第8章 その6 Rock on
ーーーAM 10:30
見えてきた。あの岩山の森。
ヴィンスが抑えきれないような表情で言う。
「おぉーー! あれかぁ」
「すげーな!」
リアムが応じる。
「あれです!! 改めて見てもすごいですね!」
ヴィクターが、不満そうに口を開く。
「ここでゴネても仕方あるまい。リアム! 絶対に成功しろよ!」
「はい!! 一旦確認で旋回します!」
「あの……」ヴィクターもやはり、来てしまうと好奇心が沸き上がり、行ってみたいと思ってしまったようだ。
ギュイーーーーーン
バババババババババ
エドワードが声を張り上げる。
「リアム! 50mの距離を目一杯使う角度で戻ってくるんだ!」
「はい! ルーシーにホース電話を持つように言って下さい!!」
クイクイ
「リアム、もうすぐだね! ここから私は耳に当てるよ!」
クイ
「OK! 聞こえたら軽く引いてくれ!」
クイッ
「ルーシー、次の旋回の後なるべく減速するから、そうしたらレバーに手をかけてくれ」
クィ
旋回中は、機体を大きく傾けながら、コンドルのように風に乗って徐々に減速していった。
80km/h 70km/h 65km/h……
速度が落ち、揚力を維持できなくなりそうになった、その時――。
ガッ……
ガーーーーーーーッ
これ以上ない進入で、リアムが絶壁の入口を捉えた。
「ルーシー!! 今だ!!!!」
ガチャン!!
ブワッ……
ボォーーー!!
ルーシーの動作により、ドラッグシュート(パラグライダーのような物)が大きく広がり、機体を急激に減速させる。
ガーーーーーーーーー!!……
ボボボボーーーー……
ヴィンスが叫ぶ。
「おいおい! これ止まれるのか!!?」
ヴィクターが声を張り上げる。
「私の計算では止まるはずだ! 止まってくれー!!」
リアムが叫ぶ。
「うおぉーーーー!!!」
ルーシーは「耳イタッ」と思いつつもレバーを離せない。
ガーーーーーーーー!!
ガコンッ
ガッ
段差を蹴り機体が左右に揺れる。
ガッ……
………
……。
リアムが叫んだ。
「よっしゃー!!! 着陸成功!!」
皆、それぞれに背もたれに身を任せ、大きく息を吐き出した。
アルベルトが、目を見開いて話す。
「ホントにクレイジーなチームだな!! 前線で戦ってる時よりも生きた心地がしないぞ」
ヴィンスがからかう様に尋ねた。
「ん? なんだアルベルト、後悔してるのか?」
「……なんで??」
「わからん!」
なんだか、2人の世界では面白いらしく大笑いしている。
「ヴァンダイン少佐!! 降りても良いですか!?」
「なんだレオン、我慢できない様子だな」
相変わらず、コイツはと言った様子で少佐が尋ねる。
「はい! すぐにでも降りたいです!」
その様子を聞いていたリアムが、
「大丈夫ですよ! エドワード博士、開けてあげてください!」
レオンは飛び降りるように機体から出ていき、少し走って止まった。
尿意が限界だったようだ。
その様子を見て、次々と乗員たちも降りていき、横並びになってスッキリした。
その一連の動作が終わると、ルーシーが降りてきて瓶から何やら液体を捨てた。
…………
一同、そうっとしておいた。
リアムが、360°見渡して言葉を漏らした。
「ふわぁーーーー! なんだここはー! 同じ地球上とは思えないですね!!」
見渡す限りジャングル、抜けるような青空、下を見れば大型の恐竜を簡単に発見できる。
そして、想像していたよりもだいぶ涼しい。
高所だから涼しいと言うほどの高さではないが、岩間を抜ける風が心地よい。
リアムだけではなく、全員が任務を忘れたかのように、その身を涼風に同化させていた。
……その時。
ザッ
何かの足音のような音が聞こえた後、涼風が猛吹雪に変わったかのような悪寒を全員が感じて、振り返った。
第8章その3に出てきたロープが、このドラッグシュートの材料だった訳です。
先にレバーの意味を、書いたらネタバレになってしまうので書けませんでしたが、麻のロープに絹を重ね貼りした物をイメージして欲しいです。
絹は実は、丈夫でパラシュートなどでも使われていたそうです。




