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この世界は私が作った乙女ゲームでした ~処刑される瞬間、前世の記憶を取り戻してセーフ~  作者: 藍沢 理


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第12話 王太子の後悔

 王都二日目の朝。三人そろって、私の部屋で朝食を取っていると、侍従がやってきた。


「アルフレッド殿下がお呼びです」

「私をですか?」

「はい。至急とのことです」


 嫌な予感がする。けれど断るわけにもいかない。


「分かりました」


 私と共にレオンハルトが立ち上がった。


「俺も行く」

「申し訳ございませんが、殿下はステーシア様お一人でとおっしゃっています」

「……」


 レオンハルトの眉間に皺が寄る。


「大丈夫。すぐ戻ります」


 心配そうな顔を残して、侍従について行く。


 通されたのは、王太子の私室に続く小さな応接間。昔、婚約者だった頃によく通った場所だ。


(懐かしいけど、もうなーんも感じんな)


 アルフレッドが窓際に立っていた。振り返ると、その顔は疲れているように見える。


「来てくれたか」

「お呼びですので」


 冷たい口調になってしまう。アルフレッドが苦笑した。


「そう構えないでくれ。今日は、個人的な話がしたくて」

「個人的な話?」

「ああ」


 アルフレッドが近づいてくる。反射的に一歩下がった。


「ステーシア、俺は……後悔している」

「何をです?」

「君を追放したことだ」


 予想していた言葉だったが、実際に聞くと腹が立った。


「今更ですか」

「分かってる。でも、言わずにはいられない」


 アルフレッドが私の手を取ろうとする。さっと避けた。


「触らないでください」

「ステーシア……」

「私はもう、あなたの婚約者ではありません」

「やり直せないか?」

「は?」


 思わず声が大きくなった。


「やり直すって、何をです? 聖女様がいるでしょう」

「ミーナは……確かに大切だ。でも」

「でも?」

「君への想いも、消えていなかった」


(何を都合のいいこと言ってんねん)


「つまり、二股ですか?」

「違う! そうじゃなくて」


 アルフレッドが頭を抱える。


「最近、ミーナが変わってしまった。以前の純粋さがなくなって、時々恐ろしいことを言う」

「へぇ……」

「君なら分かってくれると思って」

「分かりません」


 きっぱりと言い切る。


「あなたは私を捨てて、聖女様を選んだ。それが全てです」

「しかし――」

「それに」


 深呼吸をする。


「私にはもう、愛する人がいます」


 アルフレッドの顔が青ざめた。


「まさか、あの暗黒騎士か」

「ええ」

「正気か!? あんな得体の知れない男を」

「得体が知れないのは、むしろ聖女様の方では?」


 アルフレッドが息を呑む。


「どういう意味だ」

「ご自分で考えてください」


 踵を返そうとした時、アルフレッドが腕を掴んだ。


「待て! まだ話は――」

「離してください」

「ステーシア、俺は本気だ」

「私も本気です。離して」


 もみ合いになりかけた時、扉が勢いよく開いた。


「……何をしている」


 レオンハルトが立っていた。その目は、冷たい怒りに燃えている。


「レオンハルト!」


 アルフレッドが手を離す。


「これは王族のプライベートな場所だ。無断で入るな」

「彼女が困っているようだったので」


 レオンハルトが私の元へ来る。その大きな背中に、安心感を覚える。


「もう十分でしょう、殿下」

「……」


 アルフレッドの拳が握られる。


「暗黒騎士、君は何者だ」

「さあ、何者でしょうな」

「ステーシアを誑かして、何が目的だ」

「誑かす?」


 レオンハルトが鼻で笑う。


「むしろ、誑かされたのは俺の方だ」

「何?」


 私も驚いて振り返る。レオンハルトが優しく微笑んでいた。


「彼女に出会って、俺の世界は変わった。それだけだ」


 顔に火がついた気がした。


(反則や……こんなこと言われたら)


「ステーシア」


 アルフレッドがもう一度呼ぶ。


「本当に、後悔しないのか」

「ええ。後悔なんてしません」

「俺を捨てて、そんな男を選ぶのか」

「捨てたのはあなたの方です」


 最後の一撃を加える。


「それに、レオンハルトはあなたより、ずっと素敵な人です」


 アルフレッドが膝から崩れ落ちそうになる。


 でも、もう心は痛まない。


「失礼します」


 レオンハルトと一緒に部屋を出る。


 廊下を歩きながら、隣を見上げる。


「ありがとう」

「礼はいらない」

「でも、さっきの言葉……」

「本心だ」


 さらりと言われて、顔が熱くなる。


「私も、本心です」

「……そうか」


 レオンハルトの耳が赤い。


(かわゆいい)


 部屋に戻ると、エマとユリウスが深刻な顔で待っていた。


「ステーシア様、大変です!」

「どうしたの?」

「城下で原因不明の病が流行り始めたって」

「病?」


 ユリウスが説明する。


「魔力を持つ者から順に倒れていく奇病です。すでに数十人が」


(これって、もしかして……)


 嫌な予感がする。


 ゲームにはなかった展開。


 何かが、確実に狂い始めている。


 そして、その中心にいるのは――


「聖女様は何と?」

「それが……」


 エマが青い顔で言った。


「『神罰だ』と」


 背筋が凍った。


 いよいよ、本性を現し始めたらしい。


 王都に戻って、まだ二日目。


 なのに、すでに事態は急速に悪化している。


(これは、ゲームの知識だけじゃ対処できへんかも)


 でも、諦めるわけにはいかない。


 仲間たちと、愛する人を守るために。


 これからが本番やで。


「詳しく聞かせて」


 私とレオンハルトは、エマたちのテーブルについた。


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