第10章 その9 それぞれの朝
ーーー岩山からEXPを見上げるドラゴノイド達。
リヨが機体を見上げて、言う。
「すげーー。もうあんなに遠くへ行っちゃったよ。面白い奴らだったねーー。また会いたいな」
バムも同じく北の空を見上げて答える。
「あぁ、アイツらみたいな人間が昔に来ていたら言い伝えも随分変わっていただろうな」
リヨが思い出した様に声を出した。
「あ、アイツらここから北へ600kmくらいの所にキャンプを構えてて、そこを拠点にして探索に来てたんだって。」
昨夜ルーシーと色々話をしたリヨは、事の顛末をある程度聞いていた。
バム「そうなのか?ほぼ境界線付近じゃないか。ただ確かに地上を進んだらここまで到達するのは難しいな。」
リヨは遠くを優しく見つめて言う。
「そうね。人間にはキツいよね……」
ーーーその頃EXP機内では。
暫く後ろを振り返り、南のそらを見ていたルーシーが思い出した様に、ポケットから何か取り出した。
「うーーん、やっぱり綺麗だなーこれ。良いもの貰っちゃったーー」
席の近い、ヴィクターが最初にその行動に気付く。
「!!!?ルーシー!?それは、なんなんだ!?」
あっけらかんと、ルーシーは答えた。
「え?リヨに貰った石だよ?綺麗でしょー」
後ろが何やらうるさいので、ヴィンスが振り返った。
「なっ……ルーシー!そのバカでかいのダイヤモンドじゃないのか!?」
ルーシー「んぇ?そうなの?わかんないけどリヨから貰ったの。」
エドワードが、興味深げに言った。
「ルーシー。ちょっと見せてくれないか?」
暫く観察して、エドワードが言う。
「俺も専門家じゃないんで、断定は出来ないがな十中八九ダイヤモンドだと思う。オークションに出せば数十万ドルにはなるだろう」
ルーシー「へーー。そうなんだーー凄いねそれは」
ルーシーのその時の月収は、およそ20ドル。1910年当時の女性としては悪い方ではないが、数百年分の収入に相当する。
ヴィンスが笑いながら言った。「あー、こりゃダメだな。エドワード。ルーシーこれ売りませんよ。その石ころ気にいっちまってる」
エドワード「そ、そうか。それも良いだろうな。ルーシーらしいよ」
今回のフライトは、あくまでも早急に帰還する事が目的。
特に観察に時間を取らず、ひたすらにキャンプに向かった。
ーーーその頃キャンプでは。
昨夜の兵士との会話で救われ、落ち着きを取り戻したものの寝不足気味なカサヴェテスは、監視塔に登り葉巻を咥えて双眼鏡で南の空を見ていた。
「アイツの事だ。向こうで1晩過ごして朝一の出発で帰って来るんだろう。今日1日は様子を見てみるか」
ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ……
「アーサー、早いな。もうここに上がっていたか。」
バトラーも監視塔に登ってきた。
カサヴェテスは、少しだけ笑い答えた。
「まぁな。総指揮官としてではなく、友人達を待つ気分なんでな。そもそも鉄路計画が頓挫した以上、俺がなんの指揮官なのかもわからんしな」
しかし彼らは知らなかった。
今回のWorld's End Line探索が、今後の人類史を変える重要な出来事だった事を。
アーサー・カサヴェテスは、その「出来事」の総指揮官として名を残す事も。
バトラー「ここで、ジッと見てても仕方あるまい。今のうち朝飯にしよう。国から持ってきたビーフジャーキーもあるぞ」
カサヴェテスは、目を丸くしてキョトンとして言った。
「ビーフジャーキー?あの時のお返しか!?しかし、何故今更、それを言ってきた?」
バトラー「あーーいや、忘れてただけだ。」
2人の豪快な笑い声が鳴り響いたが、地上にいる見張りの兵士たちには意味がわからなかった。
「う、うーーん」
この頃、時を同じくしてガントが人知れず目を覚ました。




