第8章その9 生きる為の進化
一同は、ドラゴノイドたちが言語を操れるどころか、我々と同じ言語を話すことに驚いていたが、エドワードがさらなる驚異に気付く。
「人間を見るのは初めてだけど、数百年も昔から何万人も来ていると言ったな。それは、彼らが経験したことを後世に残すために、なんらかの形で記録を残しているってことだ」
ルーシーがすかさず尋ねる。
「え? 何なんて、本とかあるってこと?」
エドワードが勇気を振り絞って、バムに声をかけた。
「私はエドワード・カニンガムだ。学者をしている。君たちは、こちら側で狩りなどをしながら過ごしているが、書物などに資料を残して歴史などを共有しているのか?」
バムが答える。
「あぁ、色々な形で情報は入ってくるし、残っている。遠方からの情報も入ってくるし、こちらから情報や物資を送ることもある」
エドワードが続けて質問する。
「自動車や、この飛行機のような乗り物はあるのか?」
「無いな。移動は動物を利用している」
エドワードがうなずく。
「なるほどな、ありがとう。大体理解したよ」
パッと見の印象は、彼らは我々で言うところの原始人のようだ。しかしその中身は、まるっきり違う。彼らの知能は我々と同等であり、歴史も我々と変わらない長さがあるはずだ。ここで生き残ることに全振りした進化の結果が、ドラゴノイドなのだとエドワードは確信する。
すると、リヨが口を開いた。
「ドラゴノイド……?」
初めて、女ドラゴノイドが言葉を発した。
ルーシーが答える。
「あなたたち、私たちと違って腕とか恐竜みたいでしょ? だからドラゴノイドと呼ばせてもらってるの」
そう言って、自分の左腕の肘を見せ、右手で前腕をパシッと叩いてみせた。
リヨが首をかしげる。
「恐竜? 『Dod』のことね。確かにあなたたちとは違うね」
ヴィンスが興味深そうに尋ねる。
「君たちの言葉では、恐竜のことをDodと言うのか? 何か意味はあるのか?」
バムが説明する。
「あぁ、君たち人間の言葉が元になっているんだ。DevilとGodを足した名前でね。ここでは、恐竜は悪魔でもあり神でもあるんでな」
その場にいた全員が、ここまでに目撃してきた恐竜たちの姿を思い出し、妙に納得した。
バムが話を続ける。
「ところで、君たちは俺たちが聞いてきた人間とは全く違うな。南に来た人間たちは欲にまみれ、資源や侵略を求めて来たとされている」
アルベルトが笑いながら言った。
「あははは、確かにこのメンバーは純粋なバカしかいないからな。何か欲しいわけじゃない。君たちと交流がしたいんだ」
それを聞いて、リヨがアルベルトに歩み寄り、じっと顔を見つめた。
目の前に立つとルーシーくらい小柄だが、先ほどの恐ろしい蹴りを見ている手前、アルベルトは内心で冷や汗をかきながらも真っ直ぐ視線を送り返す。
(んーーーーーーー)
リヨは目を細め、小さく唸る。
「いいよ、バム。彼らは嘘をついてないよ」
過酷な環境下で生きる彼女には、恐竜たちのフェイクや動物たちの奇襲を見抜く力が「勘」として備わっており、仲間たちからも厚く信頼されていたのだった。
バムが静かに返す。
「そうか……俺も彼らに嫌なものは感じない。ヴィンスと言ったな? 俺たちの何を知りたい?」
顎に手を当てて少し考え、ヴィンスが答えた。
「たくさんあるけど、俺が一番気になるのは君たちの強さだ。そこにレオンってヤツがいる。アイツはフィジカルだけなら俺の上を行くかも知らん奴だ。手合わせ願いたい」
「ばっ……! ヴィンス、何を言っている!? 叶うわけあるまい! せっかく対話に応じてくれているのに、バカなっ!」
慌てた様子で、エドワードが制止の声を飛ばす。
しかし、リヨは面白そうにフッと笑った。
「いーよっ。レオン君、カモン!」
手招きをして、あっさりと承諾する。
それを見て、バムがわずかに呆れたような、しかしどこか甘い声色で言った。
「リヨ……あまり怪我をさせるなよ」
「分かってるって」
リヨは不敵な笑みを浮かべ、腰に手を当てレオンの方を振り返った。




