第10章 その7 WEL
その後それぞれに眠りにつき、ヴィンスとアルベルトは交代で起きて見張りをしていた。
ヴィンスの見張りの順番で、何事も無くうつらうつら眠りに落ちそうになった頃。
東の空から陽が昇って来た。
ーーーAM5:45
ヴィンスは、目を手で覆った。「ん?夜明けか、早く帰らなければならんし皆起こすか」
「ヴィンスさん、おはようございます!出発の準備ですね」
眠い目を擦りながら、リアムが起きてきた。
昨夜、寝るのが早かった為に自然と目を覚ましたのだ。
ヴィンス「おはよう。皆を起こしに行こう」
そんな事を話していると続々と皆起きて来た。
レオン「ヴァンダイン少佐、おはようございます!あれ?その頬どうしたんですか?」
ヴィンスは、一瞬口ごもった。「あぁ、ちょっとな」
リアム「そうなんですよ。俺も気になってました」
ヴィクター「あれ?ヴィンスさん、その顔…」
ガント「あれ?ヴィンス、顔腫れてないか?」
次第にヴィンスは恥ずかしさから苛立ち、言い放った。
「うるさいな!なんでもねーよ!」
エドワードが少し遅れて、輪に入ってきた。
「おはよう。あれ?ヴィンス。お前さんその顔…」
「あはははは。私がビンタしたんだよ!」
結局、リヨにバラされてしまった。
一同(えーーーー!?リヨがビンタ!?この人リヨに何したんだ!?)
ヴィンスが頬を押さえて言った。「あーうん、もうそういう事だ。キツいお灸を据えられちまったんだ」
一同(あーやっぱり。確かにリヨは可愛いけど、ドラゴノイドなのに行ったのか)
リヨはけらけらと笑いながら言った。
「そういう事!ヴィンスは凄いけど私の相手は100年早かったね!」
ヴィンスは、何か盛大に誤解された。
エドワードが、あははと乾いた笑いの後に言った。
「あ、そうかそうかリヨもなんともなさそうだし良かった良かった」
すぐ横で実は目を覚まして横目で見ていたアルベルトだけは、双方の行き違いに気づいて一人で笑っていた。
ザッ ザッ ザッ
バム達が見送りに登ってきた。
バム「おはよう。皆ゆっくり寝られたか?」
ヴィンスが斜に構えて、バムに話しかけた。
「おはよう。バム世話になったな。君達に会えなかったら俺たちは何も出来なかった。」
ずっと、眉間にシワを寄せた様な顔で接していたバムがニカーっと笑った。
「なーに。君達の裏のない態度が良かったんだ。敵意があれば、あの場で狩っていたぞ」
ヴィンスは、冷や汗を垂らしながらも笑いながら答えた。
「元々そのつもりだったんでな。ただ君達とコミュニケーションを取りたかっただけだ」
2人は固く握手を交わした。
バム「ヴィンス?何故君は少し横を向いている?」
ルーシーが後ろから、ヴィンスの頭を両手で掴み左頬をバムに向けた。
「これだよ!!バムさん!これを隠してるの!」
バムは、目を丸くして驚いたが察して少し吹き出した。
「あぁ、なるほどな…リヨニ…」
ドゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…
リアムがEXPにエンジンをかけた。
「エンジンが温まったら出発します!!みんなトイレを済ませておいて下さい」
岩山に到着して16〜17時間の滞在ではあったが、内容も濃く有意義な遠征となった。
それだけに、ドラゴノイド達との別れが皆寂しく感じていた。
ルーシー「リヨ!色々ありがとうね!また必ず来るから!!」
リヨ「こちらこそ!!楽しかった!次はもっとゆっくりしていってね」
この時のハグは、リヨも自らの意志で優しく暖かく抱擁した。
バムが周りを見渡して探す様な素振りを見せた。
「レオン!!レオンは居るか!?」
レオンは、駆け寄って来て頭を下げた。
「バムさん、お世話になりました!色々経験になりました。」
バムは、フッと笑い言った。
「来い!レオン。俺にタックルだ。全力で来いよ」
レオンは、驚いて一瞬キョトンとしたがすぐに目つきが変わり一言。
「Yes Sir」
レオンは、腰を落として構えた。
ダダッ
ガシーーーーーン!!…
誰もが予想したが、ビクともしない。
「まだだ!!もっと押してこい!!」
「ぬあぉぉぉぉぉー!!」
バム「そのまま力を抜かずに聞くんだ。君はまだまだ強くなる。そして確実にリーダーの素質もある。君の成長はチームの力になり、ヴィンスの支えになる。頑張れよウェル。」
「ぬぁぁぁぁはい!ぁぁああぁ」
「よし!強かったぞ。でもまだまだだな!!」
ゴロゴロゴロゴロ
ズサーーー……
バムは、レオンを押し返しレオンは転倒した。
「ありがとうございました!またお願いします!!」
バムの目を力強く見つめるレオンは、清々しい表情をしていた。
……が。
(ウェル?ウェルってなんだ…??)
それぞれの別れを済まし、刻一刻と出発の時が迫っていた。
WELとは、ドライム独自の言語で、勇敢な者を表す言葉だった。
バムはレオンを認め、彼なりの餞別だったのだろう。
EXPから、降りてきたリアムが皆に声をかけた。
「準備完了です!出発します!!」




