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第10章 その6 ヴィンスの誤算

ハッとした様子でアルベルトが、話し始めた。 「おい、ヴィンス!本部は18時に帰還すると思ってるんじゃないのか!?」


……あっ


普段誰よりも早く、事の問題に気付き、即座に対応するヴィンスの痛恨のミス。


「ヤバいな!そうだ!電話しよう!リヨ!電話貸してくれ!」


リヨ「電話??何それ?」


ヴィンス「うわーー。そうだよな!何を言ってるんだ俺は!大佐達、絶対心配してるよな」 ルーシー「あはははは、そりゃそうだ。どんな所に来てるか大佐達は知ってるからね」


ヴィンス「そうなんだよ!俺達に何かあって戻れないと思ってるよなーやっちまった!」


暫く沈黙が続いた後、アルベルトが動いた。 「もう、慌てても仕方ないだろ?これ吸え」


ヴィンスは、葉巻を受け取り火をつけた。 「フゥーーーッ。そうだな。明日帰ったら俺が怒られるよ」 ルーシー「お腹空いたな、また肉焼いて食べようよ。ゲルジャンも食べる??」


ゲル「あー!食べる!!今日レックス狩ったって聞いたから、それでしょ?」 ジャン「そうか!俺も食べる!」 彼ら子供は、レックスの狩りには参加出来ない。 危険である事はもちろん、足手まといになり大人のドラゴノイドにも危険が及ぶ為だ。 それゆえに、バムがレオンを連れて行ったのは、それだけ期待度が高かったと言える。


ヴィンス「こうなったら、考えても仕方ないな。身体が温まっちまった。リヨ、俺と組手をしてくれないか?」


リヨ「え?良いけど私は、コイツらとは違うよ。勝てるつもり?」


ヴィンスは、手を左右に振り笑いながら答えた。 「まさか。格闘訓練はしているが普段、俺から攻撃する事が無いんでな。俺が攻撃しても平気そうなキミとやっておきたい」


リヨ「やっぱり。ヴィンスはレオンくんより強いんだね。そんな感じはしてたよ」


ヴィンスは、自分の目の横を指差しながら言った。 「そう断言してしまうのはどうかと思うが、今までの戦績は50戦全勝だ。ここの傷は、レオンにやられた物だがな。」


リヨは、ニヤリと笑い身構えた。 「OK。私にとって、そこの差が意味あるのか見てあげるよ、仮に当たっても怪我しないから、何しても良いよ。」


ヴィンスは、深く息を吸いリヨの前に立った。 「わかった。本気で行くぞ!!」 リヨ「どーぞ。遠慮な…」 リヨが余裕の返答をし終える頃には、ヴィンスは間合いに入っていた。 バチーーーーン!!! ダッシュ力に捻りを加えて、遠心力を利用した右飛び回し蹴りがリヨに炸裂した。 リヨ「うわっ凄いな!」 (コイツ本当に人間か?)


リヨは、左腕でガードしたものの体勢を崩して重心が右脚に乗った。 ヴィンスは、追撃のハイキックをリヨに叩き込む。 リヨは、不敵に笑うと。 「これ捕まえてあげる」


シーーーーン


ヴィンス「フェイクだ。」 ガッ リヨの重心が乗った右脚に、軌道を変え、足払い。


ズダーーーーン!! 早くもリヨを転倒させることに成功した。


地面に横たわりながら、リヨは言った。 「ふーーんホントに強いんだ」 すかさずヴィンスは、リヨに馬乗りになりマウントポジションを取った。 「人間が相手だったら、これで終わりだ。どうする」


リヨ「なんで?今ヴィンスは私の上に乗ってるだけだよ。何にも効いてないよ」


バコーーーーーン!!! ヴィンスの体重を乗せた、パンチがリヨの顔面にめり込んだ。


リヨ「へへーーーん」 誰もがめり込んだ様に見えたが、リヨは顔を動かしてヴィンスのパンチを地面に突き刺させた。


「くっ」 リミッターの外れたヴィンスは、猛然とラッシュする。 ガガガガガガガガガガッ…


あろうことかリヨは、それを仰向けの状態のまま全て両手で捌いている。 「すげーな、ヴィンス!速い強い!でも、こっちの番ね。君なら死なないでしょ」


ビターーーーーーン!!!


…………


ズサァァァァァァ…


マウントポジションを取られている状態からのリヨのビンタがヴィンスの顔面を捉えた。


ヴィンス「ウグッなんだ今のは?ビンタか?あの体勢から?強すぎるだろ……」


リヨは、マウントポジションからいとも簡単に脱出した。 「さぁ!どうする?まだイケる??」 ダダッ 口内の血を吐き出して、ヴィンスはリヨに突進した。 「当たり前だ!行くぞ!」


リヨ「無理だね。」


ヒラリと身を交わして、脚をかけてヴィンスを転倒させた。 ヴィンス「なっ…」


リヨ「ヴィンス、自覚無いかも知れないけど脚に来てるよ。あれだけの勢いで顔面吹っ飛ばされたんだから。立ち上がるだけでも凄いよ」


戦場で極限状態で戦ってきたヴィンスにとっては、諦められる状態ではなかった。


「グッ…まだだ!俺はまだ動ける!!」


バチーーーン!!


ルーシーが割って入り、ヴィンスに強烈なビンタをした。


ヴィンス「おまっ…何を」


ルーシー「わたしのビンタを簡単に喰らってる様では、リヨと戦えるわけないでしょ?諦めな」


恥ずかしそうに、頭をかくとヴィンスは言った。 「そうだな。降参だ。リヨありがとうな経験になったよ」


リヨ「え?何言ってんの?経験なんてヴィンスの方が遥かに上でしょ?見てみな?コイツらの顔」


リヨは、アゴで子供達の方を指した。


ゲル「おじさん!!すげーよ!なんで、あそこで切り替えられるの!?」 ジャン「ホントに!!リヨも絶対驚いてたよね!」


羨望の目を向ける子供達に歩み寄り、ヴィンスは笑いながら言う。


「あはは、完敗だったよ。あのお姉ちゃんおっかねーな!」


リヨ「あん?なんだと?ゲルジャン?」

子供達は、慌てた様子で言った。

「お、お、俺達何にも言ってないよ!!」


慌てる子供達を、皆微笑ましく見ていた。


※ドライムに伝わる言い伝え。

北側にはドライムに似た種族で人間と言う生き物がいる。

知能が発達していて、言語は彼らから学んだ物。

しかし身体は、弱くすぐにDodなどに捕食される。

欲にまみれ、皆一様に何かを手に入れに来る。

危険は無いが油断をするな。

敵意を向けて来たら、迷わず狩れ。


知らず知らずのうちにエクスプローラーズは、ドライムの人間への印象をことごとく好転していた。

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