忠告に、レオンは納得した。

 彼の頭の中には、“自分のものではない記憶”が多数存在した。

 その記憶のせいで、自分が何者なのかを見失いそうになっていた。


『早急に行う必要があります。私との対話を経て、まずは自らの意識を確立してください』

「ああ、うん」


 これは、ありがたい提言だった。

 これがなければ、混濁した記憶の中、自らの記憶を疑いながら生きることになっただろう。


 レオンは【疑似人格】と対話をしながら、自らの記憶と他者のものを分別していった。

 そして、他者のものについては、疑似人格に押し付けた。


  ===古代エルフの身体===


 記憶の整理が一区切りつくと、現状の把握に努めた。

 ここでも【疑似人格】が活躍することになる。


「この姿は……何なんだ?」

『古代エルフの女性です、何故その姿になったか――説明が必要ですね』

「お願いできる?」

『勿論です。まず、貴方を襲ったスライムは『深淵喰い(アビス・イーター)』と呼ばれるもの――かつては深穴を守る存在だった古代の“人工生物”です』

「人工生物……」


 そんなものが存在することに、レオンは驚いた。

 今でも、魔物を掛け合わせて、それぞれの特性を併せ持つ魔物を作り出す技術は存在する。

 だが、ゼロから生物を生み出すことは出来ない。


『このスライムは、ありとあらゆるものを消化・吸収することが出来ます。この深穴は、スライムが岩や砂を吸収して作り上げたものです』


 レオンは、深穴を見回す。

 そこには広大な空間があった。

 このすべてを、一匹の魔物が作り上げたらしい。


『しばらくの間、スライムは大人しくしていました。危険なダンジョンの最深部に近い位置ですから、誰も近づきません。魔物も本能的に避けます。しばらくの間、ここでは何も起きませんでした。ですが、ある日を境に“活性化”することになります。その切欠は、潤沢な“餌”を得ることが出来るようになったことです』


 餌。

 その正体には、心当たりがあった。


「救世烈団か」

『その通りです。彼らは、深穴に様々なものを捨てていくようになりました。その多くは生ごみでしたが、スライムにとっては御馳走でした。いつしか、そこに死体も投げ込まれるようになりました。スライムはそれを“余すことなく”吸収しました。そして、その者が持つ魔法やスキルまで手に入れたのです。もっとも、それを活かすための知能は手に入りませんでしたが』


 知能があったら、既に深穴から脱出していただろう。

 そして、深刻な脅威となっていたはずだ。


『そして先日、そこに貴方が投げ込まれました。スライムはいつも通りその肉体を取り込もうとしました。ですが、そこで異変が起きたのです。スライムの中で、貴方は原形をとどめないほどに溶けていました。どろどろです。ですが、その最中、貴方の中にある“何か”が、スライムの特性を“強奪”したのです。スライムは、逆に、貴方に取り込まれました。

「つまり、僕はスライムになったということ?」

『いいえ、違います。あくまでも、ベースは人族です。スライムの特性を使えるようになっただけです』


 レオンは一安心した。

 どうやら、種族の変更まではしていないらしい。


「それで、この姿は?」

『貴方の身体は溶けていました。そのほとんどが溶解していました。ですから、それを再構築するにあたり、スライムの中にある最も強い個体の肉体が再現されることになったのです』


 レオンは改めて身体を見る。

 手足は細く、強靭な肉体とは思えなかった。

 だが、そういうものらしい。


「元に戻ることは出来る?」

『スキル【擬態】を使うことで、姿を変化させることが出来ます。それを使い、元の姿に戻ることは可能であるはずです』

「それはよかった」


 レオンは、すぐに元の姿に戻ろうかと考えた。

 だが、それは思いとどまった。

 この深穴から脱出するためには、強い肉体が必要だ。

 少なくとも、それまでは、このままでいることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ