12-Ⅰ
ヨネスと別れてからリーヴィが向かった先は。
怪我をした騎士たちにとっての救いの場所である緑師室だった。
場所柄、薬草独特の匂いが充満している室内は、居ることさえも苦手としている人間が多い。しかし、リーヴィの母親は村で唯一の緑師で、この匂いは普段の生活の中で当たり前のように、家中に漂っていたので、リーヴィにとってはむしろ落ち着く匂いだった。
待ちながら、実家の事を思い出して懐かしい思いに囚われてしまう。
リーヴィには緑師の素質は全くなかったが、その調合は母親が父親やリーヴィが怪我をする度に、呆れ心配しながら作ってくれたのでよく覚えていた。
それほど幼い頃のリーヴィはお転婆だった。
穏やかな父親はそんなリーヴィを、ハラハラしながらも優しく見守っていてくれたけれど。
母親は「怪我だけはしてもいいが、死ぬな。死んでは治してやれない」と緑師らしく何度も言い聞かせていた。
今はそんなことはないと言い張りたいけれど、騎士になっている時点で、残念ながらその頃と根本的には変わっていない。騎士団の仕事でも、体を動かす方がリーヴィには性に合っている。
村で「良く効く」と評判にもなっているその調合を頼んで、薬草を煎じてもらう。その配合は王都の緑師には珍しかったらしく、詳しく聞きたいと引き止められた。ヨネス団長との約束の時間に間に合うかと内心ハラハラしていたのだが、緑師室も急患が運び込まれたりと慌ただしく、リーヴィはあっさりと解放される。
作ってもらった薬を手に、リーヴィはサルキオスの部屋の扉の前で止まった。
ノックしようかどうしようかと悩んで。
結局勇気が出なくて、扉の前に薬を置いて一礼しただけにとどめてしまう。
使ってくれると嬉しいけど、それよりも使う必要がないんだったらいいな……。
そうして、ヨネスの執務室に戻ると、予告通り半時で書類を仕上げていたので、それを持って急いで慣れ親しんだ緑の騎士団へとリーヴィは戻った。




