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恋する騎士  作者: 桜ありま
第四章 動き出し、動き出せない新人騎士
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37/44

22ーI

 



 リーヴィ達に振られた任務は基本「決められた道をただ歩く」という任務だった。


 ただ、歩くだけと言っても。

 "通り魔に狙ってもらえるように"という目的があるのならば難しい。


 犯人の狙う被害者の共通の特徴と言えば、年代は十代から三十代まで。

 比較的若い女性が多い。

 そして髪の色も質も問わず。

 犯行は髪の毛を引っ張り、切断するという手口。

 髪の毛を切るという行為がやりやすいからだろうか、長い髪をまとめて結んでいる髪型の女性ばかりが狙われていた。


 髪の毛を切り取り収集して何の目的があるのだろうか。

 つけ毛にして売るとしても、髪質や色がバラバラではとても非効率で。犯人の狙いは怨恨かといえば、被害者同士全員の接点がほとんどない状態だった。


 情報が少ない。

 しかし被害者は、「髪が長く」「結ぶかまとめて編んでいる」

 この二点が共通すると分かっている。

 なのでとりあえずおとり役としては「髪の長い女性」に変装することになったのだ。


 リーヴィの栗の実色の髪。

 クライブの黒髪はどちらが犯人が狙いをつけるのか分らない。


 それとも……髪の毛が切れるならば誰でもいい、愉快犯なのかもしれない。


 被害者達のように髪の毛は長くないリーヴィでも、髪の毛を切られるというショックは簡単に想像できる。子供の頃は母親譲りの髪の毛を伸ばして、母親から梳いてもらうのが大好きだった。自分の不注意から髪の毛を短く切る事になった時は、大泣きした事もある。その時の気持ちを思い出すと、心がギュッとなる。


 ……どんな理由にしたって、許せない。


 どれほど怖くて、悲しかったかと思うと、ラジェール紅団長の怒りももっともな事だった。

 リーヴィにできることと言えば、このおとり捜査をやり切ることだ。


 犯人が出没しそうだと目星をつけている6つの地域に、それぞれのコンビが定期的に足を運んでいても不自然に見えないような設定をつけられて、その設定にのっとった行動をとることになった。

 リーヴィとクライブが振り当てられた「設定」は、友人同士で女性に大人気の花屋からお菓子屋まで通っていると言うものだ。

 その範囲には人通りの少ない道も数か所ある、そこが狙い目だった。


 担当場所は、まだ狙われた人間がいない範囲。


 だからこそ逆に犯行を重ねた犯人グループが、前の犯行場所は警戒して避けて出没する可能性が高いともいえた。おとり捜査がされているルート以外は、騎士の見張りを強化してさりげなく追い込み漁のように出没するように仕向ける。

 おとり役のリーヴィ達新人だけではなく、計画に参加している紅の騎士たちも、ルートを見渡せる場所から監視していた。その場所も、リーヴィ達は覚えるように叩き込まれる。

 犯人が現れたらその距離から駆け付けるまで、足止めをするのがリーヴィ達の役目だった。

 勿論、おとり役である自分たちが狙われず、一般の人間が襲われた現場に居合わせたのなら、救助と犯人の確保も視野に入れている。



 さまざまな説明を受けた後は、更に重ねて機密保持の誓いの書類にサインする事になった。任務の内容を説明された後のサインは、新人騎士たちにとって責任とこれからの仕事の重大さに更に手に重みを感じさせる儀式だ。


 次は貸与される衣装あわせの為に、十二人のメンバー達は別室に移動することになった。

 案内された広々とした部屋は、色々な間仕切りに仕切られ、膨大な量の様々なサイズと色とりどりの衣装がかかった洋服掛けが部屋が圧迫していた。部屋の中心に待ち受けているのは――美しく着飾った美女だった。

 その女性が入ってきた騎士たちを一目見るなり、順番に指示を出していく。


「瞳の色に合わせて、緑系ねぇ。5の六番と7の九番から仕立て直してちょうだいー」


 独特な音程の口調。

 女性が言っている番号は、洋服掛けのものだったらしい。

 助手と思われる女性たちが指示に従ってメモを取りながら、すごい速さで洋服掛けから数着のドレスを引っ張り出してくると、新人騎士たちに渡し始めた。

 どうやら美しい女性は、一目で騎士たちの体のサイズと、似合うドレスを言い当てていたようだ。渡された男性はその場で、女性は少し区切られた場所でドレスのフィッティングが始まる。最後の列に並んでいたリーヴィとクライブの番になるのに、そんなに待ちそうになさそうな早さだ。


 リーヴィは女性の指示する手の動きが、爪の先に至るまで、女性のお手本の様な優雅な動作なのに見惚れる。



 ーーどこかの貴族のご令嬢なのかな?



 そう考えるリーヴィの予想は、ことごとくくつがえされることになる。





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