第8章 その4 リアム・ドレイクEXP
ーーー翌朝。
朝早くから作業し始めている男達がいた。リアムとエドワードだ。
鍛冶職人達にいろいろと注文して加工をお願いしながら、予備パーツの翼を付ける相談をしていた。
※アイアンクラウン号は複葉機と言って翼が二段になっている。これをさらに三段に増やして、片側三枚の多葉機に改造している。その三枚目の翼が、今回のリアムの奇抜な発想のようだった。
リアムはその辺に転がっている鉄片を手に取ると、ぶつぶつと何やら呟き始めた。
「ブゥーーーーン、ガッ、ぶぃーん。バっぐぉーん……よし!! こうだ。これしかない」
職人と綿密に打ち合わせをしている。
エドワードが口を開いた。
「あぁ、外から見るとリアムがおかしくなったようにしか見えないが、俺もそれで大丈夫だと思う」
そう言って笑う。リアムが応じた。
「とは言え、こっちが上手くいって初めて成立しますね。これは俺じゃなくて、後部席の人に協力して貰います。コックピットがもうスペースいっぱいですから」
「ほっほーーーーーん。なんか、面白そうな相談してるね〜。後部座席と言えば、私だよね??」
保存食のパンをかじりながら、ルーシーが登場した。
(うわぁ、しまったぁ。ルーシーに聞かれちゃったよーー)
内心で頭を抱えつつも、リアムは取り繕ってこう言った。
「そうなんだよ! めちゃくちゃ大事な役割になるけど、やってくれるかな?」
ルーシーはにやりと笑い、「任せとけぃ」と親指を立てた。
「めちゃくちゃ大事」というワードに、ルーシーが逃げ腰になるなんて淡すぎる夢だった。
そうこうしていると、朝イチの便が届いた。念のため護衛のトラック(マシンガンとカノン砲120装備)と一緒に物資が到着する。麻製のしっかりしたロープと、予算を考えずに済むからこそ頼めた品々だった。
リアムが、またサラサラと何かを描き出す。
「エドワード博士、断面にするとこんな感じですよね? ここを立体的に考えれば、こうなりますね?」
エドワードは苦笑した。
「いきなり言われても、俺でもわからんよ。君は一体、どうして測量士なんてやってるんだ? 測量士が悪いわけではないけど、君の才能を披露する場でもあるまい?」
「あ、それはこの World's End Line を越える鉄路事業に興味があったんです。軍人って柄でもないし、お金も良かったし、資格を取りました」
エドワードが感心したように言う。
「なるほどな。理にかなってるし、現実にこうやって君が一番輝ける所に辿り着いているな」
少し照れた様子で、リアムが笑う。
「あははは、まさかこんなに早く飛行機を作ることになるとは夢にも思っていませんでしたけどね」
手を動かしながら、リアムが続ける。
「出来ました。これが断面図で、この丸している所に負荷がかかるので金属で補強が必要です。尾翼部分のこの辺にスペースがあるので格納できるはずです」
周りはあっけにとられ、何の話かもわかっていない。事前に説明を受けているエドワードでさえ、理論は解っても瞬時に答えが出てくる意味がわからずに苦笑いしていた。
それを見ていたルーシーが、設計図と荷物を見比べて言った。
「んーーー。解った!! 後部座席にレバーを作って、私が引いたらどうにかなるんだね!!」
リアムが嬉しそうに答える。
「そうそう! タイミングは俺が指示するからよろしく頼むね!! ……あ、翼の方は、ヴィクターさんにも相談した方が良いですかね?」
「私が呼んでくるよ!」
ルーシーはすぐに作業場を出ていき、ヴィクターを連れてきた。
リアムが翼の説明を始めると、ヴィクターは真剣な面持ちでそれに聞き入る。
「うーーん。なるほど。理論上は可能だ。むしろそれしかないだろう」
そうして意見を交わしながら、彼らはわずか二日ほどで『EXP向こう側仕様(仮)』を完成させてしまった。




