第6話 リュミエル
===聖務部長リュミエル===
セルヴァンナは、リュミエルを聖務部長に任命した。
それは異例中の異例の抜擢だった。
多くの団員から不満の声が出たが、セルヴァンナはそれを力で押さえつけた。
「アシェリアも同意していたことだ。なによりも、私が是として認めた。文句のある者は、剣で示すがいい」
その言葉に逆らえる者はいなかった。
こうして、リュミエルは正式に聖務部長という役職についた。
個室を与えられ、白百合騎士団の運営を担うこととなった。
彼女は高い事務処理能力を示した。
これまで積み重ねられてきた無数のミスが発見・修正された。
また、組織内における指揮系統の見直しも行われ、より効率的な運営が行われるようになった。
リュミエルは、名実ともに聖務部長にふさわしい人材として認められた。
セルヴァンナは、リュミエルの成果を感心しながら見聞きしていた。
アシェリアは戦闘力こそ高かったものの、事務処理能力は低かった。
というより、皆無と言ってよかった。
全て部下に任せきりであり、自身は戦っていただけ。
それが交代したとたん、白百合騎士団は様々な面で改善された。
また、リュミエルは類まれな戦闘能力を有していた。
それを使って、セルヴァンナの訓練の相手も務めるようになった。
これまで【神意不墜】を持つセルヴァンナの相手になる者はいなかった。
アシェリアでさえ、片手で軽くあしらわれていた。
リュミエルも、最初は全く敵わなかった。
手も足も出ず、遊ばれていた。
だが、少しずつセルヴァンナの動きについていけるようになっていった。
いずれ、リュミエルの剣が届くときがくるかもしれない。
白百合騎士団の中には、そう考える者も出てきた。
===正体不明===
さて――こうなると、当然の疑問が出てくる。
それは、リュミエルというエルフは、一体何者なのかということだ。
セルヴァンナは、監査部にリュミエルの身元調査を行わせていた。
アシェリアを殺せるほどの実力者が、これまで一体どこで何をしていたというのか。
どこかの息がかかった者なのではないか。
それを調べたのだ。
その結果、リュミエルの素性は分からなかった。
分かったのは、少し前まで近隣の冒険者ギルドに所属していたということくらいだ。
それも短期間だけ。
これまで、そんなことはなかった。
監査部は優秀な者ばかりであり、今回の調査は特に力を入れていた。
それで“分からない”というのは、明らかな異常事態だ。
だが、セルヴァンナはあまり気にしなかった。
どこかの組織から送り込まれたのでなければ、それでいい。
むしろ、都合がいいくらいだ。
前歴が全くないということは“リュミエルがいなくなっても誰も探さない”ということだ。
リュミエルをどうしようが、誰も咎めない。
拷問にかけた上で殺害したとしても、何の問題にもならない。
セルヴァンナはこの調査結果に満足した。
この時、調査をさらに深く続けていれば――例えば、救世烈団に所属しているノワールに調査を依頼していれば、結末は違ったものになっただろう。
だが、セルヴァンナはそれをしなかった。
現時点で、最も都合のいい結論が手に入っていたのだから。
===執着===
次第に、彼女の思考は、リュミエルを通して得られる快感にばかり向けられるようになっていった。
最上の悦びを得るためには、下準備が重要――十分な“熟成期間”が必要となるのだ。
セルヴァンナは出来る限りリュミエルに親切にした。
リュミエルはそれに素直に従った。
次第に、二人で過ごす時間が増えていった。
仕事に影響が出ることはなかったが、白百合騎士団の中では、二人は特別な仲になっているという噂が飛び交った。
そして、それは事実だった。
セルヴァンナはリュミエルに夢中になっていた。
彼女のことを考えると、いてもたってもいられなくなった。
――ああ、早く熟成してくれ。
セルヴァンナはそう思わずにはいられなかった。
===誘い===
リュミエルと出会ってから一か月が経過した。
その間、セルヴァンナは人間の奴隷を地下で甚振ることを止めていた。
そんなことをするよりも、頭の中でリュミエルを甚振るのを想像していた方が興奮できるのだ。
それが心配の種でもあった。
リュミエルを味わいつくした後、何が残るというのだろうか。
彼女こそは、生涯で最高の存在だ。
その確信があった。
だとすると――彼女の全てを“摂取”してしまえば、その後に残されているのはただの虚無なのではないか。
だが、欲望を抑えられなかった。
ここで止まるという選択肢は、彼女にはなかった。
日に日にリュミエルへの想いはつのり、仕事が手につかなくなってきた。
熟成期間も十分とった。
だから――。
セルヴァンナは、リュミエルに手を出すことにした。
まずは、リュミエルを夕食に誘った。
他の団員なら、喜色満面で「是非に」と答えただろう。
その後に何が行われるかも、当然把握したうえで。
だが、リュミエルは躊躇う様子を見せた。
彼女もセルヴァンナの意図は分かっているはずだ。
「予定がないなら、二人で話がしたいんだ」
「そうですか……。ですが、少し考えさせて――」
その答えに、セルヴァンナは我を失いそうになった。
身体から魔力が溢れ出る。
だが、かろうじて抑えることが出来た。
――こうなってしまえば、地下での発散が必要だ。
セルヴァンナの自制心は、限界に近かった。
ここ一か月ほど放置していたが、奴隷を数人潰すことにしよう。
そう考えた時だった。
リュミエルが口を開く。
「あの、食事だけなのでしょうか?」
「え?」
「そのほかに、何かあったり……。いえ、忘れてください」
リュミエルの恥じらう様子を始めて見た。
あの神々しく美しいエルフが、顔を朱に染めていた。
視線は横にそらされている。
その姿は、セルヴァンナの理性を崩壊させた。
我慢が出来なかった。
最早、人族のメイドを代用品にすることも出来ない。
ここで断られてしまえば、壊れてしまうような気がした。
「全ては君次第だ」
「それでしたら、伺わせていただきます」
リュミエルは、恥ずかしげに言った。
セルヴァンナは、久しぶりに神に感謝した。
===快楽===
食事会はつつがなく終わった。
それからしばらくの間、二人は歓談をした。
そこから先は、セルヴァンナの独壇場だった。
彼女はこれまで数多の女性エルフを口説き、手籠めにして来た。
それも圧倒的なカリスマ性のなせる業だ。
リュミエルも、簡単に口説き落とすことが出来た。
彼女のような特別な存在を攻略するのは骨が折れると思っていた。
だが、あっさりとしたものだった。
あまりの簡単さに拍子抜けしてしまったくらいだ。
もう少し、手ごたえがあってもよかった。
――いや、それは傲慢というものだろう。
セルヴァンナは、神に感謝した。
そして、リュミエルをベッドまで連れていき、服を脱がせた。
その身体は信じられないほどに美しかった。
露になった乳房や陰部に、性的な興奮を覚える。
だが、それ以上に神性を感じていた。
まるで、神が作り上げたかのような完璧な肉体。
セルヴァンナは、絹のように美しい肌に舌を這わせた。
これまでに感じたことがないほどに甘美な味がした。
それを真似るように、リュミエルもセルヴァンナの身体に触れる。
物覚えの良い彼女は、すぐにコツを掴んだ。
そして、誠心誠意セルヴァンナに奉仕をした。
セルヴァンナは、これまで感じたことのない快楽の世界へと誘われていた。
===人狩り===
行為を終え、セルヴァンナはリュミエルと同じベッドに入っていた。
二人とも服は着ておらず、互いに体を寄せている。
そんな中、セルヴァンナが尋ねる。
「近々、“人狩り”が開催される。聖務部が担当だが、資料に目は通してあるな?」
「はい、勿論です」
「準備はどうなっている? あれは団員たちの息抜きとしてとても重要な意味を持つ。君のことだから、問題なく進めているのだろうが」
「既に手配は済んでいます。必ずや、セルヴァンナ様に楽しんでいただけるよう頑張ります」
「ああ、頼むぞ」
そう告げ、セルヴァンナはキスをした。




