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第9章 その8 結果 動機

ルーシー(うわぁ勝手に手が開きそうだ……)

「行くぞ!!リヨ!」

リヨ 「うん!!頑張れ!!待ってるから」

戻って来たリヨが何やら騒いでる後ろ姿に気付いて、皆が集まって来た。

バム 「リヨ、まさかあの娘、自力で登ってるのか?」

リヨ「そうだよ!ラスト10m」

ルーシー「うわぁ、すげー身体が重い」

序盤に比べて、明らかにペースは遅いが確実に少しずつ登って来ている。


ヴィンス 「何!?アイツここを登って来たのか!?相変わらず無茶しやがる」

雨ざらしの麻製のロープ、高さへの恐怖。不規則な岩肌。肉体的負担は想像を絶するものだった。


残り2m。


ルーシーの動きがピタリと止まってしまった。

リヨ 「ルーシー!右膝を曲げて!!そこに足かけられるから!」

ルーシー「……ん?あぁここね」

ガッ

脚に力を入れて50cm程、上昇する。

その体勢で少し休む事は出来るが、ルーシーの握力は限界に達していた。

リヨ「もう無理だ。ルーシー!ロープを引き上げるから、そのまま我慢して!」

ルーシー「悔しいけど、わかった!」

リヨがロープに手をかけようとした時、レオンが割って入った。

「俺が上げる、ルーシーは仲間なんでな」

リヨは一瞬、固まったが少し笑ってレオンに任せた。

「うん、わかった。手早く丁寧にね!」

グッ

ズリズリズリズリ……

力強くルーシーを引き上げる。

レオンは、ルーシーの手首を掴んだ。

(よしここで、アースバウンド!)

掴んだ瞬間に、いとも簡単にルーシーを引き上げて、2人とも地面に転がった。


ルーシー「ハァハァハァハァ……レオン、サンキュー」

レオン「当たり前だ。ずっとこうして来ただろう」


リヨは、ルーシーに近付くと優しく抱きあげた。

「すごいねー、よく頑張った。これ飲んで。あの川の水だから」

ルーシーは、貰った水を勢いよく飲み干した。

「ありがとう〜美味い〜〜」


ヴィンスは、ルーシーの頭にポンと軽く手を乗せて言う。

「ホントにお前には、いつもヒヤヒヤさせられるな。バカ過ぎだよ」

ルーシー「うるさいな!皆が居るのに出来ないとか言えるか!」

バム 「エクスプローラーズ、本当に良いチームだな。ルーシー、肉が焼けてるぞ。食べるか?」


ルーシー「あ!食べる!いただきます!」


リヨが炉から、串焼きを持って来ると勢いよくむさぼりついた。

ルーシー「クセ強っ!!でも美味ーーー!!」

先ほど見掛けたばかりの光景に、ドッと笑いが起きた。


グン 「さっきのレオン凄かったね!この高さを見下ろした体勢で引き上げて、最後アースバウンド使ったでしょ?」


バム 「あぁ地面と一体化する応用が、もう出来てる。凄いセンスだな」


ルーシーは、そんな会話が聞こえてるのか聞こえてないのか。

一心不乱に肉を食べ続けて、5kg程平らげた。


ルーシー「ぷはーーっ美味かった!ご馳走様!」

その時には、既にルーシーの握力は回復し、体力も戻りつつあった。


ヴィクターが慌てた様子で叫んだ。「大変だ!!帰りの日照時間が足りない!」

ドラゴノイドとの交流に時間を費やし過ぎてしまい、もどるタイミングを失ってしまっていた。


リアム 「うわっ本当だ。もう14時ですね!今から出ても途中で陽が落ちてしまう」


ヴィンス「仕方ない。1晩泊まって行こう。明日夜があけてから帰れば良い」


アルベルト 「あぁ、そうだな。途中で陽が落ちたら危険過ぎる」


リヨが少し嬉しそうに言う。

「お!じゃあルーシーとまだ居れるんだね」

ルーシーは、ウインクをして親指を立てた。


静観していたガントが、話し始めた。

「あんた達は、ハシゴを知っているか?」

バム 「いや、わからん。なんだ」

ガント「2本のロープを垂らして横方向に、棒をたくさん入れるんだ。登り降りが楽で安全になる」

バム 「なるほど。想像はついた。作ってみるか」


ドラゴノイドの身体能力があれば、ロープが垂れさがっているだけでだいぶ楽な為、発想する事もなかったのだ。


ガント 「太さ2cmくらいの枝を準備出来るか?んーー……30本くらい」


ルーシー「あ、あのトイレない?」

当たり前である。

水をガブ飲みして、肉を5kg食べた。そうならない方が不思議だ。

ヴィンス「無いだろ!こんな所に」

バム 「いや、あるぞ。ちょうど良かったな。すぐ下の待避所にある。リヨ、案内してやれ」

リヨ「はーい。ルーシー行こう」

リヨが先に降りて、ルーシーがハシゴで降り始めると驚く程楽だった。

本来であれば、先程の疲労でハシゴであってもキツかっただろうが、Dodの肉で殆ど回復していた。


降りてみると、登って来た時は気にならなかったが洞穴がある。

リヨ「ここだよ。入って」

入るとすぐに左に曲がっていて、奥は明るくなっていた。

光穴が開いていて、陽が差し込んで証明代わりになっている。

リヨが指を指して言う。

「岩山の水がここを通って降りて行くんだ。ここでして、こっちで手を洗えるよ〜風が抜けるから、ちょっとスースーするけどね」


ルーシー「おぉ凄い〜ありがとう!」


なんとプライバシーを守れる、照明、換気、手洗い付きの水洗トイレだった。

兵士であるルーシーにとっては、戦場よりも余程マシな快適なトイレである。


ーー上では。

エドワード「ドラゴノイドは、トイレがあるのが普通なのか?」

バム「あぁ、元々俺たちは身を守る為に排泄は隠れてするんだ。ドライム同士であっても周りに居ないか確認してする」

エドワード「なるほどな。無防備に近くなるからな」


バム「と言うか、ここで堂々と排泄するのは大型のDodだけだ。それ以外は動物も身を隠す」

ここでも、人間が羞恥心やエチケットの為に人目を避けるのとは違う動機により過酷さを知る事となった。

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