第8章その7 対峙 爆蹴
ザッ…… その音に振り返ると ザッ ザッ ザッ ドラゴノイド4名が、こちらの盛大な気配に気付いてやって来た(戻って来た?)のだ。
初めて見るドラゴノイドの姿に、ヴィンスは息を呑む。 「うぉっ おおー。彼らがドラゴノイドだな。一目で解る。ここを生き抜いているだけある。目があっただけで、諦める小動物になった気分だ」 アルベルトが硬い声で返す。 「……だな。襲われたらひとたまりもねぇ」
乗組員一同、彼らから目が離せなくなっているが、理由が少々異なる。 ヴィンス、アルベルト、レオン、ルーシーは戦場の経験から目を離したら死に直結する事が身についている為、震える身体を抑えて鋭い眼光で見据える。 リアム、エドワード、ヴィクターは逃げ出したい気持ちなのだが腰が抜けて動けない。 ガントは、その中間と言った所だった。
「俺が行く」 やはりこの男が動いた。 衣服を脱ぎ捨て、両手を広げて上を向け敵意が無い事をアピールして、ゆっくり近付いた。 その背中は、異常なまでに発達し、数えきれない程の戦闘やサバイバルの傷跡だらけであった。
……その時。 女ドラゴノイドが、一挙にヴィンスとの距離を詰めて、凄まじい回転力でハイキックをした。 ドゴォォ!!…… 「うぐっ」 咄嗟にガードをしたものの骨に直前刺さるよな衝撃力。
カチャッ カッ… アルベルトが、咄嗟にリボルバーを構えた。 「…やめろ!アルベルト!!俺達が勝手に来たんだ!!」
ヴィンスはアルベルトを制止し、ドラゴノイドに話し掛けた。 「俺の言葉が、君達に解るかわからないが、この通りだ。敵意は無い。ただ君達の事を知りたいんだ」 女ドラゴノイドは、鋭い眼光のまま追撃の気配を放つ。 ヴィンスは、苦笑混じりに続ける。 「だよな?こんなとんでもない乗り物に乗ってわけわからんヤツらがやって来たんだ。俺は君のさっきの一撃で、もう左腕は、こうして広げるのがやっとだ」
もう一度, 彼女が蹴りかかろうとしたその時…… 「待て」 彼らの中でも、一際異彩を放つリーダーと思われる男が口を開いた。 「待つんだ。俺が見たところ彼らに敵意はない。敵意を感じたら、狩れば良い」
(助かったー!) では無い。 前回のフライトで言語を話してそうまでは想定出来ていたけど、我々と同じ言葉を話す事は想定外だった。 ヴィンスは面食らったが、話を続けた。 「あぁ、そうだ。君達とコミュニケーションが取りたいんだ。俺達と同じ言葉を話せるとは思ってなかったがな」
男は静かに答える。 「あぁ、北から人間が来たのは君達が初めてじゃないんでな。帰還者は居ないと思うが」
エドワードが未だ怯えながらも口を開いた。 「そうか、World's End Lineを越えたら帰れない。 越えた瞬間に死ぬわけじゃないから、彼らと接触した可能性はあるのか」
「それは、少し違うな。数百年に渡り何万人も来ているが接触はしてない。我々の先祖が目撃したり、ボトルレターなどから文字を学び君達の言葉を話す様になったとされている」
ルーシーが思わず声を上げる。 「え!?じゃあ、あなた達は私達以外にも人間に会ったことがあるってこと!?」 「いや、俺達は初めて見た。ここまで到達した人間は居ないんでな。3日くらい前に空を飛んでいたの君達だろ?」 そう言って、男はリアムを指さした。
「え?あ、俺?そうです!」
ヴィクターが内心で驚愕する。 (考えられない、機体に囲まれている我々を下から視認して、個まで認識している。我々が見下ろすのと視界が格段に悪いし、あの距離だぞ)
ヴィンスが感嘆の声を漏らす。 「すげーな!目が良いだけじゃなさそうだな。君達は、名前はあるのか?俺は、ヴィンス・ヴァンダインだ」
「あぁ、俺はバムと言う。君を蹴ったのがリヨだ」
「バムか、よろしくな。俺達に他意は無い。君達とこっち側の事を知りたいだけだ。リヨ!すげー蹴りだな!どうして俺は、つえー女に蹴られるんだ?」
ルーシーがすかさずツッコミを入れる。 「ヴィンスが、蹴りたくなる顔してるからだよ!ね?リヨ」
リヨは、(なんだコイツら。本当に遊びに来たのか?)と言いたげに、2人の真っ直ぐ過ぎる目を見てキョトンとしていた。




